第165話束縛しないでその2

 しかし雪絵も、何でお父さんがそんなことをしたのかが、疑問に思って、

「どうしてそんなことをするの? そこまで私のことが……信用出来ないってことなの?」

「その男は、信用出来る男なのか?」

「私と同じ……慶応SFCの学生の……男の子なのよ……信用出来るに……決まっているじゃない……」

 しかし雪絵の父親は父親で、怒りの形相は、治まりそうにない。

「雪絵! なぜ父親に一切の相談なく、男と付き合ったりするのだ!」

 それを聞いた雪絵は、とうとう猛烈な怒りを感じた。

「お父さん……束縛しないで……」

 雪絵は続けて、

「これ以上……私のことを……束縛するのなら……」

 雪絵は最後の勇気を振り絞って、

「私……大学辞めるから!」

 雪絵は力強く、そして決意を込めて、父親にそう言った。

「ならば雪絵! お前の勝手にすると良い!」

 雪絵の父親も父親で、頭に血が上っていた状態であったのだろう……。そう吐き捨てて、父親は自分の部屋へと、戻ってしまった。

 リビングに残った雪絵と、雪絵の母親……。雪絵の母親は雪絵に優しい口調で、こう言った。

「雪絵。お父さんは別に雪絵が『恋愛をしてはいけない』と言っているわけではないのよ。それはわかるでしょう? ただうちの家庭上、信用が置けない男の子との交際は、どうしてもお父さんからしてみれば、認められないの。だからその点を確認したかっただけなのよね。だからそういった報告だけは、ちゃんとして欲しいって、お父さんはそのことをただ、言いたかっただけなのよ。それをわかってちょうだいね! あと雪絵がせっかく入れた慶応大学を辞めるなんて、私たちを悲しませるようなことも、今後は言わないでちょうだいね」

 そこまで聞いた雪絵は、

「お母さん…ごめんなさい…これからはちゃんとホウ・レン・ソウを……細かくしますから……」

 雪絵がそこまで言うと、雪絵の母親は、

「雪絵。あなたさっきまで授業のレポートを、書いていたのでしょう? 自分の部屋に戻って、続きをやっても、もう大丈夫よ」

 と、優しく雪絵に自分の部屋に戻るように、諭した。

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