第160話スペインフェスタその1

「ユッキーさん。今度の土曜日か日曜日のどちらかって、空いているかな?」

 重森の突然の誘いに、雪絵は戸惑ったが、アルバイトももう二年も同じ店舗で、働き続けているため、当然ながら有給休暇は支給されている。しかし有給休暇はちゃんと法律通りに支給されているというのに、雪絵はこれまで一度も私用のために、有給休暇を申請したことがなかったのだった。

「うん……土曜日なら多分大丈夫……バイト先の店長に……有給休暇が使えないか……相談してみるね……」

 さすがに店が混んで修羅場になる日曜日に、私用で休むわけにはいかないだろうと雪絵は思って、土曜日ならば多少は店の混雑も少ないから、重森に土曜日ならば……と返事を返した。すると重森は、

「ユッキーさん。ありがとう! 実はその日は代々木公園でね。スペインのフェスタがあるんだ。それに一緒に行って付き合って欲しいんだよね!」

 実際に雪絵が店長に有給休暇が使えないかを聞いてみると、店長は一瞬怪訝そうな顔を見せたが(もちろん土曜日に休むので、土曜日は日曜日ほどではないものの、店が忙しくなるため)雪絵の今までの勤務態度と、雪絵が長く働いていることを考慮してか、店長は雪絵の有給休暇の使用を、一応は認めてくれた。

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