第169話カレーを食べに行くその3

 そうこうしているうちに『エビカレー』と『ビーフカレー』が、それぞれ運ばれてきた。秀美はビーフカレーを一口食べるなり、

「あっ美味しい! 肉がよく煮込まれていて、本当に美味しい!」

 秀美はそう、声を上げた。徹也は、

「さすがはこんな雑居ビルに入っていても、行列が出来るカレー屋だよね。本当に味は、本物だよね」

 美味いものは食を進めるスピードも自然と早くなる。本当はこんなに美味しいカレーなのだから、もっと味わって食べるべきなのだろうが、外には長い行列が出来ていることもあってか、二人はかなり速いペースで、カレーを平らげてしまった。

 二人ともカレーを食べ終わり、外の行列を気にしてか、いそいそと会計になった。秀美が自分が食べた分ぐらい代金を払おうとすると、徹也がそれを制止した。

「こういうのは男側が誘ったのだから、お前さんも甘えなきゃダメだぜ!」

 徹也がそう言うと、秀美は、

「うんわかった。じゃあごちそうになるね! でもいつもごめんね、奢ってもらってばっかりで……」

「まあ気にするなって。第一カレーのお店を指定したのは、俺の方だからね」

 カレーのスパイスが効いていたのだろう……。ビルの外に出た二人の体感温度は、汗ばむぐらいに暑かった。

「じゃあ、また明日ね!」

 秀美がそう言うので、徹也も、

「じゃあな。気を付けて帰ってね!」

 と言って、徹也と秀美は神保町駅で別れた。

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