第17話お祝いの飲み会その10
冷静さを取り戻した園里は、残った四人に対して、
「じゃあ、機会があったら、また飲み会をやろうね!」
そう言って園里は上り方向のJR総武線に乗った。下り方向に乗る残った瞳と今日子が二人で話す。
「ユッキー自身にとっての、本当の『幸せ』って、いったいなんなのだろうね? 確かにSFCって形とはいえ、最終的にはユッキーの親の『絶対に慶応に行きなさい!』っていう、ユッキーの親の期待には『最終的には』応えたのだけれどもね……」
今日子も今日子で、中学のときの、卒業式の思い出を思い返すかのように、
「中学の卒業式、雪絵ちゃんの慶応の高校不合格で、なし崩しみたいに、品川の高校に進学することになったってだけで、卒業式がまるでお葬式みたいに暗い雰囲気だったの、今でも覚えているなあ……」
すると瞳が、次のように今日子に言ってきた。
「SFCって形とはいっても、ちゃんと慶応には受かったのだから、ユッキーの当面については、私たち的には一安心なのだけど、慶応って希望する大学に受かったっていう『勲章』は、決して今までの地獄を癒してはくれないって、えりえりが前に言っていたことに、ユッキーが気付いたときが、ちょっと危ないかな? 病状が再燃したりとかさ……」
それを聞いた今日子もすかさず、
「お医者さんから出されているお薬は、医者の卵である園里ちゃんからしてみれば、確かに飲んでいる薬の種類も量も、園理ちゃんから見たら、確かに多いのかもしれないけれども、毎日ちゃんと欠かさず飲んでいるみたいだから、もし雪絵ちゃんが勝手に薬を飲むのを止めたりしなければ、なんとか安定飛行には持って行けるのかもしれないけれども……。だけれども、これからまた環境がガラリと変わるから、どちらかというと私は、そっちから受けるストレスの方が、ちょっと心配かな?」
すると瞳は、話を雪絵のことから、ガラッと話の話題を変えて、徹也と健に、こう次のようなことを聞いてみた。
「二次会とか、どうしようかしらね? あたしとキョンキョンの二人と、あとてっちゃんとケンちゃんと四人で、カラオケにでも行く?」
と瞳が徹也と健に聞くと、徹也が、
「まあ久しぶりに、このメンバーが集まったわけだからね。もうちょっと遊んでも良いんじゃないかな!」
と徹也は言った。それを聞いた今日子が、
「たしかこっちの方向に、カラオケ店があったと思うから、ちょっと歩いてみようかな?」
今日子にとって通っている理科大がある神楽坂は、今日子にとってのホームグラウンドである。ここの土地勘は残った四人の中で、今日子が一番ある。
そうこうしているうちに、四人は無事にカラオケ店へと着いた。瞳は今日子に対して、次のように話しかけた。
「キョンキョン、またラルクではっちゃけるん?」
すると今日子は、次のように答えた。
「う~んなんかどうしてもね……ラルクを歌っちゃうときに、人が変わるみたいなんだよね」
それを聞いていた徹也も、
「中学のときはじめてカラオケに行ったときに、今日子のラルクをはじめて聞いたときは、本当にビックリしたものなあ。普段の今日子からは、とてもじゃないが想像出来なかったものなあ」
すると今度は瞳も瞳で今日子に対して、
「私もてっきりあのときは、別人格の『ラウド・ゼロ』ちゃんの方が出てきたのかと思ったけど、あれはキョンキョンそのものだったんだよねえ」
こうして残った今日子たち四人は、夜の終電の時刻まで、カラオケ店でそれぞれの得意なアーティストの曲を、思う存分に歌った。今日子の場合だと、歌うアーティストはもちろんラルクのみである。今日子はまたいつものように、人が変わったみたいに、それこそトチ狂ったようにして、ラルクの楽曲をシャウトした。
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