第2話
それすらも彼女は見逃さずに、驚くほど執拗に私を攻め立てるのです。
そんなときは彼女もそんな女性を、私以上の長い時間で見ているというのに。
こういったことが頻繁に続くと、普通の男は嫌になってしまいます。
私も肉体的にはともかく精神的にはなんの特徴もない普通の男でしたので、自然と嫌になってしまいました。
一度嫌になってしまうと人間心理とは面白いもので、ちょっと嫌が、あっと言う間になにがなんでも嫌、というふうになってしまいました。
そこまでいけばもうやることは一つしかありません。
彼女と別れてしまうことです。
別れ話を切り出されたときの彼女の反応は、私の想像通りでした。
と言うのは抑え気味の話で、彼女のことをよく知っているはずの私の想像を、はるかに超えていました。
もう少しで死ぬかと思った、といったことは生きている人間からわりと聞く言葉ではありますが、あの場合の私は死なないほうが不思議だったと言ってよい状況だったのです。
そのとき彼女は、周りにある人を傷つけることが出来るもの全てを使って、本気で私を殺そうとしたのですから。
いつもなら運動神経が何本も切れているとしか思えない彼女が、このときばかりは信じられないほどの素早くて力強い動きを見せたのです。
私が知る人ぞ知る格闘家でなかったなら、本当に殺されていたことでしょう。
私はとにかくその場を逃げ切り、家を飛び出し近くにある交番に助けを求めました。
しかし彼女はそれでも追ってきて、右手に金属バット、左手に刺身包丁を構えたまま、交番の中にいる私に襲い掛かってきたのです。
その場にいた二人の警官と私の三人で、なんとか彼女を取り押さえました。
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