Humoresqueー軽やかな気分の小曲ー
香坂偲乃
プロローグ
New World Position 通称NWPはとある実験を成功させた。
赤ん坊の泣く声、水槽の中から出てきたその赤ん坊はN-01と名付けられる。その赤ん坊はすくすくと成長し、四歳で人を殺す事を覚えた。五歳になれば力も強くなり握力は三十キロを超えた。体は強靭で怪我をしても数時間で治り、高いビルから飛び降りても傷一つ負わない。ありとあらゆる実験を執り行い、この子が正真正銘の殺戮兵器となり得る存在だと証明された頃、警察上部がこの実験を嗅ぎつけた。いや、この実験の首謀者が売り込んだと言っても過言ではない。警察上部はこれを喜び、N-01は各地で裏社会の要人を殺す事となる。しかし、この子の母親となる人物が教育は受けさせたいと言って、実験場の膝元、
双子の弟は遺伝子操作を受けていない普通の人間で、母親は二人の内一人を受精卵の頃に差し出したのだった。子供は幼さ故かそれを気にせずにいたし、弟は姉の存在を三歳まで知らなかった。しかし段々と弟との差に嫌気が差した姉は中学に上がってから実験室に顔を出さないようになり、母親も普通の人間と変わらない生活を送って欲しいと思っていたので、何も言わないでいた。
姉のスマホにはいつも着信履歴。いつ戻ってくるんだという連絡だ。仕事は溜まる一方で、姉は暫く中学校を病欠と言う名目で休み、その仕事を消化した。その顔はもはや普通の人間ではなかった。目は曇り、その頬に血の気は無く、まさしくただ人を殺す殺戮兵器だった。血に塗れた手のひらで、彼女が希望を掴む事はあるのだろうか。いや、無い。もう戻れやしない。彼女はただ自分の運命を呪うのだった。
その内NWPはクローン人間の生産に着手し、それを成功させた。N-01の遺伝子を元に、クローン人間を量産する。しかしどの実験体も最初の子供の様に人を殺す事は出来なかったり、実験の負荷で死んで行ったり、廃棄処分をされていった。
その実験の過程で、実験体は十八の歳で終わりを迎える事が判明した。NWPは焦った。N-01が死ねば警察上部との繋がりが切れて、この非人道的な実験が公になるかもしれない。そう考えたNWPは延命処置を施す為に、一つの薬品を作る事に成功する。延命処置の実験はまだ行われていない。
彼女は自分が十八で死ぬ事を知って大層喜んだ。もうこれ以上人を殺さなくて済む。そう思った彼女は自ら仕事を率先して受けるようになり、その間に中学を無事に卒業した。高校に入る予定は無かったが、弟が一緒にいたので高校に入る決断をする。
そんな彼女にも心の拠り所はあった。幼馴染の一人の男の子だ。彼は彼女の生い立ちを知らずに育って来た、弟と同じ普通の人間である。彼女はその男の子に憧れていたし、彼も彼女に憧れていた。彼は彼女が何処か自分とは違う人間である事を薄々感じ取っていたが、何も言わずにただ傍にいる。触れてはいけないと思っていたのかもしれない。
――そんな、高校入学の日。
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