気まぐれ詩集

田川春樹

深海魚

夜の列車は深海魚です。


静かな海底を

するすると泳ぐのです。

かたかたと体をゆらし、

あとさきとなく泳ぎます。


そこでは、

私たちも深海魚です。


仕事に疲れたおじさんも、

夜遊びにふけった若者も、

あしたを夢みる学生も、

みんながみんな、深海魚です。


思うことはちがえども、

一様に、

くらい海底に

珠のようなあかりが

流れていくのを眺めながら、

今を、

過去を、

未来を、

かさねるのです。


時間のとまった、夜の底で。

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