第二章 七輪に礼拝する女

第二章 七輪に礼拝する女

「なっるほどねえ。また学校にたぶらかされて自殺未遂ねえ。全く百害どころか、もっと害が大きくなって来たね、学校は。」

杉三はお茶をずずっと飲み干した。

「しかし、学校の先生が生徒に対して親殺しというのも問題だけど、その一言だけで生徒が、ガス自殺をしようとするのも恐ろしいな。誰かに愚痴を漏らすとかもしなかったのか。」

蘭は、頭をかじりながらそういった。

「大体電車の中でも、高校生は楽しそうにスマートフォンで会話をしているじゃないか。」

確かに蘭の言う通り、高校生は皆そうだし、中にはうるさいくらい大声でしゃべっている高校生もよく見かける。

「まあ、僕たちには楽しそうにしゃべっているように見えますが、ご法度になっている事項はかなりたくさんある様ですよ。意外に、同級生との会話は、かなり体力を消耗するようです。」

「そうですね、教授。意外に本音の部分では、正反対の事を考えている高校生も少なくないようです。それを隠して友達の前では楽しそうにしなければならないので、名俳優と言われる以上の演技ですよね。」

懍の発言に水穂も付け加えた。

「先生の悪口とか、平気で漏らしているじゃないか。うるさいくらいで、僕はもうたまらないんだけどなあ。」

「内容を良く聞いてごらんなさい、蘭さん。そうすると恐ろしいほど画一的な内容をしゃべっていることに気が付かされますから。楽しそうに見えるのは、彼らが悪い人間であると、大人が決めつけているからでもあるんですよ。」

懍のような高等教育者であれば、高校生のおしゃべりも聞き取れるのかもしれない。

「でもですよ、教授。まるで日本語ではなく、中国語をしゃべっているように聞こえますよ。だから、何を言っているのだか全くわかりません。」

その通りでもある。高校生でなければわからない、いわゆる、若者言葉と呼ばれる単語が大量に登場して、すでに日本語とは全く違う言語のように聞こえるときもある。

「語彙が少ないのは、それだけ話す内容に乏しいという事でもあるんだよ。まあ、話していい内容がそれだけ限られているということだ。事実、製鉄所に来た人たちは、学校ではこんな内容をしゃべったら、ものすごくいじめられたという事をよく口にする。」

「そうそう、水穂さんの言う通り。言ってはいけないことを口にしたら、もう教室内ではアウトローの扱いさ。そうなったら最悪じゃないか。だから嫌なんだよ、学校って。」

「そうですね。これが海外の学校とは違うところで、勉強に行っているのに、友達同士で勉強の事を話そうとするのはご法度になっています。まあ、昔の書生でしたら、そうでもないかもしれないですけどね。でも今は、書生なんて存在しませんし、勉強させてもらえることのありがたさを教えてくれる存在もありませんから。教える側にも同様で、本当に教える喜びを得たいのであれば、アフガニスタンのような途上国に行くしか方法もないでしょう。」

「あーあ、やだやだ。なんで日本の教育ってのはいい方に向かわないのかなあ。で、その問題児はどうしてる?」

杉三はまたお茶を湯呑に入れた。

「はい、一応製鉄所にはいてくれてますが、僕らもひやひやですね、教授。今でこそ調理係のおばさんに見張っていてもらっているけど、すきを見て何かしでかすかもしれないし。」

「水穂さん、一応南京錠はかけてきました?」

「はい。ですけど、手癖の悪い人は、南京錠なんて簡単に壊してしまいますよね。」

「教授と水穂さんが、そういうのでは、よほど自殺願望の強い女性という事なのかあ。」

蘭は、頭をかじってため息をついた。

「でも、その人の親御さんたちはどうしているんですか?」

「はい、幸い、彼女の意見を尊重してくれて、あまりに人権蹂躙的な発言をする学校は、在籍しても仕方ないということで、現在新しい学校を探しているそうです。彼女のご両親が、新しい学校が見つかるまで預かってほしいと依頼してきたので、僕たちはその通りにすることにしたんですよ。まあ、比較的短期間の滞在という事にはなりますね。」

「彼女自身は、親御さんに捨てられたと勘違いしてもいるようで、結構問題は多いですけどね。」

水穂の言う通り、親に捨てられたと勘違いしてしまう寮生は、これまでの製鉄所でも結構いたが、居室に南京錠をかけてしまわなければならないほど問題が多いものはなかなか例がなかった。

「誰か、彼女を支えてくれるような人物が現れればいいんですけどね。なかなか難しいんじゃないですか。」

意外に、こういう人物が出現してくれたおかげで、あっけなく解決してしまう事例も少なくないが、今回は難しいのかもしれない。親からの支援はしっかりしているし、なかなかわざと地位の低い高校を選んだ理由というものが理解されにくい、というのがその理由だった。大体、製鉄所に来る子は、親が酒浸りになっているとか、愛人と出て行ってしまったとかそういう事情を抱えている者のほうが多いので、親がそろっているというところから明らかに違うのである。

「まあ、こういうケースは新鋭的な発想なので、高校の担任教師でも、理解するのは難しいんじゃないですかね。今の高校は、学校を維持するのに、進学率を上げることに拘泥していますから、その中に、例外的な生徒がいると、彼らの扱いには頭を悩ませるんじゃないかな。」

「なんだか、異教徒みたいだね。いや、異民族と言ったほうがいいかもしれないな。そうなると、民族浄化作戦みたいな印象も受けるよな。」

「そうだね。杉ちゃんの言う通りかもしれない。学校って、一番身近な国家に近いところがあるから。」

「まあ、学校を問わず、どこの国家でもそういう現象はありますよ。」

「杉ちゃんも、水穂も青柳教授も、そんな難しい話をよく理解できるよな。あーあ、僕はそれを理解することができないほど馬鹿なのだろうか。」

蘭だけが、杉三たちの話に加われず、大きなため息をついた。


その数日後、新規に製鉄所に入寮した松本麗子は、言動が落ち着いてきたため、やっと居室にかかっていた南京錠を外してもらうことになり、初めて製鉄所の中を歩き回ることが許された。もう生きていても何も意味がないと思っていたが、南京錠をとってもらったときに、手伝い人の磯野水穂という人が、一言、安全のためであって申し訳なかったと謝罪をしてくれたので、この製鉄所には少し優しい人もいるのかと考えを変え始めるようになっていた。

彼女自身、女性であったため製鉄作業に加わることは義務付けられていなかった。大体の男性は裏庭での製鉄作業に参加していて、裏庭では絶えず、燃料がどうのとか、真砂鉄をどうしろとか、そういう言葉が交わされていた。女性たちは仕事に行ったり勉強したりしている者が大半であり、体力に自信があるものは製鉄に加わることもあるが、基本的にたたら製鉄は女人禁止制とされているようで、有名なあの映画に出るような、女たちが鉄を作るという事例はほとんど存在していないと説明された。とりあえず麗子は、この広い建物の中を見て回って、寮生と呼ばれている利用者たちと交流を持つことから始めるようにと言われた。

麗子はその通りにすることにした。とりあえず南京錠が外された部屋から出てみて、広い建物の中を歩いた。廊下はすべて鴬張りになっていて、歩くたびにきゅきゅという音がした。それは、脱走者を出さないためでもあると彼女は感じ取った。一見すると、支援施設と言えなくもないが、そういうやり方を採用して、実質的には刑務所や精神病院と変わらないところへ送られてしまったんだと、彼女は改めてそう思った。あたしは、結局高校も合わないし、家の中でも厄介なものとして、こういう施設に送られてしまった。もう、この世の中ではならず者だ。もう、生きていても仕方ないか。

そう思いながら彼女は中庭へ出る廊下へ出た。裏庭は製鉄現場となるため、植物は何も植えられていないが、中庭は桜などの見せものになる植物が植えられていると聞いていた。しかし、今は夏なので、花は何も咲いていなかった。あるとしたら、中庭の池に錦鯉が飼育されているのと、スイレンの花が咲いている程度であった。春には、中庭に出る利用者もいるようであるが、今は誰もいないかなと思った。

しかし、人がいた。同時に日本語ではない不思議な響きのある言葉が聞こえてきた。そして、何かものを燃やしているのだろうか、バチバチという音が鳴っている。よく見ると、ひとりの女性が、池の前に立って合掌し、その不思議な発音をする言葉をつぶやいているのである。おそらく、麗子とは15年くらい年上の、30代と思われる女性で、黒い髪を腰まで伸ばしてはいたが、その唱えている言葉から、明らかに日本人ではなかった。それを裏付けることとして、黒い髪の中からところどころ金髪が垣間見れた。麗子は池に向かって合掌しているのかと思ったが、そうではなくて、彼女の足元には七輪が設置されていて、彼女はその七輪に向かって合掌しているのだった。

麗子がこの人は何をやっているんだとあっけにとられていると、不意に玄関先から声が聞こえてきた。

「だから、一日でいいから七輪返してくれないかな。あれがないと、ウナギのかば焼きが焼けないんだよ。」

「だけど、とっくに使ってしまっているよ。今年は、我慢してくれる?」

相手をしているのは水穂さんだとわかるが、話をしている人物は誰なのか、わからなかった。

「そうだけど、今日は土用の丑の日だろ。ウナギのかば焼きは、ガスより、七輪のほうがうまくできるの。」

「まあ、そうなんだけどさ、彼女にとっても、本当に大切なものでもあるしね、、、。」

水穂さんは、困っているのだろう。確かに七輪に向かって合掌するというのは奇妙だが、彼女の表情は真剣そのもので、勝手に手を出したらいけない気がする。

「だけど、七輪を一体何に使うんだ、魚でも焼くにしても、寮生さん全員に食べさせるには、うちの七輪では足りなすぎるだろうし。それに、七輪なんて、ただの調理道具なのに、それを何十日も借りるなんて。」

「じゃあですね、杉三さん、彼女が使っている現場を一度見て行ったらいかがですか。」

「わかったよ、教授。」

懍がそう促す声が聞こえてきて、車いすの音が聞こえてきた。数分後、中庭の方へ杉三たちが、やってきた。

「あれ、女の人が七輪に向かって合掌してらあ。」

「そうなんだよ、彼女は拝火教の信者なんだ。名前は望月カレンさん。ニ、三日前からここに来てもらってる。日本人のご主人と一緒に暮らしていたが、ご主人が政治献金事件に関与して逮捕されてしまって、刑務所にいる間、ここで預かってくれないかと華岡さんに頼まれて、引き受けたんだ。まあ、日本に身よりはないわけだし、せめて心のよりどころである、祈りの時間だけは持たせてやりたいと華岡さんは言っていて。中東の人は、宗教に心の安定を求める傾向があるからねえ。」

水穂が説明すると、

「はいかきょう?それなんですか?もしかして、新宗教みたいなの?」

蘭の一般的な質問に懍がこう解説した。

「ええ、中東のペルシャからインドの一部で信仰されている宗教のことですよ。と言っても新興宗教ではなく、アケメネス朝時代から存在し、サーサーン朝時代には国教化もされ、他の宗教にも多大な影響を及ぼしている由緒正しい宗教です。」

なるほど、麗子が世界史の授業でさんざん聞かされたゾロアスター教の事か。そういえば、拝火教とも呼ばれてきたなどと教わったことも思い出す。

「えっ、あの辺りは今の時代はイスラームではないの?」

「まあ、そうなんだけどね。今でもペルシャのヤズドという地区では、まだたくさんの信徒さんがいるらしいよ。なんでも、教祖が採火した聖火が、1500年以上消されることなく燃え続けているらしいから。」

「そうなんですよね。拝火教と言われるように、大仏などの偶像崇拝がない代わり、信徒は炎に対して礼拝するんです。彼らは、炎こそ、最高神である、アブラ・マズターの代わりだと思っているんですね。僕も、学生と一緒にペルシャを訪れた時に礼拝堂を拝見したけれど、厳粛に炎が管理されていて、なんとも鼻息をかけることもいけないと注意されて、咳もくしゃみも我慢しなければならず、大変な思いをしたものもいました。」

「なるほどねえ。つまり、火が奈良の大仏と一緒なのかあ。もし、そうなら、大仏があるところへ行かなくても、火があればいいのだから、ある意味便利な宗教ともいえるよなあ。」

「そうだよ、杉ちゃん。彼女が来た時に、ろうそくでも貸してあげようかと思っていたんだけどね、どうもそれでは物足りないというか、かわいそうな気がしたので、教授や華岡さんとも相談して、七輪を貸してもらおうということにしたわけ。きっと、彼女の考えでは、火を用いて製鉄なんて考えられないだろうな。火を、武器製造の道具にするなんて、ありえない話だから。」

麗子は興味深く水穂たちの話を聞いていた。その間にもペルシャ人のカレンは、一生懸命礼拝を続けている。唱えているのは、日本で言うところの念仏と近い物だろう。

「よし、わかった。七輪を返してくれというのはやめることにするよ。それよりも、早速買いに行こうぜ!」

不意に杉三がそんな事を言った。

「買いに行くって、何を買いに行くんだよ。」

蘭は、返答に困ってしまったが、

「当り前だい。新しい七輪に決まってらあ。うちの七輪はもう古ぼけていて、ウナギのかば焼きのにおいが染みついてしまっているので、大仏さんのようなものが乗るにはふさわしくないよ。それよりもちゃんとした真新しい七輪を使うべきだろう。それも、そこらへんに売っている練り物七輪ではなく、薩摩焼のような高級な焼き物で作られた七輪を使わせるべきだろう。だって、彼女にとっては、それが大事な心のよりどころだもの。そんな大事な行為に、魚のにおいが染みついたものを使わせるのは、ちょっとかわいそうな気もするぞ。」

と杉三は説明した。

「杉ちゃんはなんでそういう発想になるんだろう、、、。」

蘭はあきれてしまったが、

「そうですね、日本人は宗教にはあまり関心は強くないけれど、中東やヨーロッパなどでは宗教は非常に大きなものになっていますからね。確かに、魚のにおいがついていては、かわいそうかもしれませんね。」

懍も杉三に同意した。

「しかし、薩摩焼で七輪を生産することはないし、七輪の名産地は能登か香川ですから、いずれもここからでは遠すぎます。」

確かに水穂の言う通り、七輪の産地は石川県となっている。

「通販で入手するんじゃ、届くまでに時間もかかるし、送料と代引き手数料もかかるから、好きじゃないよ。」

「じゃあ、リサイクルショップでも行ってみる?」

「だめ、ああいうところは、古ぼけたものばっかり売っている。それに、本当に表示通りの価値があるかも疑わしい。押し買いなんていう言葉もあるくらいだから、どうやって得たのかも分からないから信用できない。」

「杉ちゃんは、そういうところは本当に高級志向なんだねえ。」

蘭と杉三がそういう話をしているのを聞きながら、麗子はそのペルシャ人の女性に対して何か助けてやりたいなと思った。と、いうのも彼女の高校では国際化時代だと言って、というより言いふらして、無理やり英語などの海外文化を教え込んでいたからである。将来的にその知識を使うか否かは別の話であるが、そういう事ができない人間は悪人だとでも脅かすように教えていた。

「あの、すみません。」

勇気を出してそういってみる。

「どうしたんですか。」

気が付いてくれたのは懍である。

「骨董屋さんなんかはどうでしょう。あたし、いいところを知っていますよ。」

「どこにあったっけ。」

「あるじゃないですか。吉原駅の近くに、50年くらいやっているお店。」

「吉原駅?見たことない、、、。」

杉三と蘭は顔を見合わせた。

「あるんですよ。吉原駅近くの青島ビルの二階にあるんです。小さいお店なので、なかなかわかりにくいとは思いますが、、、。」

「看板出てたっけ?店の名前は?」

「骨董店千鳥、ですが。」

「あ、あそこね。確かにありますよね。杉ちゃんたちは、歩けないから、なかなかビルの一階より上は見ないだろうから、わからないだけだよ。小さいけれど、看板もちゃんとある。」

水穂が、麗子の提案を後押しするように言った。

「その店にエレベーターはあるのかな?」

「いや、残念ながら階段しかなかったと思う。小さい店だし、建物自体古いので。」

「ええー、今時!?」

「まあ、古いものを扱う店だから、あんまり大規模な店ではないし、来るお客さんも限られているだろうからねえ。」

確かに骨董屋というと、一部の富裕層や、骨董収集が大好きなマニアな人しか来訪しないことも事実である。

「しょうがないよ、杉ちゃん。そういうところで車いす使われたら、アンティーク品を傷つけるかもしれないでしょ。」

「確かにそうかもしれないが、それだって人種差別だぜ!」

「杉三さん、これは蘭さんの意見のほうが正論に近いと思いますよ。ただ、確かに生活感のある道具を神聖な行為に使わせるというのは、ある意味宗教迫害にも近いものがあるとも解釈できますので、新しい道具を、というのは理解できます。」

「そうだろう、教授。だから、新しい七輪買いに行きたいの!」

「だけど杉ちゃん、このあたりでああいう骨董品を専門的に売っているのは、千鳥さんしかないと思うよ。あとは、年末にある富士山骨董市に行くとか。」

水穂の言う通り、富士市内で有名な骨董店というと、その店しか見当たらなかった。あとは全国チェーンで展開されているリサイクルショップしかない。富士山骨董市というイベントも開催されることは確かだが、年末までには遠すぎる。

「もし、車を出してくれるなら、私、買いに行ってきましょうか?」

麗子は、今日南京錠が解かれたばかりなのをすっかり忘れて発言してしまった。

「本当は、使用している本人に選ばせるのが一番なんだけどな。」

「でも杉ちゃん、言葉の問題もある。」

蘭が言う通り、外国人にはわかりにくいこともあるだろう。

「じゃあ、水穂さんに通訳してもらえば。」

「そうだね、現代ペルシャ語なら少し知っているが、ムスリムではない人の場合、語彙が少し違うこともあるからね、、、。」

「ぐずぐずしてはいられないよ。とにかく大事な物なんだから、通訳は必要だ。彼女に日本で安心して暮らしてもらうためにも、新しい七輪、買ってあげようぜ。歩けない僕らが行けないのなら、歩ける人が行ってあげてよ。よろしく頼む!」

「水穂さん、行ってあげてください。」

杉三どころか、懍までが、水穂にそう頼んだところを見ると、カレンの祈りをささげている顔は、本当に真剣なのだということが分かった。普段宗教にはあまりこだわりを持たない蘭も、彼女の顔を見て改めて中東の人たちの宗教観というものを感じ取った。高校で、ただの暗記科目としか見ていなかった麗子さえも、歴史というものの重さを改めて知らされた気がした。

「わかりました。行ってきます。」

水穂はそういってカバンをとりに応接室の方へ移動した。

「あたしも行っていいですか!」

麗子もこのときばかりはと思い、懍に懇願した。普通なら、まだ病状が回復していないとかそういう答えが返ってくるはずだと思われるが、

「どうぞ。」

懍はあっさり許可した。

「若い人にはいい勉強になるでしょうからね。」

その言葉を聞かないうちに、麗子は大喜びして支度をしに自身の居室へ戻っていった。

その間にも、カレンは七輪に向かって一生懸命祈りをささげているのであった。



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