償いは契約の後で 8/10
二の句を告げないでいる私に、真波は淡々と説明してくれた。
私の家を出た後、生まれ故郷であるこの地に戻ってきたこと、そこで例の男(
「鳴海……さんは、知ってるのか?」
「言えるわけない。気づかないままでいてくれたらって思ってたけど……」
「どうした?」
「薄々変だと思い始めてるみたい。最近俺に似てないって言われるようになって、酔った時はあの子に暴力まで……」
そう言いながら真波は肩を震わせて泣き始めた。
が、すぐに涙を拭いて
「ごめんなさい、こんな事あなたに言う資格も無いのにね。今言ったことは忘れて……」
私は無言で病室を後にした。
諸々の料金は真波が払ってくれるらしく、私自身は精密検査を勧める病院関係者を振り解くだけで済んだ。
自分の体の中心部が異常に熱くなっているのを感じる。
今まで体験したことが無い筈なのに、それが何なのか本能で理解していた。
それは『覚悟』だ。
何もできなかった自分が、
幸せにできなかった人の為、
残された時間を、
話したことも無い娘に費やす……
償いとしては悪くない、
決して悪くない。
ひとまず昨日泊まったホテルへ行き、諸々の準備を終えてベットに横たわった。
緊張で眠れないかと思ったが、不思議と落ち着いていて、朝の件もあってすぐに眠りに落ちた。
後一日
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