第18話 暴虐の勇者

――ミランダ視点


自称勇者の詐欺師が巷に溢れだしてからしばらく経ち、人々が勇者という存在にそれ程多くの反応を示す事が無くなった頃、数人の冒険者パーティーが私の働くギルドを訪れた。


「このギルドの近くには、訓練所とか言う施設があるそうだな。どこにある?」


パーティーは全部で四人。全員が私と同じ二十代前半に見える、年若いパーティーだった。男一人に女が三人。両手に花と言える環境だけに、周囲の冒険者がやっかみの視線を向けている。今私に質問してきたのはリーダーと思われる男で、背の高いガッチリとした体格をしていた。ところどころ金をあしらった、およそ戦闘向きには見えない派手な鎧を身に纏っていて、腰にはこれまた装飾が派手に飾り付けている剣を差している。居丈高に質問して、まるで黙って答えるのが当然とでも言うような態度に少しカチンとくる。


「訓練所ですか? 入所をご希望でしょうか?」

「そんなわけがあるか! 何で今更俺がそんな所に通う必要がある? ここの訓練所の出身者は腕が良いと評判だからな。使える奴がいれば俺のパーティーに入れてやろうと思っただけだ」


あんたの実力なんて知らないわよ――そう言いかけたのをグッと堪え、私は少し引きつり気味の笑顔を浮かべる。嫌な奴にも笑顔で対応、それが受付嬢のプライドだ。


「ええとですね。訓練所は引き抜き等の行為を許可された場所じゃないんですよ。それに訓練所はギルドだけでなく、ボルドール王国も半分出資しているんです。下手なことをすると捕まる可能性がありますよ?」

「関係あるか! 俺はレブル帝国の勇者だぞ。有象無象の自称勇者と違い、俺こそが本物の勇者だ。その勇者を罰する事など誰も出来はしない。もし俺に手を出せば、レブル帝国を敵に回すことになるからな」


レブル帝国の勇者――聞いたことがある。魔王復活の可能性が高いこの危機的状況で、自称勇者が数多く現れたのは周知の事実だけど、それとは別に、各国が正式に勇者と認めた者が数人居るらしい。現在確認できているのはリュミエルに一人、バリオスとベルシスに一人、そしてレブル帝国に一人だ。残念ながら、このボルドール王国に勇者と認定された人物はいない。それはともかく、この男の言葉が本当なら、今の所四人しか居ない勇者の一人がこのギルドを訪れたって事になるわね。


「他国の方ならなおさら問題を起こすわけにはいかないのでは? 貴方の行動次第で国家間の争いに発展しかねませんよ?」

「細かいことをグチグチとうるさい女ね。貴女は黙って言われたとおり、訓練所の場所を教えれば良いのよ」

「そうよ。知らないようだから教えてあげるけど、国が勇者と認定した人間には、ある程度行動の自由が与えられるのよ。これは勇者が活動しやすいようにと各国が共同で定めた取り決め。ギルドの職員風情がどうこう言う問題じゃ無いの」


取り巻きの女二人が、男同様上から目線でそう言った。男はどうだと言わんばかりにこちらをせせら笑っている。ムカつく……。この仕事をしてると上からものを言う冒険者なんか日常的に出会うけど、ここまでムカついた事は無い。彼等とこのパーティーが決定的に違うのは、あからさまにこちらを見下している部分だ。身なりや言動からして、たぶんこの四人は全員が貴族か、それに準じる身分に違いない。高貴な生まれの者が下々の人間を顎で使うのは当然と言った態度を隠そうともしないのが丸わかりだ。


カミーユやラピスちゃんがこの場に居たら、私のピクピク動く表情筋を見て吹き出したかも知れない。それぐらい私の笑顔は引きつっている自覚がある。ムカつく連中だけど、仮にも国の許可が下りているなら私の独断で断ることは出来ない。仕事と割り切って訓練所の場所を教えて。さっさとこの四人には視界から消えてもらおう。


「……なら問題ないですね。国の許可が出ているなら訓練所の場所をお教えしましょう」

「最初から素直に言えば良いんだ。余計な手間をとらせるな」


ピクピクピク――と、口が引きつる。何なの一体!? いちいち人をムカつかせないと喋ることも出来ないわけ!?


「……失礼しました。では地図をお持ちしますので……」

「早くなさい。まったく、使えない平民ね」


ピクピクピクピク! あああああ! 今日は入念にマッサージしてから寝ないと、次の日が大変なことになりそう。私は自制心を総動員して、丁寧に、そして素早く、このパーティーに訓練所の場所を教え終わった。彼等がギルドを去った後、思わずその場に座り込む私を周囲の冒険者が気の毒そうに見ていたけど、そんな目線を気にして取り繕う余裕すら失っていた。ああ、疲れた。


§ § §


――カリン視点


ラピスちゃんの家に共同で住むようになってから、私の剣の腕は以前と比べものにならないぐらい強くなっている。それもこれも全部ラピスちゃんのおかげだ。私が街に居る時は、彼女はどんなに疲れていても私達二人に稽古をつけてくれる。それがどれだけ貴重なことか、私は他人に言われなくても十分理解していた。


この街に出来た訓練所は、他と違って生徒の成長率が異常な伸びを現しているらしい。教官の数や施設の大小で色々差は出るだろうけど、数字の上でのみ言えば、ここは他と大差が無いはず。だと言うのにここの生徒だけが強くなっている理由は、やっぱりラピスちゃんが原因だと思う。


外見だけ見れば深窓の令嬢で、剣を持つより優雅にティーカップでも持っているのがお似合いなラピスちゃん。でも彼女はそこらの冒険者が束になっても敵わないぐらいに強い。そりゃもう圧倒的な強さで、たぶん彼女が本気で暴れたら、この街ぐらい簡単に滅ぼせるはずだ。そんな彼女の講義は評判で、今や半年先まで予約が入るほど大人気になっている。当然だ。だって他の講義と違い、彼女の講義をやり遂げると、それまでより確実に強くなれる事が約束されているから。その分厳しいことで有名だけど、今じゃそれすら当然のことと皆に受け入れられている。


そんな彼女がタダで、ほぼ毎日のように稽古をつけてくれるんだから、私とシエルはメキメキと腕前が上がっていった。最近シルバーランクに昇格できたのも、私達の可愛い師匠のおかげだ。


そんなラピスちゃんだけど、今は珍しくこの街を留守にしている。なんかギルド職員で行う合同研修会? とか言うのに参加しなくちゃいけないらしく、王都まで行ってるから、しばらく帰ってこない予定だ。その間も自主練だけは欠かすわけにいかないので、私は訓練所にお邪魔して、他の訓練生と手合わせをさせてもらっていた。ちなみにシエルは臨時のパーティーに参加しているので、ラピスちゃん同様留守だ。


「いや~、カリンはやっぱり強いな!」

「努力してますから! それに師匠が良いんです」


ここに来る度、私と手合わせをしてくれる冒険者の男性――ロバートが、手ぬぐいで汗を拭きつつそう言った。彼は今年三十ちょうどになるベテランの冒険者で、シルバーランクになってから二年ほど経つらしい。短く刈り上げた白に近い銀髪が特徴的で、顔にある大きな傷跡のせいで強面に見えるけど、真面目で優しい性格をしている人だ。訓練所に通う人達は基本的に長く居ないので、ロバートさんのように半年近く通っている人は珍しい。彼は同じ講義を何度も何度も繰り返し受けている事で有名な、少し変わった人だった。


「その師匠、ラピスさんはいつ頃帰ってくるの?」

「むこうに三日滞在してから帰ってくるから、移動距離を考えるとあと一週間ぐらいかな?」

「彼女が不在だから講義の参加者も目に見えて減ってるからな。早く帰ってきて欲しいもんだ」

「本人も行くのを嫌がってましたよ。帰って来た時にガッカリされないように、剣の腕を磨いておかなくちゃ。その為にももう一本、いっときますか?」

「ははは。やる気満々だな。当然付き合うがね」


私達は笑顔を浮かべながら剣を構え、お互いがいつでも飛びかかれるように身を低くする。今日はこれで十本は手合わせをしている。戦績は私が七勝三敗で押してるけど、実戦は少しの油断で実力者が素人に倒されることもあるから、戦績なんか気にしてもしょうが無い。私は腕を上げるため、一本一本真剣に向き合えば良いだけだ。


呼吸を整え、自分の中で戦い方を組み上げていく。以前は何も考えずに剣を振るっていた私でも、今じゃ頭の中で相手がどう動くのか、攻撃した場合どう反撃してくるのか、数パターンを瞬時にシミュレーション出来るようになっていた。


「よし……」


初撃の後ロバートさんがどう回避するのかを予想して、今まさに飛びかかろうとした瞬間、私達の出鼻を挫くかのように、訓練所宿舎近くで騒ぎが起きた。出鼻を挫かれた形の私達は揃って剣を下ろし、緊張を解く。


「……何だろうな?」

「気になりますね。喧嘩かな? ちょっと見に行ってみましょう」


訓練所にはギルド同様に血の気の多い奴が集まるから、喧嘩は珍しくない。週に一度は起きるぐらいだ。でも今回の騒ぎは少し雰囲気が違っていた。大勢の訓練生が少ない人数の何人かを取り囲み、しきりに非難しているみたいだ。


「何考えてやがるんだ! いきなり殴りつけるなんてイカレてるぞ!」

「偉そうにしやがって! 何様のつもりなんだ!」

「誰か衛兵を呼んでこい! 頭のおかしい奴等が暴れてるってな!」

「何とか言いやがれ!」


口から血を垂らし、顔を腫れ上がらせた何人かの訓練生が、他の訓練生に介抱されている。彼等が取り囲む輪の中には冒険者らしき四人組の姿があった。リーダーらしき黒髪の男と、魔法使い、僧侶、戦士と言った出で立ちの女が三人。彼等は周囲の怒号など何処吹く風で、顔に薄ら笑いすら浮かべている。


「何があったの?」

「え? あ、ああ、カリンか。何がって、あいつ等がここを訪ねてきたと思ったら、対応した奴をいきなり殴りやがったんだ。慌てて取り押さえようとした連中も一緒にな」


顔見知りの訓練生に尋ねると、彼はその時の状況を目撃していたみたいで、詳細に話してくれた。今取り囲まれている四人組は、驚いたことにレブル帝国公認の勇者らしい。その勇者は他国にも評判になってる、この街の訓練所――その中でも圧倒的な実力を持つと言われる教官をスカウトしにきたみたいだ。考えるまでもなくラピスちゃんしか居ない。でも彼女は王都に行って留守にしているし。空振りに終わった勇者は八つ当たり気味に近くの訓練生を怒鳴りつけた。当然何の非もない訓練生は言い返して口論になった。当たり前だ。わけのわからない奴に難癖つけられたら、私だって同じ対応をしたはず。訓練所で喧嘩が起きた場合でも、大概の場合は口論だけで収まるので、血を見ることは少ない。だって、一般人と違い、訓練生は冒険者や兵士、それに騎士と言った戦うことを専門とする人達ばかりだから、無闇に力を振るえば命のやり取りになる事が解っているからだ。


それだというのに、あの勇者はいきなり口論相手を殴りつけた。しかも止めようとした人まで一緒に。いくら不意打ちとは言え、修練を積んだ訓練生を拳一つで倒してしまうなんて、かなりの実力が無ければ出来ない。性格はともかく、実力だけは本物らしい。それを感じ取った訓練生達は、口々に非難しても決して手を出そうとしていない。自分達が敵う相手じゃないと理解しているんだ。それが解っているのか、勇者は挑発するようにニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。


「精鋭を輩出し続ける大陸一の訓練所だと言うから来てみれば、なんだこれは? 居るのは精鋭どころか雑魚ばかりじゃないか」

「な!?」

「誰が雑魚だ!」

「これだけ言われて剣を向けることすら出来ないのが雑魚の証拠だろうが? 生徒がこんな調子なら、噂になっている教官とやらも大したことが無いんだろうよ」


ザワリ――と空気が変わった。ここに居る人達は、ラピスちゃんに出会えて急激に力をつけた人達ばかりだ。厳しい訓練を課すことで有名な彼女だけど、みんなが彼女に心から感謝している。それに彼女は街を救った英雄だ。敵の大将であるリッチを倒したのは勿論、彼女の回復魔法で命を救われた人も少なくない。彼女を侮辱すると言うことは、自分が侮辱されるより赦せない行為だった。


一斉に武器に手が伸びる訓練生達。それに反応して勇者パーティーも臨戦態勢に移る。このままじゃ血を見ることになる――誰もが思ったその時、私は彼等の前に飛び出していた。


「なんだ女?」


突然現れた私に、勇者は冷たい目を向けるだけだ。一瞬気圧されそうになったけど、お腹に力を入れてにらみ返す。


「私達の教官が弱いってのは聞き捨てならないわ。訂正しなさい」

「断る。俺は誰の指図も受けない。どうしても謝らせたいなら、お前が実力で証明してみるんだな」


あからさまに他人を見下した態度。取り巻きも含めて、絶対に私が挑発に乗らないと確信しているみたいだ。今までの私ならここですごすごと引き下がっていたかも知れない。でも、今の私は違う。ラピスちゃんに出会ってから私は変わることが出来た。困難から逃げ出してばかりだったのに、積極的に厳しい環境に身を置くようになったし、お酒もギャンブルも綺麗さっぱり足を洗った。甘ったれた私の意識を変えてくれた恩人でもあり、大切な友人でもあるラピスちゃん。そんな彼女を侮辱する奴は、たとえ相手が勇者だとしても許したりしない。


「やってやるわ」

「お、おいカリン……」

「……本気か?」


スラリと剣を抜いた私に周囲がどよめく。でも一番驚いていたのは挑発してきた勇者本人だった。剣を向ける私を意外そうに見て、同じように剣を抜く。


「なかなか度胸があるな女。だが、度胸だけじゃ実力差はどうにもならんぞ?」

「そんな事は私に勝ってから言いなさい」


私の体から放たれる本気の殺気を感じとったのか、周囲の訓練生が少しずつ離れていく。勇者の取り巻きはその場に残ろうとしたみたいだけど、勇者が犬を追い払うように手を振ると、渋々離れていった。私と対峙する勇者を中心に、綺麗な人の輪が出来上がる。これだけ離れてくれれば周囲に被害が及ぶことは無さそうね。


「先手を譲ってやる。いつでもかかってこい」

「そう……。じゃあ遠慮なく!」


完全にこちらを舐めてかかっている勇者に対して、私は初手から全力で襲いかかった。魔法使いに比べると遙かに少ない魔力を体内に循環させ、全身の筋肉を強化させている私の踏み込みは、勇者との距離を一瞬で詰めた。ラピスちゃんが教えてくれた魔力の活用法だ。


「はあっ!」

「なに!? ――くっ!?」


私が振り抜いた剣は勇者の頭上目がけて勢いよく振り下ろされ、油断して回避の遅れた勇者の右肩に激突し、その白い鎧に火花を散らす。でも鎧の肩口に当たっただけでダメージはないみたいだ。勇者は顔をしかめつつ距離をとろうとするけど、私は剣を振り抜いた瞬間地に着けていた左足に力を込め、勇者を追いかけるように横っ飛びに跳躍する。


「逃がさない!」

「ちいっ!」


空中で連撃を叩き込もうとしたのに、勇者は不利な体勢にも関わらず剣で受けきってしまった。反撃とばかりに突き出された剣が私の耳元を薄く切り裂き、髪の毛を何本か飛ばしていく。危険を承知で肉薄した私は、掌底に魔力を纏わせて勇者の胴体を打ち抜いた。


「ぐはっ!」


今のは効いたはずだ。ラピスちゃん直伝の鎧通しという変態技。強固な鎧で剣や拳は防げても、その衝撃までは防げないという、よくわからない理屈の技。私は感覚的に使っているだけだけど、鎧任せの防御をしている勇者の虚を突く事は出来たみたいだ。


数メートル吹っ飛ばされる勇者。ここで調子に乗って油断したりしない。相手が動かなくなっても確実に死んだと解るまで剣を収めるなと、常日頃からラピスちゃんに口を酸っぱくして言われているからだ。


「はああっ!」


私は勝負を決めるべく再び勇者に向かって跳躍する。私と勇者の間に遮る者はいない。横に構えた剣を振り抜けば、体勢を崩したままの勇者は為す術もなく攻撃を受け、その腕を破壊できるはずだ。目の前に迫る私に舌打ちした勇者が慌てて剣で受け止めようとするけど、私の踏み込みの方が早い。もらった――! と思った次の瞬間、私は背後に強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。


わけがわからず地面の上を転がり、一瞬意識が飛びそうになったけど、背中の激しい痛みで何とか踏みとどまれた。い、一体何が起きて……?


「汚えぞ! 一対一じゃないのかよ!」

「背中から魔法を撃つなんて、それが勇者のすることか!」

「恥を知れ恥を!」

「黙れこの雑魚ども!! 一対一などと言った覚えはないぞ! その女が油断していただけだろうが!」


勇者の剣幕に訓練生達が怯む。背中から撃つ? どうやら、わたしは魔法の不意打ちを食らって吹っ飛ばされたらしい。まったく想定していない方向からの攻撃だったから、躱すどころか認識も出来なかった。背中の痛みは激しい。髪の毛がチリチリになってるところから考えると、火炎魔法の類いみたいだ。全身に魔力を巡らせてなかったら致命傷になっていたかも知れない。殺し合いでもないのに一体何を考えてるんだか……!


「ぐっ……」

「ほう、立ったか。大したものだ」


偉そうに。不意打ちで仲間に助けられた卑怯者が、何故か上から目線でものを言っている。こんな卑怯者には死んでも負けたくない! 今まで努力した実力が発揮できれば、間違いなく勝負は私の勝ちで終わっていたのに……! 体が元気なら声が嗄れるほど罵倒してやりたいのに、今は呼吸するだけでも全身に激痛が走る。辛うじて手放さなかった剣を杖代わりに立ち上がって勇者を睨み付けるつもりが、目の焦点が上手く合わない。


そんな私に勇者は容赦なく剣を振り下ろした。風を切る音に訓練で培った体が勝手に反応し、反射的に剣を振り上げたけど、剣は簡単に弾き飛ばされてしまう。直後、私の鎖骨が嫌な音を立てて砕かれた。剣を持つ力が失われ、体が自然に倒れかかる。そんな私を無理矢理立たせたのは、勇者の攻撃だった。


「あ……ぐ……っ!」

「悲鳴を上げんとは大したもんだな。だが、これならどうだ!」


今度は腕が、次は足の骨が砕かれた。悔しい! 何も出来ないなんて! でも悲鳴なんて上げてやらない。絶対にコイツが喜ぶような無様は晒さない! そんな私の態度にイラついたのか、勇者はまだ無事な箇所を次々と剣で打ち据えてくる。


「ぐ……うう……っ!」

「しぶとい女だ! さっさと降参したらどうだ!」

「く……くたばれ……糞野郎……」

「貴様!」


激高した勇者が振り抜いた剣は、今までで一番の衝撃を体に与えてくる。自分の体が宙に浮いている感覚を最後に、私の意識は闇に落ちた。

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