幸福度

「絶対的な幸福感に包まれたまま死ぬまで意識を失う装置があったら、君は利用するか。」

絶対的な幸福。僕が感じている「幸福」はただの化学反応である。

脳が幸せだと感じる。

幸せ。

つまりは僕が何をして「幸せ」を得ようと、辿って行けば同じ「幸福」という感覚なのだ。

同じ「幸福」。

ならば過程を重んじる必要は合理的では無いのでは。

「君はどうする。」

「使わない。」

眼鏡の声。

「…きっかけって、あるじゃん。

何事にも色があって幸せにも同じように色があると思うの。」

色。言葉を頭の中で反芻する。

「過程が大事だと思うよ。

過程の違いによって幸福も違うじゃん。

ほら。例えば、友人といる幸福と恋人といる幸福は違うし。」

過程。この眼鏡は過程を重んじる眼鏡らしい。

「うん。」

相槌を打つ。情け無い声。

シンとした部屋に響く。

「脳に幸福だけを貰えても寂しい。」

変換された機械の声は何故か寂しそうだった

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