第5話怖がる愛美

「ところでお二人は、どうしてこの部活を見学しようと思われたのですか?」

 また別の男子学生からそのように、逆に質問された美和子は、

(ああ……そのことね……)

 と思って、次のようにありのままを話した。

「説明会のときにもらったチラシが、フルカラーのチラシであったことに興味が出まして、あと期末試験の過去問のストックが豊富にありそうということと、それとこの大学って、文系の学部や学科しかないのに、理系のことをやるということらしいという、この三点に魅力を感じまして、見学しに来ました」

 美和子はそのように正直に、また率直に答えた。

「ああそうだったのね」といった表情を見せる、男子学生たちだった。

「ところでどうしてこの部活だけ、配られるチラシが、フルカラー印刷なのでしょうか?」

 そう逆に美和子が質問を投げかけると、また別の男子学生は、

「ああ毎年配っているフルカラーのチラシはですね。元々新入生が集まりやすい部活ではないから、新入生への勧誘はインパクトが大事だと思っていまして、毎年結構な手間はかかるのですけれども、新入生に配るチラシはあえて、フルカラーで印刷をしているのですよ」

 と、これまた親切丁寧に答えて下さった。

「美和子。出ようよもうこの部屋! なんか変だよ嫌だよ……」

 愛美は明らかに怯えているというか、怖がっている……この空間から早く逃げ出したいといった様子だった。美和子は愛美がそこまで言うものだから、ここらで切り上げようと思い、美和子と愛美は、

「今日はお忙しい中、見学させて下さいまして、ありがとうございます」

 とは言ったものの、すると今度は部長? と思われる別の男子学生が、机の引き出しから、

「はいこれ入部のための用紙ね。入部したくなったら、これに必要なことを書いて、ここへまた持ってきて下さいね」

 と言われて『入部届け』を『二枚』渡された。

 はて? 入部の意思なんて、果たして見せただろうか? と美和子は疑問に思ったのだけれども、愛美のあまりにも怯えた様子を見た美和子は、もうこの部屋は出ないといけないと思って、美和子と愛美は見学のお礼を言うだけ言って、この部室を出ることにした。

 部室を出てから、愛美が速攻で美和子に、こう言った。

「美和子。やっぱり止めときなよ。あんな部活……。考え直そうよ! あの男子学生たちの顔、見たでしょ? どう見たってオタク丸出しの『彼女いない歴=年齢』みたいな人、ばっかりだったじゃない!」

「でも私たちに対する言葉づかいも、ものすごく丁寧だったし、第一部員の人たちが人が悪そうには、とてもじゃないけど、そうは見えなかったけど……」

 美和子がそう言うと、愛実は露骨に嫌な顔をして、

「ああいうのは入部するまでは猫をかぶっていて、いざ入部が決まったら、本性を現すのが、定石ってものなのよ!」

 そして愛美は立て続けに美和子に対して、こう言い切った。

「美和子は興味津々なの? あんなガリ勉ヲタクたちの集団に……」

 そこまで言われた美和子には、愛美に返す言葉が見つからなかった。

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