第27話

テレビにはありがちな旅番組が流れていて、グルメリポーターが何処かのご当地グルメを大袈裟に食レポしている。


『なぁ誠司。この島の絶景ポイントみたいなの知らないか?』


テレビを眺めていた父さんが"ボソッ"と口を開いた。


「え?なんで?」


『いやな、父さんの会社で写真展やってるだろ?それで今年の写真展にこの島の風景を出したいって言うんだよ。』


父さんの会社は色々な事業をやっているらしく、その1つが写真展だという話は前に聞いたことがある。

何年か前に一緒に見に行ったことがあったが、つまらない風景写真ばかりで、すぐに飽きてしまった俺は近くのコンビニで立ち読みしてたっけ。


「父さんまだ会社始まるまで何日かあるんでしょ?島ん中グルーっと一周してみれば??」


『ははっ、そうだな。だけどこの島の事はこの島の人間が1番知ってると思うんだ。』


この島の人間か…

真っ先に思い浮かぶのはやはり海美の顔だ。

というか俺はこの島にアイツくらいしか知り合いが居ない。


「分かった。俺聞いてみる!」


丁度そういう"仕方がない理由"を探していたところだった。

俺はこの島を何も知らない。だからキッカケがあれば海美にこの島を案内してもらいたいと思っていたのだ。


いや、知りたいのは"この島"ではなく"海美の事"?


「いやっちげーし!!」


『ん?どっちだよ?はははは♪』


「え?あ…やるよ!やるやる!!俺が最高の写真撮ってくるよ!」


『おっ、頼もしいなぁ!それじゃぁ悪いけど頼むな。それと、"その子"にも宜しくな。』


こうして父さんの代わりに"カメラマン"を任されたはいいが…


「なんて言おう…」


父さんの一眼レフカメラを手に、1人自分の部屋の天井を眺めて考える。


開け放たれた窓のレースのカーテンが、俺の気持ちを描写するように潮風に揺られて行ったり来たりを繰り返していた。

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