第14話

その日、俺はいつもより30分も早く家を出ると、足早に学校へ向かった。


直接渡すのが理想ではあったが、そんな事を俺ができるわけもなく、靴箱へと忍び込ませるという"女子的"な行動に移すことにした。

自分でも情けないがこうする他なかったのだ。


学校へ到着すると案の定、生徒の姿は無く、掃除をしていた用務員のおじさんに挨拶をすると足早に靴箱へと向かった。


その間にも心臓の鼓動はスピードを上げ、次第に手足の感覚すら無くなっていく。膝は機能を無くし、少し気を抜くだけで崩れ落ちてしまうほどになっていた。

靴箱の前でその身体を止める。

急いで鞄から手紙を取り出すと杉田の靴箱を開き、投げ込むようにしてその場から走り去った。


『セイジっ!!こんな早くからどーした??』


校門から出る際にタクヤとすれ違ったが、俺は足を止めることなく家へと走った。


俺はその日学校を休んだ。


臆病な俺は杉田の反応を見るのが怖くて逃げたのだ。


そんな事をしても時間は待ってくれない。


あっという間に次の日はやってくる。


…そしてすぐに朝はやってきた。


緊張で力の入らない足で校門の前に差し掛かった時だ。


タクヤの背中が目に入った。


「おはよ。」


『……』


「なんだよ。シカトすんなって!笑」


『るせぇよ!!』


明らかにタクヤの態度が違っていた。どーせ母ちゃんに叱られたんだろ。そんな程度にしか思っていなかった。


杉田の事を横目で探しながら教室へと入ったとき…みんなの視線が一斉に俺に集まった。


「え?なに?」


なんだよみんなして。まさか!告ったのバレたのか…?いや、杉田はみんなに言いふらすようなヤツじゃないし…


すると、『あれ…』1人の女の子が気まずそうに教室の後ろを指差した。





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