第12話

『はいっ♪出来上がり♪』


母さんがそう言って、俺の手のひらにそっとペンダントの重みが伝わる。


「あ、ありがとう。…自分の部屋片付けてくる。」


そう言って俺は直ったばかりのペンダントを首に掛け階段を上っていく。


2階のベランダのある部屋が今日から俺の部屋だ。


そんなに広くはないけど、"あの景色"を毎日見れるならそれでいい、そう思った。


そして部屋の隅に1つだけ置いたダンボールを開く。


俺の荷物はこのダンボールだけだ。


他の荷物は全て捨てた。あの記憶と共にあの街へ。








あれは1年前。ちょうどこれくらいの時期だったか…



『おいセイジ。今日も俺んちでゲームやろーぜ!!』


「はぁ?お前弱いじゃん。やり甲斐ねーんだよなぁ弱すぎて!笑」


俺の親友のタクヤは昔から遊ぶときはいつも一緒だった。中1になった俺達はクラスも一緒になり、ほぼ毎日学校や部活が終わってからお互いの家で遊んでいた。


『お前さぁー、リナどう思う??』


俺の家でゲームをしていた時、突然タクヤがそんな風に言い出した事があった。


「え?杉田の事?なんで?」


"杉田里奈"は小学校から同じクラスで、誰にでも優しい大人しくてそこそこ頭のいい女の子だ。


そして紛れもなく俺の初恋の相手、いやその時は現在進行形で想いを寄せている女の子だったのだ。


しかし奥手な俺は、いざ杉田を目の前にすると会話は勿論のこと目を合わせることすらできない。平静を装う事に必死で、ただ遠くから見ているだけというもどかしい日々を送っていた。


「別に。悪くはないと思うけど…」


それ以上会話は続かなかったが、長年連れ添った"親友"だ。その一言の内に秘めたその気持ちが分からない訳がなかった。





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