僕らの恋は、最大級の友情でした。

青葉 一華

プロローグ

高校3年、春。今年は例年にない寒波が日本列島を襲い、春といってもまだとても寒い。そんな中、僕はただ一人、砂浜の上に立っている。


2ヶ月前の今日、僕の友人がこの海の中に消えた。クラスでも目立たず、自分から声をかけるようなタイプではなかった君は、休み時間には本を読むか、窓の外をぼーっと眺めているような人だった。

それもあってか今では、僕以外の誰もが、まるで君という人物は初めから居なかったかのように普通の日常を過ごしている。


そう思って、ふと考えた。ああ、君からしたら、普通、というと語弊があるかな。君にとっての普通は、僕らの思う普通とはかけ離れていた。

そんな事を考えていると、なんだか笑えてきた。気がつくと、僕はすっかり君と同じ目で世界を見てしまう。


周りの人から君という存在が消えて、僕の前から君が消えて、世界の誰もが君がいた、という真実を忘れても、僕の中にはしっかりとその面影が濃く残っている。それほど、僕にとって「彼女」の存在は大きなものだった。


ふと目の前の海に視線を向ける。果てしなく続く地平線は広大な海をより感じさせる。

「君も、ここへ来たのか───」

靴を脱ぎ、素足でありのままの自分を晒した時、君は、一体何を思ったのだろう。

僕は斜めがけのバックから一冊の本を取り出し表紙をめくった。今もう一度君に会いたい、そう願いを込めて。


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