うつ、のち晴れ

SAI

1.

涙がすーっと頬を伝って落ちた。


おかしいな、と涙を拭いながら、帰宅するサラリーマンでごった返した駅へ向かう。


今日も仕事は暇だった。

忙しい人からしたら羨ましいかもしれないけれど、やることがないのはとても辛い。


福岡では、慣れない営業職に四苦八苦していたが、東京本社で事務職になってからは、暇な日々が続いている。


こんなにたくさん人がいるのに、私が知ってる人はごくわずかなんだなと、すし詰めの電車に揺られながら、ふと寂しくなった。


東京に来てから1年と少し。

趣味を通して友人も出来たし、会社には仲の良い同期もいるけれど、狭い部屋に帰ると、空しさが襲ってくる。


星のない白みがかった夜空を見上げた。

ビルのせいで、そんな夜空も少ししか見えない。


御総菜屋さんで買ったお弁当を食べ終わり、ぼーっとしていると、また涙が溢れてきた。


仕事が大変だったり、人間関係で悩んでるわけでもない。

どうしちゃったんだろう。


モヤモヤのせいで眠れなくて、気がつけば浅い眠りにつき、早々と朝が来る。


そんな感じでギリギリに起きてしまうし、小走りで駅に向かって、やっと会社に間に合うような毎日。


ある朝、思考が停止した。

会社、休もう…。


この日から私は、いわゆる"普通″な人生とは別の道を歩むことになる。




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