第31話 王都で

【王都で】


 辺境泊邸を3台の馬車+ATVで出発した一行だが、2日目にゴブリンが単独でふらりと馬車の前に出てきて速攻で護衛の騎士に速攻で対峙されたぐらいで特に問題なく順調に進んだ・・・

 3日目、後、1時間ほどで領内を抜けるという所で襲撃を受けた。


数本の矢が馬車に刺さった、その内の1本が先頭の馬車の御者の馬車に刺さった。


 「ウォーッ!!、いけーっ、皆殺しだー」

 盗賊は総勢20名以上、15名の騎士に任せて俺は馬車内の護衛のために留まって様子を見ていた・・


 奈津が剣を抜いて一番にATVで突っ込んでいく。

(あの、ばか・・・)

 俺は馬車の外に出たが馬車を離れる訳には行かず、いざとなったら飛び出すとして暫くは様子を見る事にした。


 ATVで構わず轢きながら脇の盗賊を切り捨てていく・・・何人か倒したところでATVをおりて盗賊に向かって駆け抜けていく、奈津が舞う様の盗賊の脇を抜ける度に盗賊の首が飛ぶ、奈津が舞う、首が飛ぶの繰り返しだ、騎士もあっけに取られて立ち尽くして見ている。

 

 俺は周囲を警戒すると木の上で弓で狙っている者が居たので指弾で打ち落とす。

 (やはり対人ぐらいにしか使い道がない気がする・・・もうちょっと威力が欲しいなぁ・・・)

 さらに盗賊の一団から50m以上離れたところに一人居るのが分かったので馬車の警護を騎士に頼んで千里眼で場所を確認してから転移する。

 

 奈津は盗賊と位置簿も切り結ぶこと無く一方的に虐殺されていく、暫くすると盗賊は立っている物が居なくなった。立っている者がいなくなるとまだ、生きている者に止めを刺して回っている。

 

 「や、やめろー、助けてくれー」

 奈津は顔色ひとつ変えず何も答えずにただ、剣をさして止めをさしていく。

 「グハァッ、」盗賊は絶命していく・・・

 

 俺は転移した瞬間に男を殴り倒して気絶させた。

 気絶させた男を引きずってくると男はクリストフ男爵の執事だと言うことが分かったのでそのまま捕縛して王都へと連れて行くことにする。

 

 「いやー、マジで容赦なくやったなぁ・・・」

 奈津は一人で半分以上を切り倒していた・・・

 「えっ、容赦する必要があったの?」

 

 「いや、ぜんぜん、無いんだけどね、その、初めてだろう、人が切れるか心配してたんだよ。」

 普通に暮らしてる者には殺人はなかなか出来無いもので仮に恨みがあったとして殺してしまっても後からその思いで精神的に参ってしまうって聞いてたけど、どうやらなつには心配なさそうだ・・」

 

 「だって、此奴ら女は犯してから殺すんでしょ、もしくは売り払うとか・・・だったら殺すのには魔物より抵抗はないわ。」


 そう言ってのける奈津は生きてる魚は可哀想と言って調理出来ない。奈津にとって人であっても盗賊の場合は魚以下に認知されているのだろう。


 「所で凄かったけど、剣士のスキルでも付いたの?」

 「剣士のLvは5から10にあがったよ、剣聖の称号が付いたみたい。」


 「そんな、むちゃくちゃな・・・」

 「そうなの?」


 「俺は森で1週間、魔物を借りまくって剣士Lv1~Lv3に上がったのだってかなり良い方なのに、スタートが5なんてチート過ぎるって・・・」


  はぁ・・・何だよ、この差別、奈津は魔法も使える、剣士はカントスだと・・・なのに俺は攻撃系は対人ぐらいにしか使いようがない指弾だけ・・・はぁ・・・

 久志は肩がおちた・・・

 

 「ん、そう言えば切らそうに見えた時があったけど、他にまだ、スキル持ってるの?」

 「あるよ、隠蔽、幻影、気配断、縮地とか・・・」

 「わかった、もう、いいよ、俺が惨めになるだけだから・・・」


 「奈津、此奴らが全部入りそうな穴を土魔法で掘ってくれ・・・」

  奈津が掘った穴に装備を外した盗賊を投げ込んでいく・・・

投げ込んだ盗賊は奈津に燃やしてもらってから埋めてもらった。


 奈津さん、無茶苦茶、強いんじゃねと言われる一方、あんたの嫁はん、怖いな・・・とかおれ奈津さんに殺されない様に言葉使い気を付けますとか散々なことを言われた。


 なんやかんやで2時間ほどの時間を取られてしまったので王都へ向けて出発した。

 

 途中、トラブルらしいトラブルも無く予定より1日早い9日目で王都に着いた。

 王都の入場門では貴族用の門を使うことで並ぶこと無く入る事が出来た。今日は宿に泊まり明日、城へと向かう、俺の立場一応、従者となっている。

 

 朝、城からの迎えがやって来たので謁見に赴くことになった。

 謁見するのは辺境伯、侯爵、従者の俺の3人だった。ま、通常は従者は謁見しないんだけどね。

 

 謁見の前に待機する部屋で待たされている間に謁見時の大まかな打ち合わせを行う。

 衛兵が呼びに来たので連れられ謁見の間に向かう。

 

 国王がやって来た。

 「皆の者、頭を上げて楽にするがよい」

 その言葉で皆が顔を上げる。

 

 「うちの息子はどうした、来ておらんのか?」

 クリストフ男爵が長男のクリスがいない事を不審がって訪ねる。

 

 「私と娘に不敬を働いたので不敬罪より打ち首にしました。」

 侯爵は堂々と、当然の様に答えた・・・

 

 「何、貴様!!、何のつもりだ、はては企んだな~!、息子のかたきだー」

 クリストフ男爵は懐に入れていた短剣で侯爵に斬り掛かかろうとしたが、近衛兵によって阻止される。

 

 「ルーク侯爵殿、どういう事なのか説明してくれるかな?」

 国王が侯爵に対して説明を求めているが、問い詰めている様子は微塵も無い。既にこの時点でクロスの死亡は国王には俺が知らせていた。

 

 「説明するより、こちらを見て貰った方が早いでしょう。これはその場の様子を記録する魔道具です。これはクロス殿を歓迎する宴を記録したものです。」

 俺はタブレットに記録されている映像を小型のプロジェクターに繋ぎ謁見の間の壁に写した。

 

 映像を見ていた他の貴族は、「なんと横暴な」とか、「酷いことを」、「恥を知らんの男だな」

 「しかし上位貴族の侯爵に向かって無礼三昧、たかが男爵の息子のくせに不敬な」

 

 「これでは、不敬で切り捨て得られても文句は言えんのう~」

 国王は当然の様にクリストフ男爵側の非を認めた。..


 「しかし、殺すほどのことは無かったのじゃ無いですか?、行き過ぎと思われますが・・」

 と、宰相はクリストフ男爵側を援護する。

 

 「宰相よ、貴族の爵位は何のためにある、上位貴族を敬い支える事が必要じゃ、彼の何処に敬いの心が見られる、これを認めれば爵位なんぞ意味が無くなるぞ!」

 「・・・・・」

 宰相とて、国王の意見がいるが得るとは思ってはいなかった、ポーズである、クリストフ男爵に対して援護射撃はしたよってポーズにしか過ぎなかった、たとえ、何を言っても死んだ者は帰っては来ないのだから・・

 

 クリストフ男爵は悔しそうに歯ぎしりをしているが、国王に、もう少しきちんと躾けるべきだったなと言われ黙って俯いていた。

 

 「クロス殿の荷物を改めましたところ、受け取るはずだった献上の金剛石の他に同じ様な金剛石が出てきましたのお改め下さい。」

 

 「鑑定士をこれへ・・・」

 鑑定士がやって来ると、宰相が割って入ってきた・・・


 「鑑定士が変わっているのでは?・・・」

 「いや、彼で良い、儂が認めた男だ文句は無いだろう」

 クリストフ男爵は黙り込むしか無かった。

 

 暫くの鑑定の後、献上用の箱に入っているのは偽物で御座います、こちらは本物の金剛石で御座います。

 

 「クリストフ男爵、これはどういう事かな?」

 「きっと辺境伯殿の陰謀に御座ります、金剛石を献上するのが惜しくて偽物を用意して我が息子を亡き者したので御座います。」

 クリストフ男爵はついでに息子の殺害も辺境伯にかぶせる事にした。

 

 「こちらの男が全て吐きました。」

 襲撃に遭った時に捕らえられた執事が連れて来られた。


 「途中、盗賊の襲撃に遭ったのですが、それを指揮しているのがこの男でした。」

 「この男の白状した内容によりますと、ラージニア男爵の命にて襲撃をしたそうです、目的は偽物の金剛石を奪うこと、金剛石を奪うことで、もし失敗した場合はあらかじめ買収していた鑑定士によって偽物だと暴露し辺境伯失脚させること・・・」

 

 「近衛兵、クリストフ男爵を拘束せよ」

 クリストフ男爵は暴言を吐きながら抵抗する者の近衛兵達によってあっさり捕らえられた。

 「辺境伯領主及び侯爵への殺害容疑でラージニア男爵を拘束する、近衛兵は家族を捕らえてまいれ。」


 「さて、クリストフ男爵よ、襲撃の方を受けてお主が登城している間に王都の屋敷は調べさせてもらった、出るわ、でるわ、言い逃れができん程の証拠が見つかったぞ、覚悟するんだな。」

 

 「クリストフ男爵を私財、領地没収の上、斬首とする。」

 「金剛石鉱山は王家直轄とし、管理運営をルーク侯爵に委託する、なお、ラージニア領は解体し辺境伯側に隣接する東側は辺境伯の領地として編入する」

 

 「今回、クリストフ男爵の不正を暴くに後見のあったアメリア・フォン・アズガルドを子爵に叙爵しアルデヌ領を拝領させる事とする。従者であるルーカス・ハミルトン・アルデンヌを男爵に叙爵する、封土に付いては留保する。」

 

 「クリストフ男爵の家族だが、次男、オットーは生涯鉱山奴隷とする、妻のアーダ、娘のアニエス、アドリアは犯罪奴隷とし、ルーカス・ハミルトン・アルデンヌに下げ渡すこととする。」

 

 「なお、クリストフ男爵と結託していた者には厳罰を下す、襟を正して沙汰を待て、なお、身に覚えのないものは何も心配する必要は無い。以上だ。」


 「昨日、女神より神託が下りた、辺境伯第2夫人リネーネ、リンデール公爵第2夫人オレリー両名は女神に巫女として使える様にとの事だ、詳しいことは本人に神託が下りてるであろう。神の意志に背くことが無いように努めよ」

 

 「皆のも暗いニュースが続いたが、明るいニュースもある、我が第一王妃のセシリアがルーカス殿と婚約する事になった、皆も祝ってくれると嬉しい・・」

「正式な発表は落ち着いてからと言う事になるので今暫くは内密にして欲しい。」

 

 「えっ・・だれ・・」

 俺がびっくりして驚いていると、国王はにやりと笑った。..


 してやられてしまった、公の場所で公表されて知らないなんて言えない・・・

 はぁ・・・がっくりと肩を落としていると侯爵が聞いておらんかったぞなんて、言うからそりゃそうでしょ、俺も今聞いたんですからと言うと、伯爵は笑って、国王は行き遅れのセシリア様を押し付けて一石二鳥をねらったな・・・

 ここは国王の勝ちか・・・諦めるんだなと慰めにならない言葉を頂いた。

 

 控えの間にもどって、向けてくれた奈津に、はぁ、王女まで付いてきたよ・・・断れなかった。


 「ふーん、王女って幾つなの?」

 「さぁ、知らないよ、見たことも聞いたこともないし・・・」

 俺が諦め顔で疲れた風に言うと

 

 「ま、良いんじゃ無い、王家から一人ぐらい貰っていた方が色々と便利かもよ」


 奈津はこういう所はあまり気にしないらしいと言うか話を聞いた時点で予想をしていたらしい。

 嫁が何人になるんでしょうね、なんてのんきなことを言っている

 

 アルデンヌ侯爵邸がそのまま貰えることになったので奈津と行って確認する事にした。

 クリストフ男爵から召し上げた騎士は領の代官に当てた書簡をわたして一足先に領地へ赴かせた。

 

 「ルーカス殿もこれで貴族ですな、これから宜しく頼みますぞ!」

 侯爵が念を押しに来てるのは分かっている。

 

 「えぇ、環境が整い次第、色々と始めたいとおもいますので、そちらも鉱山の引き継ぎなどなるべく早めに終わらせて下さい。」

 

 旧アルデンヌ邸に向かうと、メイド達は旧に家主がいなくなった状況でこれからの身の振り先を考えている最中だったので、希望者はそのまま傭うと言うと、1名を残して他は残ることになった。

 執事は国王が紹介してくれると言うことでそれに甘える事にした。

 

 旧アルデンヌ邸は調度品がごちゃごちゃとありすぎたので業者を呼んで処分したら良い金になった。

 売り物にならない肖像画などは全て燃やした。

 

 アルデンンヌ公爵の妻、娘2人に正式な通知は後で届くと思うが、全員、本日付をもって犯罪奴隷となった事、現在の所有権は俺にあること、奴隷商に売るかどうかは今後決めることを伝えると、全員、泣き崩れた。

 取り敢えず、アルデンヌ領へ送り軟禁させておく事にした。

 今後どう扱うかは応相談だ・・・

 

 この国では奴隷は存在するが一般の奴隷はそう、酷くはない、人権は確保されている為、衣食は保証され虐待などをすれば所有者が罰を受ける、女性でものぞまなければ夜の勤めも拒否出来るんで自ら進んで奴隷になる者も少なくは無かったりする。

 

 犯罪奴隷となると話は別で人権は一切ない、どう扱おうと所有者の自由である、通常、男は鉱山に送られ死ぬまで使われる、女の場合は、飽きるまで虜辱された後、死ぬまで娼館で働かせられるのが普通だ。

 奴隷商に売られればどうなるかは本人達が良く知っているので悲嘆に暮れているのだが・・・

 

 王都で4日ほど過ごした後、帰りは辺境伯の長男と長女を連れ帰る護衛もあるので早めに辺境伯領まで帰ることにした。

 辺境伯領までの間は特に何の問題も無く帰ることが出来た。

 


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2018/09/15:誤字、脱字、誤用の修正をしました。

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