第16話 シロの正体

【シロの正体】


 翌日から仕事を頑張った、俺自身の仕事は長期休暇の前ということもありサポートに回ったが、ここ数年前からよそに取られていた大口の物件の獲得に成功した事もあり予定より早めに休暇に入れるようになった。

 仕事で疲れても奈津がいる生活は退屈せずに癒されることも多く楽しい・・少しセクハラが多いのが気になったが…

 

 移動手段の確保にバギーを考えてたのでネットで色々と検索してみる、安いのは安いが高いのは100万を超える、色々と聞いて見ると結局の所、値段らしい、国産メーカーの逆輸入車になるとかなりの金額となるが、安心を買うと思ってネットで探しまくって注文した。

 

 念のためにバイクも用意しておく、こちらは250ccのオフロードバイク、燃料の携帯缶20lを4缶はバギーに積めそうだったので4缶購入しておく・・・80lあればバギーでも追うと往復は十分だろうし、バイクなら2缶、馬車に積んで貰えれば王都までの往復は十分に可能だろう。

 ロッシーニ家の人がバイクに乗りたいと言う時のために練習用にママチャリを一台チョイスしておこう。

 

 *+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。

 俺は召喚される前に飛ぶことにした。

 次に持っていく予定のバギーやオフロードバイクの手配などを奈津に任せた。

 

 「遅くても2日後の土曜には一旦帰ってくるから・・」

 「じゃ、行ってくるね。」

 俺は大量の荷物をアイテムバックに入れアズガルド辺境へと転移した。

 

 ♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪

 アズガルド辺境領

 

 辺境泊邸の庭に転移した。

 入っていくとメイドのジェシカがいて、挨拶を交わす、何の違和感も無かった。また召喚されたと思ったのだろう。

 

 アメリアの部屋へ行くと

アメリアは一人の少女と話していた・

俺を見ると飛び上がるぐらい驚いていた。


「し、シロ、如何したの?、どうしてここにいるの?」

(えっ、私知らない間に勝手に読んじゃったのかしら?、良かったの?、えっどうなってるの?)


 いや、召喚に自分で転移できるようになったので好きに行き来出来ると伝えるとまた驚いた。

 

 「シロ、ほんとうにびっくりしたわ、突然現れるんだもの?、ほんとうに自分で転移できるようになったの?」

 「あぁ、ご覧の通りだ、自分で来なくて誰が連れてくる?」

 


 「ちょうど良かったわ、昨日公爵様がいらしてシロが来る日を待ちわびてらしたわ

この子はソフィー、侯爵の娘さんよ


「初めましてシロ様、ソフィーです」

「初めまして・・シロです、シロって呼んでくれて良いよ。」


ちょっと待って、お父様に知らせてくるわ」

 

 アメリアが父親に俺が来たことを知らせに行ってる間に持って来た物のチェックをしておく・・・

 今回転移してきた時はスキルは付かなかった、どうやら召喚されないとスキルは貰えないらしい・・・

 できる限り召喚と送還をお願いしようと心に誓った。

 

 「お父様と伯爵様が呼んでらっしゃるわ、シロ、付いてきて・・」

 

 付いて行った先は辺境伯の執務室ではなく食堂だった。

 「なに?、召喚無しで自分で来れたんだって?」

 「これはおどろいた・・・」

 

 「ネルソン殿、人払いをして貰って良いですか?」

 「あぁ、かまわない・・・皆、外してくれ・・」

 「私はシロの主よ、構わないでしょ。」

 侯爵は少し渋った顔したが、直ぐに頷いた。

 

 「さて、そなたは何者だ?、唯のフェンリルではあるまい、魔族か?、何が目的でロッシーニ家に近づいた?」

 「ガウ?」

 「もう良い、お主が喋ることは聞いておる、質問に答えよ」

 侯爵はどうやら俺を魔物と思っているみたいだ、まあ、遠く外れている訳では無いけどね。

 

 「お父様、シロは私が召喚した召喚獣ですわ。」

 「アメリア殿、唯の召喚獣が召喚者以外と会話が出来るとでも?、そんな話は聞いたことがありません、ましてや、この持ち込まれた数々の品物、このワイングラス一つとっても、国王ですら持っていない様な品物です。それがどうして召喚獣が持ち込めるのです。」

 

 「それは・・・で、でも、シロは私の召喚獣で魔族では御座いません。」

 「それに魔族ならこのワイングラスを持っているとでもおっしゃるのですか?、魔族は人族よりもっと文化レベルは低いと聞いておりますが・・」

 

 「しかしだな、この世にないものがあるとすれば・・・まさか神界」

 どうやら、侯爵も混乱してきた様だ・・・

 

 「取り敢えずお主の言い分を聞こう」

 侯爵が俺を見据えて聞いてきた、僅かな疑問にさえ突っ込みを入れる事は間違いなさそうだ・・

 

 「まず、俺はお主ではなくシロと呼ばれてる、名乗りもしない何処の誰とも分からぬ者に答える物は何もない。」

 「伯爵はむっとした様子だ・・・」

「・・・・・」

「儂はカトラス領を納める、ルーク・フォン・リンデール・カトラス侯爵だ」

「これは侯爵様、で、この獣魔である私の何を知りたいと?」

「お主の素性だ・・・何が目的でアズガルドへ来た?」


「ふう」

 「俺は確かに普通のフェンリルではない、だが、聞かない方がお互いのためだと思うが・・」


 「はっきり言えば、このロッシーニ家に来たのは偶然でも無ければ俺の意思でもない。俺は依頼されてきた、何処の誰かとは言えない。」

 「疑わしい奴は家に於けないと言うのならそれでも結構だ、アメリアの口からそう言って貰えれば契約は破棄する」

 

 「馬鹿な、一旦契約した召喚契約は魔獣が死なない限り破棄出来ないはず。それを破棄出来るというのなら自ら召喚獣では無いと自白した様な物だ」

 

 「それは違います。」アメリアが口を挟んできた。

 「シロは神獣です、シロとは神獣の契約を結んでいますので、私が契約違反をした場合は、契約は破棄されますし、私が神獣の主としてふさわしくないと判断された場合は、神獣側から一方的に破棄されます。」

 契約を途中で破棄する場合は私は神罰として死を与えられる事になっております。

 

 「そ、そんな馬鹿な・・・」

 父親のアズガルド辺境伯は崩れる様に膝を付いた・・

 

 「私はシロとの契約を破棄する気は一切ありません。例えお父様の命令でもこれだけは聞けません。」

 

 「うーん、シロ、お主は明かす気はないのじゃな?」

 「あぁ、それは間違いない、もし明かすとしてもアメリアだけだ・・それも今では無い。」

 

 「どうだ、これから教会に行ってはくれないか、そこで魔族か邪悪な物で無いなら正体はとうまい、ネルソン殿はどうです。」

 「公爵様のお考えに従います。」

 

 「どうだ、その辺で妥協はできんか?」

 アメリアを見ると、頼んでいるのが手に取る様に分かる。

 

 「俺はアメリアの指示に従う」

 「アメリア殿」

 侯爵がアメリアに俺に指示する様に促す。

 

 「シロ、教会に行ってくれる?、でも、如何してもイヤならいかなくてもいいわ、私はそれでも構わない」

 「分かった。行こう、アメリア様には悲しい思いはさせられない」

 「時間を節約したい、公爵様らは馬で、アメリアは俺の背に乗れ」

 「分かったわ、シロ」

 

 馬を飛ばせば5分ほどで教会に着いた。

 

 侯爵が司祭に何かを話して金貨を渡している・・・

 「こちらに立つ様に伝えて下さい。」

司祭が俺に脅えているがそれを皆に悟られない様に精一杯頑張ってるのを見ると、つい、悪戯したくなるが今日の雰囲気では不味そうなのでやめておく。空気を読むのは大事だからね。


 「シロ」

 おれは黙って、そこへ移動した。

 

 司祭が台にある何かに手を当てている・・

 突然、祭壇の中央に置いてある女神、ネトナスの像がまぶしく光り出した。

 

 光の中の中央から女神、メトナスが降臨した。

 皆、伏礼をしている・・・・

 

 「そなた達、顔を上げよ・・・」

 皆がおそるおそる、顔を上げる。

 

 「そなたらに告げる」

 「この者の素性をそなた達が知ることなりません。」

「これは天啓です。」

 

 「今の名前はシロでしてたね、期待しておりますよ。また、近いうちにお逢いしましょう。」

 

女神はそれだけを告げると光の中へと戻って言った。

やはり本物は迫力がある、駄女神とは大違いだと改めて思う。


 「さて、教会でも分かりませんでしたね、どうしますか?」

 「神からの啓示だ、素性は問うまい」

 

 教会の外に出た。..

 

 「ネルソン様、この後、どう処断なさいますか?」

 侯爵が前に入ってきた。

 

 「そもそも、この件を言い出したのは儂だ。アメリア嬢の心配のあまりお主の忠義を疑った不徳は儂にある、儂が悪かった許して欲しい。処罰があるなら儂が全て受け取ろう」

 

 俺は人化した。

 

 俺は膝を付いて礼を取った。

 「もったいないお言葉、謝罪は謹んで受け取ります、侯爵殿、処罰などはもってのほか、お言葉痛み入ります、これが私の本来の姿です。」

 

 「そ、そなたはもしや、300年前の・」

 俺は侯爵の言葉を遮るようにいった。

 「それ以上の詮索は無用で御座います。侯爵殿」

 

 「うむ、合い分かった結え、その言葉遣いは止めて下され、儂は元々礼節は苦手じゃ、先程までの口調で頼む」

 

 「では、お言葉に甘えて崩させて頂きますね。」

 

 「では、先に屋敷の方に帰っております。」

 「アメリア様、お手を・・・」

 俺はそう言うと同時に戸惑っているアメリアの手を取ると屋敷のアメリアの部屋へと転移した。

 

 「わーっ、凄い、これが失われた転移の魔法なのね・・驚いたわ」

 「でも、シロが人だったなんて・・・この前、話したことは本当だったのね。」

 ((シロが人?、シロの人の姿を見た時に胸がドキってして苦しくなった・・なんなの?))

 

 「フェンリルの姿が良ければフェルリルになるけど?」

 「ううん、その姿で良いわ、とても素敵よ。」

 アメリアは自分で言った言葉に恥ずかしくなって真っ赤になって俯いた。

(あぁーっ、つい言ってしまった恥ずかしいくて死にそうだわ。)

 

 「あら、可愛い、僕のお姫様・・・」

 アメリアはさらに赤くなり頭から今にも湯気が噴き出しそうな雰囲気で立っていられなくなったのか、ベッドに座り込んだ・・・

 

 「大丈夫、アメリア様」

 「お願い、シロ、普通にして頂戴、あたしおかしくなっちゃいそう」

 

 「ふーん、そんなアメリアも好きだよ。」

 あ、死んだ・・・もう、弄るのは止めておこう。

 

 □■□ 侯爵 Side □■□

 

 侯爵殿、彼は・・・一体。

 ネルソン殿、神の啓示である、詮索は止めておこう。

 仮にもし知れば我々はどころか、国王さえも平伏せねば成るまい・・・

 ネナトス様が直々に降臨されて天啓を下されたのだ、つまりそれほどの事だということじゃよ。

 逆を言えば、しらなければ今まで通りで良いって事だ・・・

 

 はぁ、分かりました。公爵様の通りにします。

 元々、脳筋のネルソンには侯爵の言わんとすることが半分も伝わってなかった。

 

 結局、悪い奴ではないって事で良いんですね。

 はぁ、・・・ま、そう言う事じゃな・・・

 (この男、領地が運営出来ているのが不思議なくらいじゃ、自分の娘がどれだけの幸運に巡り会えたのかさえ全く分かっておらん。、うちのソフィーに欲しいぐらいだ・・・)

 

 。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚

 

 「お嬢様、領収様がお帰りになりました、落ち着いたら食堂へシロ様と来るようにとの事です。」

 「わかったわ、直ぐに行くわ・・・」

 

 「お父様達がお呼びだそうよ、行くわよ、シロ」

 「はい、アメリア様」

 「もう、いい加減にしなさい、怒るわよ。泣くわよ。泣いてやるんだから・・・」

 (本当にシロったら直ぐ調子に乗るんだからでも、そんなシロも楽しくて良いなぁ)


 「わかった、わかった、アメリア、そう怒るなよ。」

 (もう、シロったら何時までもからかうんだから、今度仕返ししてやるんだから・・・)

 

 

♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪

誤字、脱字修正しまし亜。

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