壱ノ不思議 廊下の怪(44p)

 これは夢だ。

 だって、私は雪絵お姉さんが用意してくれたこの部屋のベッドで眠っているはずだ。

 今は真夜中のはずで、だから私が明るい光が差し込む昼間に台所に立っている訳何て無い。

 これは夢なんだ。

 夢の中で、私は台所に、棒の様に立っている。

 私の体はピクリとも動かない。

 私は土間の方を向いて立っている。

 私は土間にある戸棚の方を見ている。

 はて? こんな戸棚、あっただろうか?

 木製の大きな戸棚だ。

 私は、しばらくその戸棚を眺めていた。

 体が戸棚の方を向いたまま動かないので、私は戸棚を眺める事以外に何も出来ないのだ。

 つまらない夢だ。

 私がそう思った、その時、キーンと耳鳴りがした。

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