I still love you.
かんまな
第1話
「私」はある大企業に就職して、仕事がある平凡な毎日を過ごしている。そこに華を添えているのは、「あなた」という存在だった。世間的に言えば、彼氏。あなたは平凡な私を拾ってくれて、愛を知らない私にたくさんの愛を注いでくれている。過去の話だけど家族や親戚に何故か煙たがられていた私は、あなたに初めて教えてもらった温かさに救われている。そして、運よく私のいる部署は優しい人が多くて感謝しかない。そんな、平凡だけど愛と温かさと優しさに溢れた日々を過ごせている。満足感しかなくって本当に幸せな日々だ。週末の日曜日、あなたとデートに行く約束をしている。人ってすごいもので、楽しみなことが待っているという些細なことだけで仕事を頑張れるのだ。そんな風なのろけた文をあなたの携帯に送ると、あなたらしい照れ隠しのような文が返ってきた。そんなことでもとっても嬉しい。ちょっと笑みが零れる。それにすぐさま反応してきてくれる私の良き同期で女友達の美夏。彼氏かぁ羨ましい~、なんて言う美夏だが私よりも圧倒的にルックスは良いし仕事もできるのだから速攻で彼氏ができると思う。私は彼氏なんてできないだろうなと思っていた。美夏の方が先だろう、と思っていた。でも、出会いというのはあるもので、あなたとは傘がきっかけで出会った。これだけでは、クエスチョンマークが思い浮かびそうだ。私の使っている傘は紫のパステルカラーで、あなたはそれが私を好きになったきっかけだ、と言い張る。あなたに言わせると、アジサイの隣にその傘をさしていた時に一目ぼれをしたということらしい。私に話しかけてくれたきっかけはそれで。ちょうどその時、親戚の七回忌で、私は影口を聞きながら雑務をして、存在を消して。そんな風に過ごしてやっと乗り切ったことに安堵を覚えて、お寺の近くにあるアジサイがキレイな公園で一休みしていたのだ。そんな所で、私はあなたと出会った。私は、あなたから初めて声をかけられたときの一言目をずっと覚えている。
「アジサイに似てますね、この傘と貴方。僕、アジサイ好きで。
この公園、ここらではアジサイがキレイだって有名なんですよ。」
どこの誰だかわからない人に話しかけれた私は、固まってしまった記憶がある。そしてあなたはいつもその時の顔を面白い、面白いと連呼する。あの瞬間の貴方の表情は忘れない、と付き合い始めた当初からずっと言われている。私からしたら、面白くもなんともないのに。でも、あなたの記憶に残るなら良いかなと思う。
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