第2話  アスカの夢

レオンはアスカの顔をまじまじと見ながら言った。


「ほんっとにアスカは可愛い顔してるよな。この村の、いや今まで見てきた中のどの女の子よりも可愛いよ。なあ、お前が女になったら俺、嫁にもらってやるよ!」


レオンは本気とも冗談とも取れる口調で言う。


「バカなこと言わないで、レオン。ボクたちは友達同士なんだから、女になったって・・・」


(抱けないでしょ、と続けようとしたが、恥ずかしくなってやめた)


「抱けるよ。毎日だって抱ける。」


「えっ!?」


アスカの心を見透かしたように、大真面目な顔をしてレオンが言った。


「ななな、なに言ってんの~~!!」

顔中、体中真っ赤になるアスカ。


レオンはその様子を見て、三度ケタケタ笑った。


「ほんっとに可愛いし面白いな、お前は。ったく冗談だよ、ずっと親友の男でいてくれよアスカ。お前ほどいいやつはいないよ!なあ、いつか一緒に旅でもしないか。男同士ならきっと楽しいぞ!」


「うん!」


いっしょに旅をする・・・それは幼いころから二人でずっと言い合っていたことだった。


夢で終わらせるのではなく、アスカはそのために努力をしてきた。

体が細く小さかったので早々に体力面では諦めて、実用的な勉強を頑張った。


例えば医学、薬草学、航海術、自由になるお金なんかなかったから、村にいる医者や専門家を手伝いながら色々なことを教わって覚えた。


いつか、レオンといっしょに旅をするために。


海を渡り森を歩き山で寝て起き、男同士それはどんなに楽しいか。小さいころに実の母を亡くし、継母に虐げられて育ったアスカは、それだけを支えに生きてきたと言っても過言ではなかった。


(きっと、レオンは世界を変える人間になる!ボクはその時、側にいたいんだ・・・そして少しでも役に立ちたいんだ。だからせめて足手まといにならないように頑張らないと!)


「さ、アスカ、今日はおじさんが漁から帰る日じゃなかったか?早く家に帰らないと!」

「そうだった!」


2人が座っていた草むらから立ち上がると、レオンはアスカより20センチは身長が伸びていて随分差があるのが分かった。

半年前に赤い実を食べてから、レオンはどんどん大きく、男らしくなっていく。


アスカは自分の貧相な体つきが、レオンと並ぶと恥ずかしく感じられた。


(もうすぐ・・・来月赤い実を食べれば、ボクだって少しは男らしくなるんだ・・・。きっと。)




アスカはレオンに別れを告げて家路を急いだ。


年に数日しか家に帰れない父親が帰ってくるのだ。

漁師らしい、日に焼けた男らしくたくましい父親はアスカの自慢で、また、その血を引いているのだからこんな自分もいつかはそうなれるんじゃないかという期待にもつながっていた。


父親が乗っているのは村で一番の大きな船で、100人もの村の男たちがその船で遠くの海まで航海している。

魚を取ったり、異国の珍しい品物を仕入れてきたり。


この世界を分ける右の大陸と左の大陸はお互い仲が悪いのだが、交易は比較的自由に出来ていた。



船は港についていたらしく、村全体が何となくざわざわしている。

いつものことだった。


しかしアスカが港の付近を通った時、ざわつき方がどことなくいつもと違っている気がした。


「どうしたんだろう・・・」

所々から再会の喜びの声ではなくて、悲しい泣き声が上がっているのだ。


アスカはどんどん不安になっていった。


「何かあったのだろうか・・・父さん・・・!」

速足から小走りになって家に向かう。


家の前にはいつもはない荷物がいくつか積み上げてあって、父親の帰還を物語っている。


「帰って来たんだ!」


アスカが家の中に入ると驚愕の光景が目に飛び込んできた。


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