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「私達は高校からは別々だったけど、連絡は取り合ってたんだ。それで私も気になったからね。高一の時にもこうして一緒に母校訪問したんだよ」
加々美さんに基本の説明を任せて、内海さんは付け足した。
加々美さんが例の美少女だとしたら、撮影していた男子生徒は内海さんだと予想できる。なんだか撮影者の男子=内海さんと考えると妙にしっくりくる。
「僕と内海ちゃんは悪い意味で有名だったんだ。だからその時は今日みたいに正規の手段はとらず、中学時代の制服を交換して紛れこむ事にしたんだ。許可もとってなかったよ」
ゼロ組だった二人は教師に目をつけられていたはずだ。
だから卒業して間もなくでは普通に母校訪問はできなかった。
加々美さんと内海さんは中等部制服を持ち寄り交換し、二人で中学生のふりをして潜入する事にしたらしい。
「そしたら志水さんがSにひっかかりかけていた訳で、あわてて注意しにいったんだ。けど信じてくれなくてね」
「もう一回早朝の学校に忍びこんで、Sの決定的瞬間を携帯の録画で押さえたっけ。その後遅刻ギリギリに高校に行ったっけ」
「僕なんか化粧を落とし忘れて高校に行ったからね。しばらくクラスメイトに変な目で見られてたな」
「さらにその動画を見せに行ったからさ、結局三回も潜入したよなー」
過去の思い出をあははと笑って語る二人。加々美さんは今、緊張よりも懐かしさが勝っているのだろう。
「それで、志水さんは考えを改めてくれた、って事でいいんだよね?」
志水先生はこくんと頷いた。
現在教師になって私達にこの思い出を話してくれたんだから、考えを改め美少女を信じたに決まってる。
しかし志水先生がどこか戸惑っている。美少女が男だったためだろう。先生は男を毛嫌いしている訳じゃないけど、ずっと女の子だと思っていた人が男だったなんて複雑だろう。
「志水さん。君は素敵な大人になったね」
突然加々美さんはそう言って、ベンチに座る志水先生の前でひざまずく。
その仕草に私もリーチ君達も驚いたし、内海さんでさえ驚いている。志水先生は考える事を放棄していた。
普通、ひざまずくとしたら王子様くらいなものだろう。ただの先輩後輩がしない格好なのは間違いない。
「僕はずっと君に憧れていた。けど話しかける事なんてできなかった。怖かったんだ。君に拒絶されたり、君の性格が僕の予想とは違う事が」
「は、はぁ……」
恩人の先輩だったがまったく知らない人に、憧れていた発言をされても志水先生は反応に困るだろう。
志水先生は視線だけで内海さんに助けを求める。だが内海さんは首を振った。
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