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「もちろんお片付けはしていますよ。……ただ、中等部によその先生がいるだなんてこちらの生徒には居心地が悪いじゃないですか。だから中等部生徒に見つかりそうになったら本はそのままで本棚に隠れていました」


リーチ君は頭を抱えた。たすく君は困ったように笑って、ザクロ君は力なく本棚にもたれている。


幽霊騒ぎの原因は全て志水先生が原因だった。





■■■





幽霊騒ぎの事情をある程度話して、図書室の電気をつけて椅子に座って落ち着く事にする。


「そうでしたか、先生のせいで藤子さんが怖い思いをしただなんて、悪い事をしました。怯える藤子さん可愛いなど不謹慎な事まで考えて……」


志水先生はまず反省をする。先生は小学生女児が好きだけど、中学生も守備範囲らしい。


「しかしこういった話はまだあるものなんですねぇ」

「え?」

「図書室に幽霊が出る、という話は先生の時代にもありましたよ。なので今回の幽霊騒ぎは先生だけの責任ではないかと」


先生がのほほんと語ると回復しつつあったザクロ君が震えた。

幽霊騒ぎは先生の時代にもあったという。

先生はこの学校の出身で今がえーと……年齢はわからないけど、だいたい十年前くらいにはここの中等部に通っていたはずだ。

幽霊話はその時からある。だから今回先生だけが悪い訳じゃない。今回だけは偶然先生のせいになってしまったというだけだ。


「生憎中学生の頃に幽霊なんて見ていませんし信じてませんが。それにしても図書室に幽霊というのは珍しいですよね。たいていはトイレや理科室なのに」


確かに学校の怪談に図書室は縁が薄そうだ。うちの学校は全体的にきらびやかだし、開けた作りをしていて幽霊には居心地が悪いだろう。


「それでさ、先生。先生はアルバムで一体誰を探してたんだ?いじめっこへの復讐なら協力するぜ」


私はリーチ君の言葉で先生がここにいる理由を思い出す。怪談話は混ざっているが、先生が卒業アルバムで人探しをしていた事は確かだ。


「ありがとうございます。けど先生はいじめられてはいませんよ。小学校の時は男子にいじめられましたがもう相手の名前も覚えていませんし、中学生の時は無視されるくらいでしたし」


先生は穏やかに語る。この荒れた学校なら真面目な人だといじめられてもおかしくはないと思ったけどいじめはなかったらしい。

なんにせよ復讐でないならいい。

もちろん私達は復讐であっても協力するつもりだけど、嫌な思いがないならよかった。


「先生は見た目いいから、小学生男子には逆にいじめられたんじゃねーかな。あいつら好きな子ほどいじめるっていうし」


自分も小学生男子だというのに他人ごとのようにリーチ君は推測する。

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