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図書委員で本が大好きな神田君。彼が答えだった。


神田君は今年も図書委員で、急きょ学級文庫の回収をしなくてはならなかった。

教室の学級文庫を図書室に持って行く。それだけでも体育の着替えと重なれば大慌てだろう。

彼は大量の本を持って、そしてほしなちゃんの机につまずいた。写真集はその時机にひっかけられた袋ごと床に落ちて、袋から飛び出したはずだ。

さらに慌てた神田君は急いで落とした本をかき集める。写真集はそれに混ざった。

普通なら写真集が学級文庫に混じらないだろうけれど、写真集のサイズは絵本や図鑑に近い。さらに神田君が慌てていたとすれば混ざってしまってもおかしくはない。

そして写真集は図書室に運ばれてしまった。


「ちょっと待って、じゃあリーチ君が図書室に出入りしてたのって……」

「あぁ、あるとしたらここだって、予想がついたからな。さすがに図書室から一冊の本を探すのには苦労したけど、放課後に神田にも声をかけて目安はつけてたし」


図書室で授業時間も放課後も、リーチ君はずっと探していた。

仲間にも言わずに。手を引くとまで言ったのに。


「別に俺は写真集が見つからなきゃいいと思った訳じゃねーからな。見つかるのならそれに越した事はない」


私の心の中を読んだようにリーチ君は答える。ちゃんと探してくれてたのに、探したくないのだと誤解をするなんて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「俺が嫌だったのは女子二人のオモワクっつーか」

「思惑?」

「……あの二人、トラブルで小夜子の友情を試してたんだよ」


言いづらいのか少しだけ迷って、それからリーチ君は手を引いた理由を告げた。

私の友情を試す。普段なら『何をわかったようなことを』と思うかもしれない。しかし今の私にはしっくりくる答えだった。


「二人にとってお前は『自分達と同レベルの大人しい女の子』だ。友達ってのは同レベルになるもんだし、小夜子が前向きになった事も知らないからな」

「あ……」


リーチ君に言われて気付く。

私達三人は一緒にいるのが楽しいし楽。

それは相手が自分に似ていて、気をはる必要がないからだ。

けれど私はいきなり芸能活動する事になった。こんな事になるとは私も予想しなかったし、そうなるまでに色々あった。

けど、それをアリカちゃん達は知らない。


「でも小夜子がモデルとかいろんなことをするようになった。二人からしてみれば小夜子が急に変化したんだ。今まで通りに友情するのは難しいって考えだす」

「そんな……」

「だから試したんだよ。普段ならすぐ解決するような事を二人でもめて、小夜子がどう関わってくれるか」

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