第4話


 施設内を歩きながら様子を見ている蒼風(あおかぜ)ハルトは、最初のゲーム施設へと到着する。

この施設は、どちらかと言うとリズムゲームが多いのだが――お目当ての機種はない。どちらかと言うと、レトロゲーム系のユーザー向けだろうか?

ギャラリーの数はかなり多く、ハルトは遠目からでも様子を見ようとしてもあまり確認出来なかったほどだ。

しかし、ここは一応の目的地とは違う。地図上で中間地点にあったので立ち寄ろうと考えたにすぎない。

(他を当たってみるか――)

 ハルトは、まだ先が長い――と言う様な表情を浮かべ、本来の目的地へと進む。

一方で、そのハルトを見ていたプレイヤーの姿があったのも――事実である。彼の外見を見て、タダものではない――と思ったのだろうか?

「なるほどね――あの噂がフェイクニュースやまとめサイトのアクセス数稼ぎではない事が証明されたというべきか」

 黒髪のツインテール、身長170位の女性がハルトを見つめていたが、問題なのは――。

(あの体型でゲーム出来るのか?)

(格ゲーとかだったら、体型で色々と言うのはアレだぞ)

 小声でゲーマーが噂しているが若干聞こえたが、敢えてスルーしている。

顔は若干可愛いので、アイドルと言えなくもないが――彼女の場合はどちらかと言うとぽっちゃり系の体格だった。

テレビでぽっちゃり系アイドルグループが話題になったりするので、彼らもそこで差別をしたら――出入り禁止になりかねない。

「尾行するのもアレだから、ここは――」

 彼女が遠くからハルトを追跡しようとした矢先――ハプニングに襲われる。

「あれってバーチャルゲーマーの――」

「どういう事だ?」

「外見も似ているから間違いはないだろう?」

「実況者ではなく、バーチャルゲーマー? まさか――」

 彼女は頭を抱えていた。素顔なんて知らないはずなのに、どうして正体バレをしているのか?

彼女の名は夕立(ゆうだち)、ゲームの実況プレイ動画をアップしているバーチャルゲーマーである。

バーチャルゲーマーは、どちらかと言うと二.五次元と言う立ち位置に属するゲーマーだ。実況者は三次元だが――彼女たちは違う。

近年になって認知度は上昇しているが、それでも人気はリアルの実況者や動画投稿者と比べると――まだまだだろうか。



 後ろの方が若干騒がしくなっているが、ハルトは気にせずに先を進む。

この施設に入って思ったのは、煙草の煙や独特の匂いを感じない事にあった。

普通、ゲーセンだと全面禁煙でない限り、何処かに灰皿が置かれていて、喫煙台がある事もザラ――。

排煙設備とかがあれば、そこまで煙草を気にする事はないハルトだが、そう言った心配も必要なく安心して歩けるのは大きいだろう。

(確か、このエリアは全面禁煙だったな――)

 入口の注意事項を思いだしたハルトは、周囲に煙草を吸っている様な人間もいなければ――歩きながらスマホを操作している人間もいない事に一安心する。

【全面禁煙と化――大丈夫なのか?】

【確か、フードコートでもアルコール類の提供はされていない】

【これで観光客を呼べるのか――草加市側も設定を間違えたと思ったほどだ】

【迷惑客を入れない為に色々と考えた末のアレだろうな】

 ふと足を止めて、タブレット端末でつぶやきをチェックすると――案の定な意見が飛び交っている。

ARゲームではノイズ発生等を理由として全面禁煙にしているという話も聞いた事があり、それが理由なのでは――と考えた。

しかし、その場合はフードコートまで禁煙にしている理由が分からない。

【周辺コンビニもその影響を受けているという話だ】

【ARゲームだと飲酒運転というか――飲酒ゲームみたいな扱いになるのだろうな。特にレース系だと致命的だ】

【近年、無免許運転の未成年が摘発された際に『ゲームで運転を覚えた』と言う理由が――】

【だからか。ARゲームで免許制度を導入検討と言うニュースが拡散しているのは】

【免許はプロゲーマーだけでは?】

 他にも色々なつぶやきが流れてくるが、ハルトは途中でタブレット端末をマップモードに戻し、目的地へ向かう為に再び歩き出す。

しばらくして、似たようなルートで歩いているゲーマーがいたので、その人物に付いていく事になるが――。



 五分後、ハルトは他のゲーマーに付いていった事もあり――無事に目的地へ辿り着いた。

入口には『ARリズムゲームエリア』と書かれており、ここで間違いはないようである。

「ゲームの機種は――」

 ゲームタイトルリストが自動ドアの隣にパネルとして置かれていたので、そこでチェックをし始めると――。

そのタイトルは、新作として店舗内でも一番上に書かれていた。

《リズムドライバー》

 タイトルはリズムドライバーと言うらしい。タイトルだけでリズムゲームと言う気配はしないが――。

それでも実機を見ない事にはどうしようもないので、自動ドアの前に立ち――施設内へと入店する事を決めた。

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