レベル233 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら魔王になりました。

 サキュバス! サキュバスですよみなさん!

 エロモンスターのトップスター!

 エロいと言えばサキュバス! サキュバスと言えばエロい!


 しかも、クリスタルカードで見たサキュバスさん、見たところ姿に変化はない。


 ということは、クリスタルカードでゲットさえすれば、念願のサキュバスが手に入る理由ですよ!

 今はラピスは空母の調整にかかりきり、暫くはこっちへ来られない。

 ファンハートへの遠征の準備でアポロはサヤラの元へ戻っている。


 いつやるの? 今でしょ! ちょっと古いか。


『ボクは居るんだけど……』

「お前は別に反対しないだろ?」

『ラピス君にチクろうかな』


 止めろ! 分かった、ラピスの折檻で人型禁止令になっているのを解いてやるから。


『まあそこまで言うなら、見逃してあげてもいいけど……寛大なボクの心に感謝するんだね!』


 うぜえ。

 いやまあカシュアの事はいい、問題はサキュバスさんだ。

 是非ともゲットせねば!


 で、貴重なクリスタルカードを使ってゲットしたサキュバス。


『魔王サキュバス・フフ』

 ☆10・レベル1

 スキル:夢狩


 なにやら不吉な文字が先頭についておるのですがぁ。


「魔王的にかわいいという奴だな!」

「いやだわマイケル、お世辞なんて言わないでよ」

「お世辞じゃないって」


 いいのかな? いいんだろうか? まあ、喜んでいるようだからいいか。

 というかマイケルさんて言うんだね。

 大丈夫マイケル? 死ぬなよ。


 とりあえず見なかったことにしたオレはその場を後にするのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 フッフッフ、バカな人間。

 この力さえあれば、私はもう一度あの場所に帰り咲ける。

 ママと私を、誘惑するだけしか能がないと、バカにした奴等を見返してやる!


 誰もが寝静まった夜、マイケルの部屋に忍び込むサキュバスのフフ。


「え~と確か、ここに仕舞っていたはず……」


 あったあったと、マイケルの鞄から一枚のカードを取り出すフフ。

 このカードさえあれば……そう言いながら眠っているマイケルを見下ろす。


「精気を抜き取って殺してもいいけど、別にあなたには恨みがないから生かしといてあげる。私の為に手を尽くしてくれたお礼よ」

「賢明な判断です」


 その時、背後からピタリと首筋に何かが当てられる。

 それはキラキラと輝く一本の聖剣。

 先ほどのクイーズとかいう小僧が腰に差していた剣。


 まさか、私の魂胆がバレていた!?


 サッと顔を青くして硬直する。


「良かったですね、思い留まって。もし、人に危害を加えようとしていたら……」

「いたら……?」

「この剣はあなたの首を刎ねていたでしょうね」


 危険なモンスターを野放しにできませんから。と、背後の女性らしき人物が答える。


「ちょっと! 剣があたってる場所! 首がなんか欠けていってるんだけど!?」

「あら、そういえばサキュバスもアンデッド枠でしたか? 聖剣だと触れているだけで消滅しそうですね」

「なんで、ここはこんな危険な奴がわんさかいるのよ!」


 涙目になって喚いているフフ。


「あまり喚くと、そこの男性が目をさましますよ」

「起きないように魔法をかけてるわよ!」


 そう言ってふてくされた顔で両手を挙げる。

 剣が離れたのを確認してゆっくりと振り返る。

 そこに居たのは……頭からウサギの耳を生やした虹色の髪の女性であった。


「竜王達が落ちぶれた、こっちの世界なら、私達の独壇場だって思ってたのに……ここらのモンスターはやけに強いし、おかげでママも……」


 そう言ってさめざめと涙を流すフフ。

 しかしラピスは何食わぬ顔でフフの胸に剣先を突き付ける。

 ヒッと小さな悲鳴をあげるフフ。


「同情を引こうとしても無駄ですよ。私にはあなたの考えが読めますから」

「っ、どういう事!?」

「誰に吹き込まれたかは知りませんが、あなたのモンスターカードに対する知識は、いい部分、しか伝わっていないようですね」


 そう言うとウサ耳の女性は3本の指を立てる。


「力には代償が伴います、まず第一に、モンスタカードに取りこまれたものはマスターには絶対服従を強いられます」


 あなたの場合はお坊ちゃま、私、そしてそこの男性がそれに当たりますね。と続ける。


「そ、そんなのまるで奴隷じゃ……」

「そして第二に……」


 おもむろに剣を胸に突き刺すその女性。

 あっ、と言う声と共に姿を消すサキュバスのフフ。

 暫くしてその女性はカードからフフを呼び出す。


「死なない訳じゃなく、死んでも復活する。即ち、何度でも死の痛みを経験することになる」


 ガタガタと震えて座り込む。

 そんなフフの耳元に口を近づけて駄目押しをいれる。


「最後に、カードを統率する私にはあなたの考えが読めるのですよ」


 その呟きに、マジ泣きを始める。


「聞いてない、聞いて無いよ! 私はただ、このカードがあれば不老不死になれるし、スライムだってドラゴンを凌ぐほどの力を手に入れられると聞いただけ!」

「誰に聞いたかは知りませんが、それ自体は間違いではありませんよ。あと、カードは先ほど言ったマスターのみしか操作できません。万が一全員が死亡した場合、あなたは永遠にカードから出る事が出来なくなります」

「そんなぁ……」


 愕然とした表情で女性を見上げるフフ。

 そのフフの顎に手をやって女性は続ける。


「悪い事ばかりじゃありませんよ、不老不死になれ、強大な力を手に入れられる。それは本当の事ですから」


 あなたの心持次第では奴隷みたいな扱いにならないですし。と始めての微笑みを見せる。


「ほ、本当に……?」

「ええ、お坊ちゃまにさえ害が及ばないのなら、ね。あなたの働き次第では、その復讐の手伝い、してあげてもよろしいのですよ」


 そう言ってニッコリと笑う女性に引き込まれるような何かを感じる。


「あ、あの……あなた様のお名前を窺ってもよろしいでしょうか?」

「私の名はラピス、貴方達、カードモンスターを管理するものです」


◇◆◇◆◇◆◇◆


『ちょっと脅かしすぎじゃないのかね、ラピス君』

「何を言っているんですが、相手は魔王ですよ。何事も最初が肝心です」


 なにやら貴重な情報を持っているようですし、きちんと上下関係を躾けて、搾り取るだけ絞らないと。などと呟く。


『何もそんなに目の敵にしなくてもいいんじゃない』

「態々、お坊ちゃまが辿り付く寸前に服を脱いでスタンバイしていたのですよ。私のお坊ちゃまを誘惑するモンスターは放置しておけません」

『ラピス君も意外とヤキモチ焼きだねえ』

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