第十四章
レベル215
「え~と、なに? それじゃ、アポロとずっと一緒の方が魔法の上達が早いってこと?」
「……うん、そう。クイーズが使うのは私の魔力だから、出来る限り一つになって、一緒で居たほうが交わりやすい」
一つにって所を強調しながらアポロがそう言ってくる。
現在、ライブ活動を自粛している。
なので、時間は結構あるのだが、ペンテグラムの奴が剣の練習だ、などと言って連れ出される。
今もボロボロになって休憩しているところだ。
えっ、なんで自粛しているかって?
それはですねぇ、実はですねぇ……出来ちゃったんですよ!
オレとエクサリーさんの子が!
カードじゃないですよ?
ちゃんとした人間の子です。
あの修羅場の夜から暫くしてエクサリーさんの妊娠が発覚!
皆に隠れてコソコソしていたのが功を奏したのか、こんなにも早く子供が出来るとは。
あの夜以来、エクサリーさんもなんか積極的で、充実した毎日でございました。
それでも暫くはライブツアーは続ける、って言ってたんだけど、さすがにつわりが酷くなってストップをかけた。
今はお爺さんの居る、おやっさんの元実家で療養中でござる。
妊婦の事なんて誰も分からないので、オレの実家に行くか、おやっさんの実家に行くかもめた結果、お爺さんが駆けつけて強制的に向こうに決まりました。
ダイギリも里帰りができてちょうど良い、オレも羽を伸ばそうかな。と思ってたら向こうから来やがった。
えっ、何がって?
ダイギリの親父さん、そう、今代の剣聖さんでござる。
おいダイギリ、なんで連れて来るんだよっ!
そしたら始まる修行編。
いらないよそんなストーリー!
今どき、修行編なんて流行らないんだから!
という空しい抵抗も他所に連れ出されるオレ。
徹底的にしごかれる事に。
しかしアレだ。
オレは魔法だって使えるようになったんだ!
だったら魔法の練習もしなくてはならない!
アポロを付けているだけで良いなら楽かもしれない。
うん、そうしよう。
よし、今日からオレは魔術師になるぞ!
「付けてるだけなら、コッチも同時出来るな」
「うえっ!?」
いや無理ッスよ? 無理ですよねアポロさん?
「…………いいかもしれない」
と、ポツリと呟くアポロ。
なにがいいの?
汗だくの胸の中で……二人の共同作業……などとブツブツ呟いている。
もしもし? ちょっとアポロさん?
「……付けてるだけなら問題ない」
アポロさ~ん! 魔法の練習しましょうよ!
「……じゃあ、こうしよ? 魔力がある限りは魔法の練習。魔力が尽きたら剣の練習」
「おお、それはいいな。こうやって体力的にバテている間に魔力を消費しておけば尚良い」
「良くねえぇええよ!」
はい、練習量が倍になりましたとさ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
と、オチが付いたところで終わりになれば良かったのだが……
「お坊ちゃま、またしても南の国から使者が参っているようです」
「またか……」
オレの受難は未だ終わらない。
アンダーハイト国が正式に聖皇国との国交樹立を宣言したのはいいのだが、それ以来、南の勢力圏がきな臭い。
南の最大国家である、とある国が、自分達は古代王国の末裔なので、旧古代王国墓地一帯はすべて自分ちだ。なんて言い出した。
むろん、周りの国々はそんな事認める訳がないので、アチコチで小競り合いが始まる。
本来なら南の同盟を抜けたアンダーハイトに制裁が始まるはずなのだが、今、聖皇国の後ろ盾を得たこの国とまともにやりあうのは分が悪い。
下手につついて聖皇国が出てきたら、国の拡張どころか逆に侵攻を許してしまうかもしれない。
ドンパチでも始まって国力が弱まれば、旧古代王国墓地一帯を別の国にとられてしまうかもしれない。
そういう訳なんで、色々な思惑が絡まって身動きがとれない、南の大国連中。
それを好機と見たのか、今までそんな大国に押さえつけられていた小国が、次々と聖皇国との国交樹立を求めてやってくることに。
しかし、その国々の使者の人達はなぜかオレの元へやってくる。
なんで皆、オレに言ってくるんだろうな?
直接、聖皇国に言えばいいのに。
「アンダーハイトでの仲裁の実績が効いているのでしょうね」
あれだけ八方塞りだったアンダーハイトの件をうまく納めたんだ。
きっと敏腕の外交官に違いない。
なんて噂が流れているそうな。
「にしても、ミネルバのような大国までオレに言ってこなくてもいいんじゃないのか?」
「ああ、あそこはアレですね、音楽の禁断症状が出てですね」
「なんだよソレ?」
エクサリーが妊娠発覚後、ライブイベントは全国的に休止状態。
ミネルバは、そこそこ大きな国で、お客さんも結構入っていた。
ちょっとした音楽ブームか、独自の蓄音機なども作られていた。
そこへ急な休止のお知らせ、国民の皆さんはがっかりされたご様子。
まあ、それだけなら良かったのだが……
オレ達は基本チャリティーイベント。
無料で誰でも聞ける。
場所さえ用意してくれたらどこへでもいく。
しかし、貴族向けのカユサルの演奏は高額な出演料が設定されている。
で、ミネルバの貴族達、そんな、たっかいお金を払ってカユサルさんを呼ぶわけですよ。
すると国民の皆さんから不満が噴出。
我々は音楽が聞けないのに、自分達だけ聞くのは不公平だ。とか。
いやまあ、ほとんど言いがかりなんですけどね。
それをまあ、利用する人もいる訳ですよ。
しまいにゃあ、広場に人々が集ってデモ行進。
焦ったお偉方がオレに泣きついてきた。というカラクリだったとか。
「その利用する人ってお前の事じゃないだろうな?」
「いやですねえ、さすがにそんな事までしませんよ?」
「ほんとかよ?」
カユサルと言えば、こないだ、とんでもない事態になっていたんだよな。
例の渡したカードの所為で。
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