第十三章

レベル200

「ハイ、それでは、首脳会談を始めたいと思います!」

「ガウ?」


 ギターちゃんがヨイショと椅子の上に登って、黒板に『首脳会談』と書き出す。

 それを見ているのは、ロゥリ以下、ハーモア、サウ、レリンの三名。

 ハーモア以外の三人は、突然の奇行に走ったギターちゃんを見て、首を傾げている。


 ハーモアはウトウトと船をこいでいる。それを見てギターちゃんはチョークを鋭く投げつけた。


「ハイ、そこ、寝ないの!」

「いでっ、つってなんなんだよこんな朝っぱらから?」

「だから首脳会談と言っているでしょ。今日の議題は、どうすればあのクソウサギをなんとか出来るかという話です!」


「なんとかってお前……」


 ハーモアが呆れたような表情でギターちゃんを見やる。


「皆さんも不満に思っていませんか? 私は不満です! 横暴です! 暴君です! どうにかしてギャフンと言わしたい!」


 そう言って凶暴なウサギの顔を黒板に書くギターちゃん。


「最低限、音の世界の禁止を解いてくれるまで、テロも辞さない構えです!」

「ソレ、お前だけが良い話ダロ? ケケッ」

「フッ、あなた達、最近マスターにあまり構ってもらっていないでしょう? しかし! 私の音の世界に行けば、私達とマスターだけの世界が出来上がるのですよ!」


 協力してくれれば、ここに居るメンバーだけでマスターと暮らしていける。なんて続ける。

 ラピスもエクサリーも居ない世界。

 きっとマスターは私達を大層可愛がってくれるはずだ!


 それを聞いて、ちょっとその気になるメンバー達。


「そっか~……いつもお兄ちゃん忙しそうだったし、少しは息抜きもいいかも?」

「ああ、偶にはハー達と遊んでくれてもいいよな!」

「ケケッ、こないだ三ヶ月も息抜きしたバッカダケドナ。マッ、音の世界とヤラモ興味アル」


「ガウガウ、イクラカジッテモOk?」


 ギターちゃんは満面の笑みで頷く。


「音の世界に実体は無い! 何をしても、どんな事をしても許される世界! さあ皆さん、私と共にあのクソウサギを生け捕りにするのです!」


 と、ハーモア達の顔がサッと曇る。

 サウが後ろ、後ろ、と指をさす。

 ロゥリの奴はこっそりとその場から出て行こうとしている。


 ん? と振り向いたギターちゃん。そこには黒板に書いたウサギと瓜二つな人物が。


「どこが瓜二つなんですか? まったく、やはり全然懲りてないですね」


 ポンッとギターに戻るギターちゃん。

 あっ、ずるい。って周りから声が聞こえる。

 しかしラピス、そのギターを手に取り一つ命令する。


 すると人型に戻るギターちゃん。


「私からそう簡単に逃れられるとでも思っているのですか?」

「くっそ、このバカウサギ、離して! 離してよっ!」

「さて、どんなお仕置きがいいですかね? そうですね……故障中とかにして、暫くお坊ちゃまには別のギターを弾いてもらいましょうか」


 それだけは勘弁してください! と、涙目で懇願するギターちゃん。


「マスターが私以外の楽器を使うなんてありえません! 神様、仏様、ラピス様! もう二度と邪な事は考えませんので許してください!」

「こないだもそうだったんですよね。ハァ……確かに心から反省しているようですが、あなたの場合、時間が経つと……」

「音楽の神に誓って! 次やるときはもっとうまくやります!」


「やっぱり反省していないじゃないですか……」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ところでお前、どうしてハー達四人だったんだ?」


 ラピスのお説教が終わった後、ハーモアがそう問いかける?

 するとそのギターちゃん、皆のとある場所を順番に見やる。


 まだまだ膨らむ年にはきていないレリンちゃん。

 おっぱいと言うより、筋肉って言ったほうがしっくり来るハーモア。

 多少の膨らみはあるものの、ささやか過ぎて相手にはならないロゥリ。


 そして人外。


 最後に自分の胸を見やる。

 決して大きくはないが、ある。とは言えるレベル。

 フフン、と勝ち誇った顔をする。


「ガウッ!?」


「……ギターちゃん、意外と小狡い」

「コイツ、ロゥリのアダルトバージョン知らないんじゃ……」

「知らないとイウノハ、シアワセな事もアル」


 その後、二度とこのメンバーでの首脳会談は行われなかったとさ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「なんて事があったんですよ」

「へえ……」


 ところでギターちゃん。

 オレ達、そろそろしっぽりしたいんだけど?

 オレとエクサリーが寝床に入ったところでギターちゃんが乱入してくる。


「どうぞ、どうぞ。私はお二人の子供も同然、お気になさらず」


 気になるよ!

 子供だったら、なお更だろ!?

 18歳未満は禁止なの!


 アレ? オレ、そういや今は18歳未満だな? いいのかな?


「ガウガゥ……」


 ロゥリまで眠そうな目をこすりながらオレの足元に入ってくる。


「ちょっと何やってるんですかこのドラゴンもどき! ここは私とマスターの愛の巣ですよ!」


 ギターちゃんがそんなロゥリの尻尾を引っ張っているがビクともしない。

 そのうち、いびきをかきながら寝に入るロゥリ。

 ちょっ、おまっ、オレの足の上で重量アップするな! 折れちゃうだろ!


 ゼエゼエ言いながら、私たちの愛の巣が。と呟くギターちゃん。いや、君とじゃないからね?


「随分賑やかですね、私も混ぜてくださいよ」

「また来たバカウサギ!」

「あなたはほんとにもう……」


 呆れたような表情でオレとエクサリーの間に入ってくるラピス。

 悔しそうな顔をしたギターちゃんは、そのラピスとオレの間に体をねじ込んでくる。

 ちょっと、ベッドから落ちそうなんですが?


 一体何時になったら、オレはエクサリーさんとのしっぽりした夜を過ごせるようになるのだろうか?

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