レベル169
「よし、じゃあオレがロゥリに圧勝したら訓練は無しな!」
「いいだろう」
最近は、ペンテグラムのおっさんから毎日スパルタの訓練を施されていた。
くっそこのおっさん、嫌だつってんのに無理やり首根っこ掴んで引き摺っていくんスよ。
あれかな? 裏技で倒されたのを未だに根に持っているのかな?
「この俺を退けたんだ、そこいらの奴に負けてもらっては困る」
「ちょうどいいんじゃないですかね。お坊ちゃまの剣はほぼ独学です、今後、対人戦も考えれば正規の剣術を知っておくべきです」
いいんだよ、人間を斬る事はないんだから!
いざとなったら伝家の宝刀、逃げ足があるんだから。
えっ、逃げ切れた事なんてないじゃないですかだって?
どうしてだろうなあ……逃げ足は速いほうだと思うんだけどなあ。
とにかく、オレには訓練なんて必要ないのっ!
今からそれを証明してやるゼ!
ロゥリが呆れたような視線でオレの方を見てくる。
フッ、そんな余裕をこいているのも今のうちだ!
オレは前回の戦闘で数倍レベルアップしているんだからな!
えっ、だったらなんでペンテグラムと直接勝負をしないのかって?
例の三種の神器があっても勝てそうにないからだよ!
このおっさん、スキル持ってないくせにめちゃ強いの。
レベル120は伊達ではない。
というか、もうあんなギリギリな戦闘はしたくない。
『出でよ! マンドラゴラギター!』
――ギュイィィーン!
フハハハ! まずはこれだ! くらえ共振攻撃!
えっ、それがどうしたって?
まあ見てろ! このギターの攻撃を受けて無事で居られるかな!?
しかし、一向にロゥリにダメージが入っている様子が無い。
おかしい、なんでこいつ平気な顔をして立っていられるんだ。鈍感かな?
「何やっているんですかお坊ちゃま? 戦わないのですか? オープニング曲でも作っているのですか」
いや、戦いはすでに始まっているんですよ?
ほら、固有振動数って言うかなんていうか。
音で物質を破壊? みたいな。
「音で人体を破壊ですか? う~ん、無理じゃないですか?」
「えっ?」
ガラスや、金属のように、素材が均一で振動しやすい物であれば共振反応で破壊する事は可能である。しかし、人体は様々な性質で出来ている。
鼓膜や血液、といった一部の部位のみというのなら分かるが、人体全てを対象にするのはかなり難易度が高い。
しかも人体の固有振動数は人によってまばらであるとか。
「そもそも、音響攻撃と共振はまた違いますよ?」
「でもあの姫様アンデット、ちゃんと落ちたよ?」
「ううむ……それはあれじゃないですか、ただお坊ちゃまの音楽に感動して落ちたのじゃ?」
ええっ!? いや、それはそれで嬉しいけどさあ。
えっ、こっちからいっていいかだって?
いやちょっと待て、もう一つあるから。
『パワードスーツ・リミットブレイク!』
その瞬間、全身が真っ黒に染め上がる。
そして弾丸のような速度でロゥリに迫る。
慌てたロゥリが防御の姿勢を取ろうとした所、サッと後ろに回りこみ、わき腹をくすぐる。
おおっ、凄いスピードだ!
まるで周りがスローモーションになったかのよう。
そして力も上がっている。
重量操作で体重が上がっているはずのロゥリの体を軽く持ち上げる。
「フハハハ! どうだ、手も足もでまい!」
リミットブレイク、三分間程の間、スピードと筋力が数倍に跳ね上がる模様。
そして、懸念であった体への負担などのデメリットも無い。
クールタイム無しの連続使用も可能で、使ったカシュアも随分驚いていた。
「見たか! これがオレのじつりょ・、ん?」
いでっ! いででで!
突然両足に激痛が走る。
遅れて全身にも激痛が!
「あだだだ! 何だコレ! 肉体への負担はないんじゃ?」
地面をのた打ち回るオレを見てカシュアが一言。
「ププッ、騙されてやんの」
「カシュアてめぇええええ! いだだだ!」
つ~か、三分どころか一分も経ってないぞ!
そういやカシュアの奴、途中から全身が光っていたな。
てっきりリミットブレイクのエフェクトだと思っていたんだが、アイツ、自分自身に回復魔法掛けてやがったな!
うおっ! いかん、まるで全身が肉離れしたかの様な痛み!
怒りで力が入ると超痛てぇえ!
おいちょっと待てロゥリ、なんだその手は?
止めろ、来るな! こっちへ来るんじゃない!
すいません、私が悪うございましたっ! 訓練だってなんだって受けます! だから触らないでっ!
あっ、やめっ、止めてください、止めろ! あっ、
「アッッ――――――ッ!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「おのれカシュア」
「あっ、そんな事言っていいの、回復魔法止めるよ?」
「すいませんカシュア様、よろしくお願いいたします」
くっそ、痛みが治まったら覚えていろよ。
「ボクを人体実験に使おうとするからバチが当たったんだよ」
「当たったんじゃなくて当てたんだろ?」
まあ確かに、とりあずカシュアっていうのは良くないかもしれない。
とはいえ、他にやってくれそうな相手がいないんだよなあ。
えっ、だったら自分でしろって? ごもっともですね。
「別にキミの頼みであるのならボクもやぶさかではないんだよ」
キミとボクの仲だし、頼られるのは悪い気はしないしね。なんてちょっと悪戯っぽい表情で言ってくる。
「だけどね、ご褒美ぐらいくれてもいいと思うんだよね! ほらここにブチューとか!」
ええい止めろ! 顔を近づけてくるんじゃない!
「何やっているんですか二人共、とうとうホモに目覚めたんですか?」
「ちっ、ちげ~し! というか、今のこいつは女だから、たとえそうなってもホモではない」
ないはずだ!
「そうだよラピス君! ボクはもう身も心も女性になってしまったんだから!」
「「えっ?」」
なにやら頬を染めてこっちを見つめてくるカシュア。
「実はボク、こないだの一件以来、キミを見ると……こう気持ちが押さえられなくなるんだ」
そう言ってどんどん顔を近づけてくる。
やめろ唇をつきだしてくるんじゃねえ!
いだだだ! くそっ、体が痛くて動けねえ!
「はあ、いいかげんにしなさいカシュア、あまりお坊ちゃまをからかうんじゃありませんよ」
「アハハ、バレちゃったかね」
なんだ冗談か。
というかコイツ、最近やけに絡んでくるなあ。
ウザさも倍増でござる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「しかしアレですね~、カシュアまで、好きな子にはイジワルしたいタイプだとは意外でしたね」
「えっ、な、なんのことかな~」
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クイーズ君の受難は今後も続きます☆
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