レベル146

「見てくれたまえクイーズ君! どうやらボクは才能の塊のようだ!」


 カシュアが、見せ付けるかのようにオレの頬へグイグイとミュージックプレイヤーを押し付けてくる。

 ウザッ!


 確かに良く出来ている。

 グランドピアノを弾くカユサルが、様々な角度から映し出され、流れる音楽もとてもクリアに聞こえる。

 だが、それはお前の才能じゃなく、ボーナスポイントをスキルに振ったおかげだからな。


「兄上に褒められたのなんて、生まれて始めてじゃないかな!」


 ……まあ、やる気も出ているようだし、その事は内緒にしておくか。


「じゃあ今後の記録係はカシュアに頼むか」

「ああ、任せておきたまえ!」


 さっそくカシュアは、ミュージックプレイヤーを持ってエクサリーの元へ向かう。

 しっかり頼んだぞ!

 これでいつでもエクサリーさんの歌が聞けるな。


「お兄ちゃん! スキルを貰えるってホントッ!?」


 と、そこへ、息を切らしたレリンが駆け込んでくる。

 本日は祭りも最終日、学校も休みとの事で、レリン達もこちらに来る事になっていた。

 そこでラピスから、レリンにスキルの件を伝達して貰っていたのだ。


「ああ、本当だ! コレがお前のスキル候補だ」


 そう言ってレリンのカードの裏面を見せる。

 そのスキル欄にはグレー文字で、


『魔力上昇』

『弓術』

『知能アップ』


 と、3つの候補が浮かび上がっていた。

 各文字をタップするとゲージに変わる。

 一番長いのは弓術、次に魔力上昇、知能アップはかなり短い。


 今のレリンは、ボーナスポイントの余りは少ないので、今すぐ取れるものとなると知能アップぐらいかもしれない。


「………………」


 なにやら渋い表情でそれを見やるレリンちゃん。

 どうかしたの?


「全部なんか普通……」


 効果ってどんなのって、隣のパセアラに問いかけている。

 つって、なんでパセアラが居るの!?


「いいでしょ別に。お祭りなんだし……」


 そのパセアラはレリンに各スキルの説明をしている。

 一緒に来た、サウとハーモアもそれを聞いている。


「知能アップとっとケ、無いヨリましだ。ケケケ」

「どれも読んで字のごとくね。知能アップは全般的に使えるから、とっておいて損はないけど……」


 えっ、コレ一つ選んだら他のはもうとれないのかだって?

 さあ?


「さあってあんた。そのカードは貴方のスキルでしょ?」


 そんな事言われましても……


「使えないわね」


 どうも申し訳ありません。

 なんでオレは謝まっているのだろう?

 パセアラさんには、どうも頭が上がりません。


「なあクイーズ、これ以上は増えないのか?」


 ハーモアがオレにそう聞いてくる。

 ふむ、どうだろうな。


 魔力上昇は、最初に魔法を使えるよう頑張っていたからか?

 弓術はそのあと、弓を使おうとしてたな。

 そして学校行きだして知能アップ……という流れなら、今後の行動次第ではスキルの候補が増える可能性はあるか。


「どれもショボそうだし、良さそうなスキルが出るまでポイントを溜めておいたほうがいいんじゃないのか」

「ショボイって言うてやるなよ」


 ほら、しょげ返っただろ?


「レリン、お前には今スキルが無い。だが、スキルが無いからこそ可能性がある」

「可能性……?」

「そうだ、他の奴のカードを見てもスキル候補が出る奴はいない。レリンだけだ」


 どうやら、スキルをすでに取得していた場合は、そのスキルの強化になるようだ。

 空きスペースをタップしてもスキル候補は現れない。


「どれかスキルを取ってそれを強化するのもいい、新たな候補が出るまで待つものいい。レリン、お前には今、目に見えない、可能性というスキルを持っているんだ」

「可能性というスキル!?」


 さすが腐っても大貴族、口がうまいわよねぇ。

 ああやって片っ端からコマしていくんですよぉ。

 ラピスとパセアラがヒソヒソ話をしている。


 おい、うるさいぞ外野!


「…………少し待ってみる。お兄ちゃんの役に立てるような凄いスキルが出るまで我慢する!」


 随分長い事考えていたレリンちゃんは、そう言って握りこぶしを固める。

 ええ子やな。

 オレはそんなレリンの頭をなでながら、


「納得行くまで悩めばいい。悩めば悩んだ分だけ納得がいくだろう」

「うん!」


 ところで話は変わるが、三人共学校の方は順調なのか?


「特に問題を起こしたとは聞いていないわね」

「ハーの奴は、さっそくボッチだケケケ」


 ハーモアは相変わらず人見知りが激しい様で、クラスの人に話しかけられただけで逃げ出すそうな。


 そういうサウは問題ないのか? 明らかに人じゃないんだが。

 えっ、呪いでこんな姿になっている事にしている?

 幻影で実は私はこんな姿なのです。ってエロいエルフさんを出して見せると、クラスの男連中がこぞって呪いを解こうとやっきになっているとか。教師も含めて。


 おまえ……あんま、からかうのはやめてやれよ。


「レリンの方は問題ないのか?」

「えっ、う、うん」

「なんかコイツモテモテでよ、こないだ男子に告白されていたぞ」


 ほほう?


「ちっ、違うんだよ! 向こうが勝手に言ってるだけで……」


 そう言って赤くなるレリンちゃん。

 今度その男子、チェックしに行かないとダメだな!

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