レベル46

『出でよ! ラピス・オブ・アイリスブラッド!』


 召喚されたラピスは、瞬時に状況を把握しオレの事を抱きとめてくれる。


「助かったぜラピス!」

「お坊ちゃま! 血だらけじゃないですか!?」

「ああ、コレは全部あいつの血だ」


 オレはドラゴンを指差す。

 ラピスが差された先を見て首を傾げる。


「……随分スマートな岩竜ですね」

「分かってて言ってるだろ?」


 ドラゴンの奴が、頭に刺さっている剣を取り払おうと手で頭を払う。

 そしたら剣の柄に手が当たって、そのまま手の動きと一緒にサックリと頭を引き裂いていく。

 しょせんはトカゲか……刺さった剣を横に払うとそりゃそうなるわな。


 そして地面をのた打ち回るブラックドラゴン。バカな奴。


「すごい切れ味ですね~」

「伊達に竜種特効が付いてないな。それより急に呼んで大丈夫だったか? アポロ達はどうしている?」

「カシュアが今、一生懸命入り口の岩を削ってますよ」


 アポロ含む冒険者達は、もう入り口まで付いているそうだ。

 しかしながら入り口を阻む岩の除去に苦労しているらしい。

 と、思っていたら、入り口の岩から剣が突きだす。


 そしてバキバキッと岩にヒビが入っていく。

 その直後、突如爆発した!


「ちょっ、ちょっとちょっと、まだボクが居るんだよ! 危ないじゃないか!」

「……邪魔」

「ええっ、みんなボクの扱いひどすぎない?」


 もうもうと立ちこめる煙の中からアポロ達が飛び出してくる。


「……!? クイーズ!」

「血だらけじゃないッスか!」

「大丈夫だオレには傷一つ無い、コイツは全部ドラゴンの返り血だ」


 続けて冒険者達が駆け込んでくる。

 そして皆、目の前で暴れている黒竜を見て驚愕の表情を見せる。


「お、おい、ブラックドラゴンなんて聞いて無いぞ! 岩竜じゃなかったのかよ!」

「こんなの相手にするのかよ! 冗談じゃねえぜ!」

「おい、ギルド長、これ報酬倍は出せよ!」


「良く来てくれた冒険者達! 怪我人を頼む! お前達! すぐさま撤退の準備だ!」


 冒険者達を見て、持ち直した姫様が撤退の号令を出す。


「え、結構弱っているみたいですが、倒さないんですかい?」

「見ての通り敵はブラックドラゴン。岩竜など足元にも及ばない強大な敵だ。悔しいが、今の私達の手には負えない……」

「そんな事も無いッスよ。なあみんな」


 ああ、そうだな。と頷きあう冒険者達。


「手が……あるのか?」

「ええあれだけ弱ってりゃな、それに、ブラックドラゴンと言えばアレだろ」

「ああアレだよな。よっしゃ盾持ってる奴前並べ! んじゃ魔術師の先生方オナシャス!」


 魔術師達から魔法が放たれる。

 いや、魔法というより……放水?

 ジャバジャバと黒竜に水を掛け始めた。何やってんのぉ?


「アポロちゃんは冷やすのたのまぁ」

「…………任された」


 アポロから魔法が放たれる。するとだ! 徐々に黒竜に掛かっている水が凍り始める。

 なるほど! 凍り付け作戦か!

 ブラックドラゴンはブレスを持たない。魔法攻撃も出来ない。

 即ち、体に纏わり付く氷を溶かす手段がない!


 そしてトカゲは寒さに弱い。


 飛んで逃げようとするが、うまく羽ばたく事が出来ず思ったように上昇しない。

 魔術師達を、爪と尻尾で攻撃しようとするが、すかさず盾を持った冒険者達がそれを阻む。

 さすがは冒険者! ドラゴンより悪知恵が働くな!


「そこに悪はつかねえだろ!?」


 ヨロヨロと、すっかり覇気を無くしたドラゴンが後ずさりする。

 するとだ、落ちちゃいました。えっ、どこにって? 後方の穴。

 どこまでギャグを見せてくれるんだあのドラゴン。


「っと、チャンスだな! 姫様! 例の黒い奴でオレの剣を真下へ打ち出してください!」

「う、うむ! 任せろ!」

「あと、ねじれます? 回転とか付けた方が威力が上がりますんで」

「やってみよう!」


 オレは急いでドラゴンが落ちた穴へ向かう。


『出でよ! ドラゴンスレイヤー!』


 ドラゴンの真上にドラスレを召喚。

 そのドラスレに、姫様の影が穴の底から延びてきてグルグルと巻き付いていく。


『シャドウスキル! メテオブレイカー!』


 姫様がそう叫ぶ。

 おっ、咄嗟に考えたにしてはいい名じゃないっすか。

 高速回転しながら急スピードで落ちて行くドラスレ。


 先端は空気の摩擦で赤く火花が散っている。

 それはまるで、一筋の流星のようで、まさしくメテオブレイカー!


 ――ドゴンッ!


 地面に衝突すると同時、すさまじい轟音をたてるドラスレ。

 おっとやべえ、このままだとマグマまで掘ってしまうかもしれない。


『戻れ! ドラゴンスレイヤー!』


 カードを見るとレベルが上がっていた。

 どうやら見事、黒竜を討伐したもよう。

 しかも6レベルもだ!


 たった一匹で6レベル! さすが大ボス! ブラックドラゴン!

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