マルぼんと少女
マルぼんが見知らぬ可愛らしい少女を連れてきた。
見知らぬ少女「……」
ヒロシ「うほっ。かわいらしい少女! くれるん!?」
マルぼん「だまれ陰獣。この子は、僕の母方の叔父の奥さんの弟の連れ合いの向いに住んでいたおじいさんがいつの間にか連れ歩いていた女の子で、言うなればマルぼんの妹的存在なの。ちなみにそのおじさんは今、衣食住は約束されているけど自由はない施設で社会復帰を目指している」
陰獣「カケラも妹の要素がなさそうだけど、まぁ、いいや。お嬢ちゃん、僕のこと『お兄ちゃん』と呼んでもいいよ。もしくは『ご主人様』とか。あるいは『この醜い豚やろう(相手を心底さげすんでいるカンジで!)』とかでもいい」
マルぼん「だからだまれ陰獣。この子はね……」
見知らぬ少女「……(赤面)」
陰獣「頬を染めた! 僕を見て頬を染めた! ちょ、ま、いや、おお。うおおお。うおおおおおっ。ふぉー!」
見知らぬ少女「……(ふるふると首を振る)」
マルぼん「落ち着いて、陰獣。別に君に一目惚れしたとかそういうんじゃないから。実はこの子、ひどく人見知りするんだよ。他人、特に異性に近寄られると、恥ずかしくてこうなっちゃうの」
陰獣「なるほど。さっきから一言も話さないのもそのためか」
マルぼん「いや、それには別の事情が」
陰獣「別の事情?」
マルぼん「ほら、なにがしゃべってごらん」
見知らぬ少女「ゲロデップ」
陰獣「ぎゃー!」
少女がしゃべった瞬間、ヒロシの耳から噴水のように血が噴出しました。
マルぼん「彼女はどうも人間ではないらしくて、発した言葉に相手の耳に尋常じゃないダメージを与える力があるみたいなの。だから迂闊にしゃべることができない」
陰獣「僕の耳から出た血が虹を描いているー!」
マルぼん「それでもそんな自分をなんとかして、色々な人とコミュニケーションをとりたいと思い、マルぼんを訪ねて来たというわけなんだ。」
陰獣「イイハナシダナー」
マルぼん「実は機密道具も用意してある。『意思疎通チョコ』。このチョコレートを分けあって食べた2人は、
相手が考えていることが手に取るようにわかるようになる。誰かがこの子とチョコを分けて食べて、彼女が思っていても口に出せないことを代弁してやるんだ。」
陰獣「そ、その代弁者、僕がやってもいいよ。やっとこさ耳血も止まったし」
マルぼん「おお、それは手間がはぶける。さすがヒロシ」
たとえ殺人ボイスの持ち主でもかわいいことはかわいいので、ここいらで好感度をあげて、フラグのひとつも立てたいと思った浅ましいヒロシなのでした。
マルぼんが『意思疎通チョコ』を2つにわけで、ヒロシと少女に渡します。もぐもぐとチョコを食べる少女。ヒロシもチョコを食べます。
陰獣「うっ」
突然顔が青ざめて、苦しみ始めるヒロシ。這うように部屋をでると、トイレに飛び込ます。
陰獣「うああああ。耳に続いて、今度は僕の腹が。腸がっ」
トイレの中からヒロシの「紙が足りないよう」という悲壮な声や、あまり聞きたくない類の音がします。
マルぼん「今、チョコの説明書読んだんだけど、21世紀の人間の体にはめっさ有害なんだって。特に腸に致命的なダメージが」
陰獣「ひぃぃぃぃぃぃとまる気配がないぃぃぃぃぃ。僕のお尻壊れちゃったよぉおおおおお」
マルぼん「これが本当の、ダイベン者ってわけだね」
少女「……(コクコクと頷く)」
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