高級人間あらわるあらわる
ヒロシが久しぶりに泣きながら帰宅してきました。理由を尋ねると「今日はテストだった」との返答。
マルぼん「ははあん。さてはまた0点とったんだろ」
ヒロシ「ちがうよ。第一、0点なんてとったことはないし」
ヒロシは勉強もスポーツも人並みにできる少年ですが、「おかしい世界から来たおかしい生物とおかしい同棲している」という理由だけで、「勉強もスポーツも不自由な、義務教育の限界を余裕で突破するダメ少年」というレッテルを貼られているのです。
ヒロシ「うちの担任が酷いんだ。『おまえ、どうせテストも悪い点だろ。クラスの平均点が下がると俺の評価がさがるし、テストはサボれよ』とか言うんだ」
教師の腐敗もここまできたかと愕然するマルぼん。
ヒロシ「マルぼん! あの人としてどうかと思う教師を社会的にどうにかできる機密道具、僕のために出しておくれよう!」
マルぼんはとっておきの機密道具を出すことにしました。
マルぼん「『こうれベル』~!」
『こうれベル』はベルの形をした機密道具。耳元で鳴らし、その音色を聞くとあら不思議。光の速さで経験地をつんで人間的成長を遂げ、ひとまわりもふたまわりも高レベルな存在になることができるのです。
マルぼん「こいつで高級な存在になるがいいさ」
ヒロシ「すごいや、さすがマルぼん。ではさっそく拝借して…。おっ。音を聞いただけで、なんか頭がすっきりしてきた」
マルぼん「即効性の機密道具だから、さっそく高レベルな存在に化身しているんだ」
ヒロシ「ああ。なんか、生きとし生けるもの全てが愚かにおもえてきたぞ」
マルぼん「おめでとう。これでヒロシは高レベル存在だ」
ヒロシ「なんか背中がムズムズしてきたよ」
マルぼん「羽、生えてるよ」
ヒロシ「お、おしりのあたりも」
マルぼん「尻尾だ
ね」ヒロシ「おでこに視界が開けてきたんだけど。ウウ…カラダガアツイ」
マルぼん「おでこに新しい目が開眼しているよ。あ、今度は角が生えてるし」
ヒロシ「ウウ…ウウ……ウオゥ」
マルぼん「ヒロシくん?」
ヒロシ「クゲャアアアア!」
ヒロシは生えたばかりの羽をはばたかせ、星空へと消えてゆきました。
マルぼん「高レベルな存在が、必ずしも人間に近いとは限らないんだな。
マルぼんは、ひとつ利口になりました。
ヒロシ「気合で元にもどりました。もう必死ですよ、必死!」
マルぼん「やればできるじゃないか。すごいすごい」
ヒロシ「で、ものは相談なんだけどさ。『こうれベル』があるなら、『ていれベル』ってのはないの?」
マルぼん「あるよ。音色を聞いたら、生き物として必要以上にダメになる機密道具。でも、それで何をするのさ」
ヒロシ「『こうれベル』をつかったら自分がやっかいなことになるだろ。でも『ていれベル』で回りの人を次々とダメ人間にして、自分だけそのままでいれば、結果的には『こうれベル』をつかったのと同じことじゃないか」
マルぼん「なんて発想だろう」
ヒロシ「たしか、ラジオの電波に乗せて世界中に色々とバラまくことのできる機密道具があったよね。それで『ていれベル』の音色を世界中の人に聞かせるよ」
マルぼん「簡単におっしゃいますが、とてもヤバめな作戦だと思うのですが」
ヒロシ「大丈夫。もうバラまいたから」
マルぼん「こういう時のみ、仕事が早い!」
それから……
ナウマン象「はい、豆知識~。血液型は、A型の他にB型とか色々ある~」
金歯「へえ」
大脳「えっと。赤信号で渡れ。青信号で止まれだっけ」
ルナちゃん「それ、たぶん正解」
町で国でそして世界で繰り広げられる、それはそれは低レベルな会話。ヒロシの作戦は大成功のようです。
ヒロシ「僕はそのまんまの状態だし、これで世界は僕のものだね」
いつのまにか話が変わっていますが、マルぼんは無視しました。
ヒロシ「よし。町を徘徊して愚民を眺めようぜ。ってうわっ!?」
失礼なことを言うヒロシでしたが、前を見ていなかったせいか、通行人に激突してしまいました。
金歯「あ。激突した人、怪我しているよ!」
ナウマン象「人殺もどきしだっ! 国家権力を呼んでヒロシを捕まえてもらうんだ!」
駆けつけた国家権力により逮捕されたヒロシはあっという間に法廷へとその身を移されたのです。
裁判官A「えっと。傷害だよね?」
裁判官B「傷害って、四捨五入したら人殺しだね。人殺しって悪いよね。こいつ、死刑でいいんじゃねえ?」
裁判官C「いえてるー」
ヒロシ「ちょ、ちょっと! あれ、明らかに事故ですぞ!? それに僕は未成年だし…ねえ、弁護士さん?」
弁護士「しっけっい! しっけっい! しっけっい!」
低レベルでも、法は法。法廷にギロチンが運び込まれてまいりました。盛り上がってきたところで、完。
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