泣いたってロマンティックは止まらない

ヒロシ「このまま平凡な人生を送り、老いて死んでいくんだ。僕は」



マルぼん「人の一生なんて、宇宙全体からすれば鬼のように一瞬だもんね。つまらない人生だったね」



ヒロシ「い、いやだいやだ。僕は…僕は特別な人生を送りたい」



マルぼん「それならこいつを使う。『ロマンキック』」



ヒロシ「なにこれ、人型のロボじゃないの」



マルぼん「キックボクサーのロボなんだ。こいつのキックを食らえば食らうほど、ロマンチックな人生を送ることができる。さぁ、『ロマンキック』よ、ヒロシを蹴れ!」



ロマンキック「ほぁたぁ!!」



ヒロシ「ぶごっ」



金歯「ヒロシ、朕とうぬは、実は兄弟!!」



ヒロシ「ええ!?」



マルぼん「蹴れ!!」



ロマンキック「おあちゃー!!」



ヒロシ「ぶべっ」



ナウマン象「あたい、実は女だったの!! ヒロシおにいちゃん、だーいすきっ」



ヒロシ「ええ!?」



マルぼん「蹴れ!!蹴れ!!」



ロマンキック「ほぁたぁ!!」



ヒロシ「うごっ」



ルナちゃん「ヒロシ…私の息子。私の……」



ヒロシ「ええ!?」



マルぼん「蹴れ!!蹴れ!!蹴れ!!」



ヒロシ「ぎゃっ。やめ、やめてけれ!! やめてけれ!! ぱやぱや」



マルぼん「あ、逃げるな!! 運命という名のイニシエーションは終わっていないんだぞ!!」



ヒロシ「外なら安全だ。って、ああ!?」



 キキーッ ドンッ パーポーパーポー…



 それから10年。今年も夏がやってきました。ヒロシが星になった夏が。マルぼんは、今年もヒロシに会いにきました。



マルぼん「暑いなぁ、ヒロシ」



 ヒロシの墓石に話しかけるマルぼん。そこに1人の男がやってきました。ヒロシを轢いたトラックの運転手でした。



男「あ…!!」



マルぼん「まだ…墓参りに来てくれているんですね」



男「償っても…償いきれないですから」



マルぼん「でも、法的な償いは終わっていますよ」



男「心の償いは続きます。私が死んでも」



マルぼん「……」



 まぁ、あれです。本人がいなくても、ドラマチックな人生は進んでいくという話です。

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