ナウマン象個展開催

ヒロシ「たいへんだ! ナウマン象がまた個展を開催するって!」



マルぼん「な、なんだってー!?」



 ナウマン象の趣味は絵画。本人は『やはり天才じゃったか。オレ』と自分の絵画の腕を信じて疑わないのですが、その作品からは不快感とか負のオーラが発せられており、気の弱い人が見ると発狂したりするようなシロモノです。健康な人にもかなり害があり、1ヶ月くらいしめつけるような頭痛が続いたりします。



 そんなナウマン象の個展が、たまに開催されるのです。ナウマン象の知り合いは、ふるって観覧することが義務づけられています。参加しないと、ナウマン象が自宅前で割腹自殺を図ったりするなど、いやがらせが続いたりするので、みんな嫌々観覧するのです。行くも地獄、行かぬも地獄。前にも地獄、後ろにも地獄。へるあんどへる。



ヒロシ「ああ、嫌だ。今の僕は、人間関係のゴタゴタで精神的にまいっているんだ。こんな状態であんな絵を見たら、僕は発狂して、人前で突然奇声をあげたり、革靴を食べだしたり、罪を犯しても罰を与えられなかったり、壁のシミが人の顔に見えるような人間になってしまいます」



マルぼん「マルぼんだって、たぶんひどいことになるよ。死んだりとか。絶命したりとか。逝去したりとか。息をひきとったりとか」



 失禁などしつつ、個展への恐怖に震えるマルぼんとヒロシ。しかし、神の奇跡か仏の慈悲か、個展中止の報が飛び込んできたのです。



 喜ぶマルぼんたちのところへ、「あたい、もう絵を描けない!」とナウマン象が飛び込んできたのはその夜のことでした。



 ナウマン象、所持していた刃物のようなものをヒロシに手渡すと



ナウマン象「その刃物のようなもので、あたいの腹を刺して! そして臓物をひきずりだしながら辱めて!」



ヒロシ「そんな猟奇的な夢はかなえることはできないよ! かなえるわけにはいかないよ!」



ナウマン象「絵を描けなくなるくらいなら、あたいは死んだほうがマーシーなの!」



マルぼん「いったいどうしたというのだい。ちょっと話をしてごらんなさい」



ナウマン象「かくかくしかじか」



マルぼん「ほう。評論家に『なんの価値もない絵だ』と言われたと。それはそれは」



 意外と権威に弱いナウマン象なのでした。



ヒロシ「なんとかしてあげよ。このままだと、僕の部屋で果てるよ、あのガキ大将」



マルぼん「『価値でる額縁』。この額縁にいれた絵は、どんなものでも価値がでるんだ」



 さっそくナウマン象の絵を額縁にいれるマルぼん。もちろん、絵を直視しないように。と、そこへ複数の警官がやってきました。



警官「ああ、いたいた。被疑者確保」



ナウマン象「え、あたい?」



警官「おたくの絵を見た人がねえ、何人か亡くなったの。だからねえ、逮捕」



ヒロシ「じゃあ、個展が中止になったのは」



警官「始まった瞬間、観覧者に被害がでたからですよ。さぁ、署でゆっくりと話を聞きませう」



ナウマン象「え、え、えー!?」



警官「はい、パトカーに乗ってね。あ、その額縁に入れた絵も持っていくんで。凶器ですからね。よーく調べないと。それじゃ!」



 マルぼんはナウマン象の絵に、事件の真相を解き明かすための鍵としての価値をあたえた『価値でる額縁』の効果は絶大だと思いました。

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