しゃせい大会という言葉を下ネタにした世の中をヒロシはけして許さない
今日は写生大会のため、ヒロシのクラスは近隣の山(私有地)に来ています。
担任のデモシカ「よーし、みんな、絵の具出せー。ここいらで絵を描くどー」
ルナちゃん「あら、ヒロシさん。なにやらうれしそうね。気色悪い笑顔などうかべつつ、己のリュックをまさぐる姿、まさに修羅ね」
ヒロシ「ふふふ。この日のために、家の財布から金銭をちょろまかして貯めた金で、マニアックな色まで網羅している高級絵の具セットを買ってきたんだ。って、ああああ!」
ルナちゃん「いかがいたしたの?」
ヒロシ「り、り、リュックの中から!」
マルぼん「えへへへ」
ルナちゃん「あ、マルちゃん!」
鞄からひょっこり顔をだすマルぼん。
ヒロシ「な、なんで鞄の中に潜んでいるんだよ! 絶対に来るなと行っただろ!」
マルぼん「だってさ、どうしても写生大会ってやつへ来てみたかったんだもの! ついて行ったらヒロシくん、怒ってなにやらかすかわかんないし(奇声をあげる、土や石や落ち葉を米と言い張って食う、など)。仕方なく鞄に……」
ヒロシ「あ、あれ、絵の具がないぞ、マルぼん、鞄の中身は!? 絵の具とか弁当(当然のようにコンビニで購入)は!?」
マルぼん「捨てました。ポイッと。それはもう、ボロ雑巾のように」
ヒロシ「ど、どうしてくれるんだよ! 絵の具がないと、写生ができないじゃないか! 絵が完成しなかったら、デモシカ先生にひどいめにあわされるよ! ズボンを脱がされて写真を撮られてネットにアップされるよ!」
マルぼん「責任を痛感いたしました。だします、機密道具。『思いのまま絵筆』。この筆で画用紙に絵を描いてみて」
ヒロシ「描くといっても、筆だけだろ。絵の具なんてついていやしない」
マルぼん「その筆は絵の具がなくても絵がかける筆なんだ。たとえば、その筆を持って『青色』と念じれば、筆から青色が出る。『赤色』と念じれば、赤色がでる。『ビリジアン』と念じれば、ビリジアンがでる。『ザクカラー』と念じれば、ザクカラーがでる」
ヒロシ「本当だ!『金色』と念じたら、金色がでたよ!」
マルぼん「マニアックな色にも対応しているし、いちいち洗う必要もないから便利だよ。そいつで絵を描きなさいよ」
ヒロシ「うん!」
『思いのまま絵筆』を持ち、画用紙を前にするヒロシ。しばらくの間、画用紙を見つめて動きません。
ヒロシ「さて、まずはどんな色を出そうか」
さらにしばらくして。
ヒロシ「クケー!」
鳥のような声をだしたかと思うと、突然衣服を脱ぎ捨てるヒロシ。己の生まれたままの姿を誇示するかのようにあたりを走り回ります。しばらくして座り込み、そこらに生えていた雑草をちぎっては食べ、ちぎっては食べ、木の上に登り、止めようとする教師陣に向かって投石開始。結局、地元猟友会の協力を仰ぐことになりました。
後日、「なんであんなことをしたの」という施設職員の質問に対し、「ずっと昔から、ああいうことがしたかった。アレが本来の自分」と答えたそうです。
マルぼんは「自分の色」まで出すことができる『思いのまま絵筆』の効果は絶大だと思いました。
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