ナウマン象絵画展

ナウマン象「俺の…この俺様の絵が一枚も売れない。いったいどういうことだ。どういうことなんだよ、腐れ外道どもっ」



 皆さんお忘れでしょうが、プリティーチャーミングな敵役でおなじみのナウマン象さんには『絵画』という趣味があります。総作品数は999をゆうに超え、金歯の好意で個展なんかもよく開かれるのですが、売れる気配はまるでありません。



 というのも、ナウマン象の絵は『気の弱い人が見たら石化する』『数年にわたり不幸が連続しておこっていた、とある家の倉庫を調べたらナウマン象の絵が見つかり、その絵を燃やしたら不幸はパッタリと止んだ』『ナウマン象の絵をみた妊婦が出産した子供に角や尻尾が生えていた』『犬の名前に”さくら”とつけたら「アニメからとったろ」と決め付けられた』『幼馴染の女の子がいるのに、他人にはギャルゲーのキャラにしか見えない。本当だよ。本当なんだよ。幼馴染は実在するンだ。ハードディスクの中に』など、怪奇現象を引き起こしてしまうのです。



ナウマン象「貴様らの機密道具で、俺様の絵を全部売りさばけ、いいなっ」



 日本刀片手に襲い掛かってくるナウマン象に恐れをなしたマルぼんは、ついついこの頼みを聞いてしまったのです。 



 ふと横を見ると、ヒロシがお坊さんに髪の毛を剃ってもらっていました。



ヒロシ「ナウマン象の絵を売りさばくなんて、そんなひどいことは正気ではできない。せめて出家して、身を清めてからやりたい…」



 マルぼんたちの行おうとしていることは、あきらかに人の道を外れているものでした。



 ナウマン象の絵売りさばき会議を始めるマルぼんと雲戒(出家したヒロシの僧名)。



雲戒「少し前にさ、『どんなモノでも、それを一番必要としている者に引き取られる機密道具』ってあったよね。それを使ったらいかがだろう」



マルぼん「『適材適所スプレー』だね。このスプレーを吹き付けたモノは、そのモノはそれをもっとも必要としている人の手に渡る」



『適材適所スプレー』を用意したマルぼんと雲戒は、微笑町から120キロ離れた山奥に建設されたナウマン象の画廊(その周辺の草木はすべて枯れはて、動物がいる気配もない。鳥も寄り付かない)へと向かいました。



雲戒「さっそく『適材適所スプレー』をナウマン象の絵に使用しよう」



 画廊に到着するなり、ナウマン象の絵に近づく雲戒。瞬間、目から鼻から耳から口から…おびただしい量の血を吹き出し、一瞬で嘘みたいに痩せこけてしまいました。



雲戒「あ、うう…ああ…」



マルぼん「う、雲戒が廃人に…仕方ない。防護服を身に着けて作業だ」



 毒でも呪いでも防ぐことができる防護服を着て作業をすることにしたマルぼん。それでも何度も嘔吐し失禁し、体はボロボロ。なんとかすべての作業を終えたのは3日後のことでした。



マルぼん「さ、作業終了」



 ナウマン象の絵すべてに『適材適所スプレー』を吹き付けるのに成功したマルぼん。髪もすべて白髪になり、余命も短そうな雰囲気です。そこへナウマン象がやってきました。



ナウマン象「うん? おめえら、なんで宇宙服みたいなの着ているんだ?」



マルぼん「ヨ、ヨーロッパでは、絵を愛でる人の間で流行しているんだよ。宇宙服着るの。ごめん、もう帰るから」 



ナウマン象「あ、おい」



 なんとか帰宅し、雲戒の精神と体も健康を取り戻した頃、ナウマン象から電話がかかってきました。



ナウマン象「おう。おかげ様で、絵がすべて売れたよ。しかも追加注文アリで、今、画廊に篭って描きまくっているんだ」 



マルぼん「そいつはなにより」



ナウマン象「しかもだな、買ってくれたのは外国人!  どこの国の人かわかんねえけど、おれの絵って、いつの間にか世界に認められていたんだぁ。しっかし、マルぼんの言うとおりだな」



マルぼん「なにが?」



ナウマン象「絵を買いに来た外国人な、マルぼんたちと同じように宇宙服もどきを着ていたんだよ。絵を運び出す連中も。本当に流行しているんだな」




雲戒「マルぼん」



マルぼん「やあ、雲戒上人。どうした、新しい袈裟でも欲しいの?」



雲戒「ちがうよ。今、ニュースを見ていたんだけど。I国で変な病気が流行していて、A国が細菌兵器を使ったんじゃないかと言われているんだって」



マルぼん「A国はI国でゲリラに苦しめられているからなぁ。細菌兵器もありえるかも」



雲戒「その病気の症状だけど、目から鼻から耳から口から…おびただしい量の血を吹き出し、一瞬で嘘みたいに痩せこけて、やがて死に至るらしいよ」



マルぼん「それ、たぶん細菌兵器じゃないよ」


















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