クイズの王と呼ばれた男
ヒロシのクラスに転校生がやって来たそうです。転校生は小学生にしてクイズ王の栄冠に輝いたという天才男子生徒。
クラスの女子は「キャーキャーダイテー!」「アナタノシソンノコサセテー!!」と黄色い声をあげていたそうで、それは、ヒロシの憧れるルナちゃんも例外ではなかったとか。
クイズ王の方もルナちゃんに一目惚れしたようで、「君を見るとドキドキするこの気持ち、なーんだ?」とキザなクイズをルナちゃんに出題していたそうです。
ヒロシは思わず吐血するほどくやしかったようですが、あらゆる面でクイズ王に負けているので、なにも復讐する事はできないようです。
ヒロシ「なんか道具だしてよ、マルぼん」
とりあえず、対象の名前を書く部分が空白になっている中傷ビラ千枚を渡しておきました。その後、ヒロシ、クイズ王の中傷ビラを町中に貼っている所を目撃されたそうです。しかも本人に。
ヒロシ「クイズ王のヤツ、僕の中傷ビラを見て凄く深くため息をついたんだ。それで『僕は勝った!』と思ったんだけど、クイズ王、『1人では増えないけど、たくさんの仲間が集まれば増えていく大切なもの、なーんだ? ……答えは、友情だよ、大沼くん』なんて言いながら、なぜか可哀想なものでもみるような顔をして僕を見つめたんだよ。変だよね。勝ったのは僕なのに」
マルぼん「人間として負けているよ、それ」
人間として生き物として、クイズ王にボロ負けのヒロシを不憫に思ったマルぼんは「とりあえず、なんでもいいから勝負を申し込んでこい」とアドバイスしました。
男の勝負に打ち勝てば、ヒロシは人間として、ひとまわりもふたまわりも大きくなれることでしょう。
ヒロシ「クイズ王のヤツ、勝負を受けて入れてくれたよ! 勝った方が、負けた方から好きな臓器をいただけるという条件で!明日、空き地に特設リングを設けて、観客も集めるんだ! 」
マルぼん「でかした! で、なんの勝負?」
ヒロシ「クイズ!」
マルぼん「バカかおまえ」
というワケで、今日はヒロシとクイズ王の男のクイズ勝負です。
ルールは、互いにクイズを出しあって、相手を「3回答えを間違えるor答えられない状況」に追い込んだ方が勝ち。
マルぼん「こうなったら、意地でも先行の権利をゲットして、絶対に答えられない必勝必然な無敵クイズを間髪入れずに叩き込むしかないな」
ヒロシ「勝負は今日の午後からだよ。クイズを考える時間なんてないよ」
マルぼん「延期してもらおうか。ヒロシ、クイズ王に土下座してきなよ」
ヒロシ「ぼ、僕にだって、小指の先ほどのプライドはあるぞ!」
マルぼん「なら仮病とか」
ヒロシ「今の僕、これまでにないくらいに元気一杯だよ」
マルぼん「なら仕方ないね。プスッ」
ヒロシ「注射!? なに打ったのさ!?」
マルぼん「未来で流行している『感染したら高熱が続いて、頭が割れるように痛くなり、耳からなんか小さな虫がゾロゾロでてきて、脳内に変な声が聞こえるようになり、一時間ごとに背が一センチずつ縮み、頭がはげ、家族がどこかよそよそしくなり、自転車が少し目をはなしただけでパンクしていて、体中の毛穴から膿が滲み出てきて、さらには子供ができたら尻尾とか羽がはえているという後遺症が残る風邪』の1日体験版」
ヒロシ「な、なんてことを。……なんか、頭がクラクラしてきて……うっ」
マルぼん「ヒロシ、気絶したか。体験版だから命に別状はないよ」
ヒロシの犠牲によりできた時間を一刻一秒も無駄にするわけにはいかないので、マルぼんは、クイズ王への連絡をすませ、さっそく無敵クイズを考えはじめました。
そして、気絶しながらも全身痙攣を繰り返し、穴という穴から体液汚物垂れ流し状態のヒロシを見て、マルぼんは必勝必然の「無敵クイズ」を思いついたのです。
というわけで、今日こそヒロシとクイズ王の男のクイズ勝負です。
マルぼんとヒロシが会場に行くと、すでにたくさんの観客がおしかけていました。
みんなクイズ王に惚れこんだ連中ばかりで、ヒロシのファンは皆無のようです。
ナウマン象「ヒロシ、死ね!」
大脳「クイズ王閣下、万歳!」
金歯「クイズ王閣下! かっかぁー! キーッ(興奮しすぎて気絶。救急車登場)」
ママサン「クイズ王様、あたしをみてー!!」
おなじみの面々も、長い付き合いのヒロシをあっさりと見捨てた模様。
そうこうしているうちに、クイズ王が会場に到着しました。
周辺小学校の綺麗どころで結成されたギャル神輿にふんぞり返りながら登場したクイズ王は、尋常じゃないくらいの美少年。ヒロシが妬む気持ちも分かる気がしました。
クイズ王「大沼ヒロシくん。私はね、君とはよい友達になれる気がしていたんだよ」
ヒロシ「黙れ! ぼ、僕はおまえを倒して、主人公としての威厳を取り戻すー!」
マルぼんは、そんなものないと思いました。<
クイズ王「…フッ。まぁ、いい。残念だけど、私は雑魚を倒すのに全力を尽くすタイプなんだ」
ヒロシ「あ……全力はちょっと……えへへ。できればハンデを……ハンデをお願いします」
クイズ王「……なら、先攻の権利を君に譲ろう」
先攻さえゲットできたらあとはこちらのもの。マルぼんの考えた必勝必然無敵クイズで、クイズ王を打ちのめすだけです。
審判「試合開始~」
ヒロシ「それじゃあ、第1問いくぞ!」
クイズ王「さぁ、きたまえ」
ヒロシ「第1問! 最近、僕の叔父さんが、急激に痩せたので病院へ行ったら『胃潰瘍です』と診断されたらしいんですけど、なぜか家族を呼ぶように言われて、さらには『すぐに入院するように』言われてしまったそうです。最近は食欲もなくなり、ベッドから起き上がることもできなくなり、目はかすんで、ロレツがまわらなくなり、妙に友人親戚が見舞いにくるようになったとか。さて、このあと叔父さんはどうなってしまうでしょう?」
騒ぎ始める観客たち。
これこそ、マルぼんが考え出した「答えるのがはばかれるクイズ」です! その生々しい問題内容は、まともな神経を持っている人は答えることができないはず!
この勝負、悪いけれどもらいました!
クイズ王「死ぬ。多分、末期の胃がんだろうから、まちがいなく死ぬ。転移もしているでしょうね。この段階まできたら、痛み止めのモルヒネも効かないんじゃない?」
ヒロシ「答えられただと!?」
ヒロシは、とっておきの「答えるのがはばかれるクイズ」をクイズ王にあっさりと答えられ、その上、見事正解されてしまいました。
その後、当然のようにクイズ王の出題にヒロシは答えることができずに万事休です。
クイズ王「大沼ヒロシくん。さぁ、二問目を出題したまえ。どんな問題でも、私は解いてみせるよ?」
挑発するクイズ王。ヒロシはしばらく考えて、意を決したように言いました。
ヒロシ「死後の世界はあるかないか、どちら?」
あまりといえばあまりな内容のクイズに、爆笑する観客たち。マルぼんも、これはダメだと思いました。しかし。
クイズ王「……わかりません」
クイズ王には効果的だったのです。思いっきり効果的だったのです。
クイズ王「わ、私にわからないことがあるなんて。認めん。認めることはできん。……確かめてくる」
クイズ王は、隠し持っていた青酸カリを発作的に飲み干し、ヒロシ、不戦勝。完。
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