夢の国を探していたのはヒロシ
ヒロシが「仙人になりたい。仙人になって自然と調和したい」とか言い出しました。
理由は、例のごとく金歯の自慢話。ある日、金歯は路地裏で横になっていた男を気まぐれに助けたらしいのですが、それがなんと仙人だったそうです。
仙人のプライベートレッスンで、霞だけを食って生きる術を身につけた金歯は強く、瞬く間にヒロシたちを叩き伏せてしまったとか。
唯一善戦したナウマン象も、仙人に一撃で敗れ去り靴を舐めさせられるという屈辱を受け、現在は故郷の山奥で仏像を彫る毎日。
こんな事態を打破すべく、ヒロシは仙人になりたいというのです。
上手い具合に、誰でもいつでもお気軽に仙人になれるロボット型機密道具「仙人教師」ってのがあったので、マルぼんはこれを使うことにしました。
未来の世界。文明が極端に発達した代償に、人類の平均寿命はおもしろいように下がっています。(だいたい23歳くらいで人生ゲームオーバー→スタッフロール→「強くてニューゲーム」で2周目スタート)
「オラ、死にたくないズラ」と思った人々の間には健康ブームが超到来。
長生きといえば仙人ということで、「仙人教師」が開発されたのです。
いつでもだれでもお気軽に仙人になれるロボット型機密道具「仙人教師」は、パッと見、まるでどこぞのホームから、夢に導かれて抜け出してきたかのようなじじいです。
よほどのバカでもなければ、このじじいの出すアドバイスに従っていれば仙人になれるのです。
仙人教師「仙人といえば霞を食って生きる人種。仙人への第一歩は、霞以外のものを食べないことじゃー!」
とは言うものの、自分で決めた事ですら満足に達成できない現代っ子の象徴のようなヘタレ小学生・ヒロシには、霞以外のものを食べないということなど、できるはずもありません。
実際、ヒロシは「霞以外を食べない修行」に半日も耐えられず、光の速さで貯まったストレスで過食症になってしまいました。
ヒロシ「ウンマーイ。アンマーイ。トロ~。カッパカッパ。ウニ~。エビエビ」
空ろな目で冷蔵庫の中を食べ尽くすヒロシ。
仙人教師「どうしても食べてしまうのなら、霞以外のものを食べれなくすればいいのじゃ!」
そう言うと、仙人教師はヒロシの頭の辺りを触りました。秘孔です!
ヒロシ「顔……! 声……!? 食べ物がしゃべっているー!?」
仙人教師「食べ物の死への恐怖の表情と、食べられていくことへの恨みがこもった声が聞こえるようになる秘孔じゃよー!」
ヒロシ「く、くるな、おにぎり! おまえが食べられるのは……僕のせいじゃないー!
うるさいだまれー! 黙れー!」
仙人教師「これでヒロシは普通のものを食べることができなくなり……」
ブシュ。
ヒロシ「うえへ、へへへ。これで、怖いものは見えなーい。聞こえなーい」
マルぼん「ヒロシが自らの手で、己の光と音を奪ったー!?」
ジャンプみたいな展開になってまいりました。
今、ヒロシはマルぼんの目の前で醤油の一気飲みに興じています。
「なに? 徴兵逃れ? このNot国民!」と思われそうですが、心配なく。
昨日、光と音を失ったヒロシは、その反動で新たな感覚に目覚め仙人として覚醒し、その結果、調味料をつければ霞だけで満足できるようになったのです。
醤油の一気飲みは、醤油ではなく「醤油をつけた霞」を食しているということなのです!
<マルぼんのサルでもできる仙人化レッスン>
1・好きな調味料を持参して山へ行き、霞が漂っているのを確認。
2・思いっきり霞を吸い込んで、持参した調味料を一気飲み。
3・その調味料の味をした霞が食べられます。
裏技1・かき氷のシロップとかでもいけます。フルーティーです。
裏技2・なお、実行して内蔵を破壊しても(ほぼまちがいなく破壊できます。血糖値もUNAGI登り)、マルぼんには責任をとる能力がありません。そもそも国籍すらありません。税金も納めていません。将来も雲の中です。……年金は? ねえ、年金はー!? 明るい未来をー!
ヒロシ「霞うめえ……次はマヨネーズ味ー!」
醤油に続き、マヨネーズ、塩、みそ、砂糖、ソース、ラー油、酢、アンモニア、赤色102号、アスペクトなどありとあらゆる調味料を霞につけて、旨そうに食すヒロシ。
どこか内蔵でもバグったのか、光の速さでやつれているわけですが、マルぼんにはヒロシが妙にたくましく思えました。
蝋燭の最後の輝きみたいなもんですね。これなら金歯とその師匠である仙人など、一撃で葬ることができるでしょう。
ついに仙人(病人)として覚醒したヒロシ。金歯とその師匠である仙人を倒すため、マルぼんと一緒に出陣です。
金歯と師匠は、町のゲームセンターへ遊びに行っているらしいので、マルぼんたちもそこへ向かいました。
ゲームセンターのトイレの中。変な臭いの立ちこめる中、金歯はヤンキーっぽい人と床に座り込んで、空気のパンパンに詰まったビニール袋(液体が少し入っています)や空缶を口に押し付けていました。2人とも空ろな目です。
ヒロシ「こいつ。こいつが金歯の師匠の仙人!」
ヤンキーを指さしてそういうヒロシ。マルぼんにはどうみても普通のヤンキーにしか見えません。
ヒロシ「だってホラ。ビニールやら空缶に詰めた霞を旨そうに吸引しているじゃない? 金歯も焦点の定まらない目で『これさえあれば、なにもいらにゃ~い』とか言っていたよ? 霞だけで生きていけるのって、仙人だろ!?」
ゲーセン店員「ああ!? お客さん! シンナーはやめてくださいー! 警察に睨まれているんですよー!」
ヒロシ「え? シンナーって、海外産の霞のことでしょ?」
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