その向こう側
ヒロシも今年で31歳です。そんなある日。
マルぼん「ヒロシ、貴様、机の上においってあった瓶の中身、全部飲んじまったな!」
ヒロシ「喉がかわいていたんだよう。ジュースだと思って、つい」
マルぼん「ばかもの! あれはジュースじゃなくて、未来の世界の薬だぞ。未来の世界では親による子供への虐待が深刻化していてな、それをなんとかするために作られた薬! 飲んだ人は子供好きになるんだ」
ヒロシ「いいことじゃないか」
マルぼん「ばかもの! 本来は医者が患者に適した量をきちんと処方するんだよ。君が飲んだのは、なんの処方もしていない原液だ。そんなのを飲んだら、子供好きを通り越して、ロリショタ愛好家の域までいっちまうよ!!」
ヒロシ「そ、そういえば今日、無性に小学生が見たくなって、仕事をサボって朝から町をウロウロしてしまった。今も、『飯食ったら、近くの小学校の前をうろつこう』とか考えていた」
マルぼん「そらみろ! ロリショタ愛好家になりつつあるんだ」
ヒロシ「いやだ、いやだよ。このご時世にロリショタ愛好家になりたくないよ。あ、でも、うろつきたい。徘徊したい。小学校の前を」
マルぼん「ああ、薬の効果がつよまっとる。まってろ、なんとかならないか調べてみるから」
ヒロシ「小学校、小学校、小学校」
マルぼん「やばい、はやくなんとかせんと」
ヒロシ「あ、大丈夫。もう、小学校へは行きたくなくなった」
マルぼん「ほう」
ヒロシ「かわりに、幼稚園へ行くから」
マルぼん「悪化したー!!」
薬の効果は想像以上で、ヒロシの好みのタイプはどんどん若くなっています。ヒロシはロリショタのさらに先にある場所へと、足を踏み入れようとしているのです。
ヒロシ「時代は小学生より、幼稚園児だよ。あ、やっぱり、幼稚園はいいや。産婦人科に行く。産婦人科には、赤ちゃんがいる。時代は幼稚園児より赤ちゃんだよ」
そう言うと、家を飛び出すヒロシ。マルぼん、我が家から犯罪者をだしてなるものかと、懸命にヒロシを止めます。ロリショタの先の、さらにその向こう側など行かれてたまるものですか。
マルぼん「落ち着け、落ち着け!」
ヒロシ「はなせ、はなせ。産婦人科に行って、萌える胎児に会うんだ! 時代は胎児だよ」
マルぼん「たのむから落ち着いて、胎児萌えなんてやめてえ!」
ヒロシ「はなせ、はなさぬか。僕は産婦人科に……産婦人科に……あれ、行きたくない」
マルぼん「また好みのタイプが若くなったというのか。胎児よりも若いとなると……」
ヒロシ「そうか、そうだ。時代は胎児よりもおたまじゃくし!」
その後もヒロシの好みのタイプはどんどん若くなっていきまして。で、数日後。微笑町の墓地。
夫「今日は絶好の墓参り日和だなぁ」
妻「あら。あなた。知らない人がうちの墓を掃除しているわよ」
ヒロシ「きれいになーれ、きれいになーれ」
夫「……どちら様?」
ヒロシ「この墓の下に眠る、権兵衛さんに萌えているものです」
妻「はぁ?」
ヒロシ「知ってます? 三丁目に住んでいる美少女は、権兵衛さんの生まれ変わりなんです。あちらの墓の下に眠るおばあさんは、四丁目の美女に生まれ変わりました。時代は前世なのですよ! 前世萌ええええええええええええ!」
ロリショタのその先の、その先の、その先の、その先の、さらにその先。ヒロシのたどり着いたその場所は、意外と健全でした。あなたの家の墓がいつの間にか掃除されていたら、それは、ヒロシの仕業かもしれません。完。
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