第9話 9

「くまぴょん!? 俺という相棒がいながら、女がいたとはな!? この裏切り者!?」

「私は知らない!? 潔白だ!? うさぴょんこそ、私というパートナーがいるのに、結婚していたとはな!? まさか!? 子供までいるのか!?」

「何を!? やるか!?」

「望むところよ!?」


俺とくまぴょんは、ケンカするほど仲が良かった。


「ギミック!」

「はい!?」

「え!?」

「私はギミックを内蔵された巨大なアリだった。」

「ま、まさか!?」

「そ、それでは、おまえは!?」

「ありぴょん!?」


なんと現れた女の子の正体はありぴょんだった。まさかカワイイ女の子だったとは・・・知らなかった。


「そうだ! 私はありぴょんだ! なんか文句あるか!?」

「ありません。」

「それにしてもカトリーヌ・ねこぴょん様の一撃を食らってよく生きていたな?」

「それは私に内蔵されたギミックが、巨大アリで死んだら、カワイイ女の子として再生するというものだったからだ。」

「すげえー! ギミック!」

「ギミックに輪廻転生スキルがあったなんて!?」

「これからは仲間だ。同じパーティーとして、がんばろうな。」

「よろしく、ありぴょん。私、くまぴょん。こいつは、うさぴょん。」


俺とくまぴょんは、ありぴょんを「ぴょん」の名前を持つ者としてパーティーに迎え入れようとした。


「断る!」

「はあ?」

「え?」

「どうして?」

「当たり前だろうが!? ただ道を歩いていた私が、いきなり体が大きくなり、町で暴れ出したんだぞ!? おまけにブリザードで攻撃されて死を体験したんだぞ!? そんな私が!? なぜおまえたちの仲間にならなければいけないんだ!?」

「あ、言われてみれば。その通りだな。」

「納得するな。」


どうやら、ありぴょんもカトリーヌ・ねこぴょん様と同じく、俺とくまぴょんの仲間になるのを拒むようだ。


「さあ、どうしてくれようか?」

「と、いいますと?」

「私はありだった頃に、おまえたちの企みを聞いてしまっている。」

「なに!?」

「おまえたちのことを、あのブリザードぶっ放し女魔法剣士にチクったら、おまえたちはどうなるかな?」

「や、やめろ!? それだけはやめてくれ!?」

「こ、殺される!? カトリーヌ・ねこぴょん様に知られたらわ、私たちはおしまいだ!?」

「へっへっへ。どうしようかな?」

「ありぴょん様! どうか可哀そうな俺たちをお助け下さい!」

「そうだ! 私たちはありぴょん様に忠誠を誓います! ありぴょん様の忠実な僕になります!」

「ほう、ほほう。いい心がけだ。そうだな。仲間になってやってもいいぞ!?」

「本当か!?」

「やったー! 助かった。」

「ただし、条件がある。」

「条件?」

「仲間になるのは、おまえたちだ! 私ではない!」

「というと、どういうことでしょう?」

「ありぴょん様がリーダーで、また私たちは奴隷犬?」

「奴隷犬ではない。ありより大きいと困るので、おまえたちは奴隷ミジンコだ!」

「奴隷ミジンコ!?」

「斬新だな!?」

「どうだ? それで良ければ、おまえたちの悪行をブリザード女には言わないでやろう。どうする?」

「OK! 俺たちはありぴょん様にお仕えいたします!」

「私たちは、今日から奴隷ミジンコです!」

「はっはっは! ありの私に家来ができたぞ! 私、すごいー!」


こうして俺とくまぴょんは、新しいご主人ありぴょん様に奴隷ミジンコとしてお仕えすることになった。


「それでは私は人間の家来ができたと、ありの友達に自慢してくる。さらばだ! 我が奴隷ミジンコたちよ!」

「はは。」

「さようなら。ありぴょん様。」


ありぴょん様は去って行く。俺たちは手を振り笑顔で見送った。


「なにか勘違いしてるよな? くまぴょん。」

「その通り。人間の家来ができた? 誰が人間だと言った?」

「奴隷犬の次は、奴隷ミジンコ? 生命という者はどうして自分より下の者を作りたがる? 俺には、その価値観が理解できないな。」

「まったくだ。全ては私たちの手の平の上で踊っているだけなのに。」


その時、くまぴょんが何かを感じる。


「何か来る? この気は・・・魔王だ! 魔王の何かが、こちらに向かってくるぞ!?」

「嫌だね。しつこい男は。」

「魔王は女じゃなかったっけ?」

「そうだっけ?」

「女の嫉妬は怖いぞ!」

「ヒイイイイ!? やめてくれ!? 俺が何をしたというんだ!?」

「魔王から心臓を盗んでない!? 俺はもらっただけだ!?

「いや、盗んだ。女魔王の心を。」

「ギャアアア!?」


くまぴょんはシャーマンらしく、危険を察知した。ニの町に邪悪な何かが近づいていた。


「返してもらうわよ! 私の心臓!」


なんと、現れたのは巨大な魔王の口だった。そう口だけである。例えるなら空中移動要塞のような口である。


「な、なんだ!? あれは!?」

「鳥だ!? 飛行機だ!? 口だ!? 口!?」

「まだ町は巨大なアリに破壊されて復旧工事中だっていうのに!?」

「おまえたち、何を焦っているんだ?」

「な!?」

「俺たちの町には、あのお方がいるじゃないか!」

「おお! カトリーヌ・ねこぴょん様!」


気がつけば、ねこぴょんは町の人々の英雄になっていた。


「今度は・・・口か。」

「はい、カトリーヌ・ねこぴょん様。」

「セーラ、親衛隊には引き続き町の復旧を。」

「お言葉ですが、カトリーヌ・ねこぴょん様!? 町に魔王の口が近づいて来ています!? 親衛隊が迎撃に当たった方が良いのでは!?」

「分からないのか?」

「はい!?」

「私が出陣する。私が空を飛ぶ。」


なんと!? ねこぴょんは自ら出陣するだけでなく、空も飛ぶと言うのだ。そしてカトリーヌ・ねこぴょん様は指を鳴らし合図を送る。


「奴隷犬。」

「はい、お呼びでしょうか? カトリーヌ・ねこぴょん様。」

「ん? 1匹増えているな。」

「お初にお目にかかります。ありぴょんでございます。」

「ありぴょん? まさか、町を破壊した巨大なありではないだろうな?」

(す、鋭い!? この女、できるわ!?)

「いえいえ滅相もありません。そこの2匹の悪い犬にナンパされ、パーティーに加えられた可哀そうな新入りです。」

「まあ、いい。奴隷犬たちよ。さっそくサイコロを振ってもらおうか? 今回は私は空を飛んで一撃で、あの大きな口の化け物を倒したい。」

「お安い御用でございます。カトリーヌ・ねこぴょん様のためにサイコロを振らせてもらいます。」

「私も祈らせてもらいます。」

「お待ちください!」


その時だった。ありぴょんが大声で全員を静止させ注目を集める。


「私はカトリーヌ・ねこぴょん様の重大な秘密を知っています!」


つづく。

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