第2話 2

「じゃあ、行こうか。ねこぴょん。」


俺は冒険者、うさぴょん。仲間のくまぴょんと新しく仲間に加わったねこぴょんと共にファンタジー世界を冒険する。


「誰が、ねこぴょんよ!? 私の名前はカトリーヌよ!」

「それは却下されます。」

「どうして?」

「我々のパーティーの名前はサイコロにより、語尾にぴょんが付くことになりました。」

「はあ!? ふざけてるの!?」

「悲しいことに、うさぴょんは呪われているんです。」

「うえええ~ん!」


昔を思い出し、俺は人目も気にせずに泣いた。


「そんな変なサイコロは捨てればいいじゃない?」

「俺だって捨てようとした! 高い山や、深い海底に捨てて来た! ・・・それでもサイコロは戻ってくるんだ。俺の元に。」

「おお! 可哀そうな、うさぴょん!」

「本当に呪われているのね。そのあなた。私に近づかないで。」

「ガ~ン!?」

「大丈夫か!? うさぴょん!? 死ぬな!?」


やっと、ねこぴょんもサイコロの恐ろしさが分かってきた。


「さあ、話がまとまったところで、どこに行こうか?」

「どこがまとまったのよ!?」

「私がサイコロを振ろう!」

「一歩前に出るな! くまぴょん!」

「私は毎日でもいいわよ? コロコロステーキ。」

「ほら、見ろ。」

「俺は嫌だ!」

「みんな肉は大好きだからな!」

「私、肉食女子なの。腐敗男子がうるさいわね!」

「ガ~ン!?」

「そのまま死んでしまえ! うさぴょん!」

「助けんのかい!?」


俺はオープニングトークだけで2度死んだ。それでも何事も無かったかのように気丈に振る舞う。


「さあ、仲間も増えて、食事も終わったし、今度は装備でも整えようか?」

「元気ね? あなた、不死身なの?」

「腐敗男子ですから。はっはっは。」

「呪われたゾンビって奴ね。可哀そう。」

「誰がゾンビだ!? 誰が!?」

「カトリー・・・じゃなかった、ねこぴょんは職業は何?」

「私は魔法剣士。剣士と魔法使いのどちらにするか悩んだの。あなたは?」

「私は僧侶。うさぴょんはゆう・・・じゃなかった。」

「言わなくていいわ。呪われたゾンビでしょ。」

「違う! 俺はサイコロ士だ!」

「呪われたサイコロ士!」

「くそ!? 言い返せない自分に腹が立つ!?」

「当たっているからな。」

「ガ~ン!?」

「スルー。3回続けては、くどいだろ?」

「そうね。おもしろくもなんともないわ。」

「ガ~ン!? ガーン!?」


俺は生死の境をさまよった。


「ねこぴょんは、武器は何を使っているの?」

「初心者用の魔法剣よ。」

「ふ~ん。これはダメだな。」

「新品よ? どこがダメなのよ?」

「初心者用過ぎて、耐えられない。」

「はあ!? どういうことよ?」

「まあまあ、これを使うといい。」

「この剣は!?」

「魔王シューベルぴょんの使用していたという、通称RMS、伝説の魔法剣、レジェンド・マジック・ソードだ。」

「すごい!? 持っただけでも力がみなぎってくるわ!?」

「どうだ? すごいだろう。俺様のコレクションの一つだ。わっはっは!」

「試しに、うさぴょんを斬ってもいい?」

「許す。」

「え?」

「燃えろ! 火よ! そして炎を剣に宿せ! ファイア・ソード!」


くまぴょんから渡された魔法剣に火を灯した、ねこぴょん。


「力がみなぎってくる!? 信じられない!? 私の実力以上の攻撃力があるのが分かる!? 分かるわ!?」

「そりゃそうさ。なんたって魔王の武器だったんだから、装備するだけで攻撃力200はアップするだろうからな。はっはっは!」

「なんで、あんたが笑うのよ?」

「それは・・・。」

「分かった! あなた盗んだのね!」

「なんで、そうなる!?」

「そのサイコロと一緒に剣も盗んだのよ! きっと、そうに違いない! 私の女の第6感は鋭いんだから!」

「当てにならない女の勘だな。」

「なによ!?」

「なんだと!?」 

「敵襲だ!? 魔物だ!? モンスターだ!?」


その時だった。魔物の襲来に町の中に人々の悲鳴が響き渡る。


「私たちも行ってみよう!」

「おお!」

「ええ!」


こうして町の出入り口まで移動。見物人がたくさん集まっていた。


「なに!? あの禍々しい化け物は!?」

「あれは!? 魔王のゾンビ!?」

「間違いなく、奴だ。」

「魔王のゾンビ!? って、なんで、あんたたちみたいな愉快な二人組が魔王を知っているのよ!?」

「え!? それは・・・。」

「おお! 見ろ! 戦いが始まるぞ!」


その時、町の外には、駆け出しの初心者たちが多数、自らの名を上げるために魔王ゾンビに戦いを挑む。


「我こそは勇者・・・。」


プチッ。魔王のゾンビに踏まれて、泡となって消えた。


「私の魔法をくら・・・。」


ボー! 魔王のゾンビの口から炎で、炭になってしまった。


「つ、強すぎる!? 圧倒的じゃない!? なんで、あんな化け物が、こんな初心者ばかりの始まりの町に現れるのよ!?」

「それはだな・・・。」

「このままでは町が滅んでしまう。ここは私たちがやるしかない。」

「そうだな。」

「ええ!? やるって、私たちに何ができるのよ!?」

「大丈夫。伝説の魔法剣をもっている、ねこぴょんの攻撃なら、あいつにも効くはずだ。」

「わ、私!?」

「俺たちがサポートするから、安心して戦ってくれ!」

「うさぴょん、そっちを持て。私はこっちを持つ。」

「おお!」

「キャア!? 何触ってるのよ!? セクハラよ!?」

「せーの!」

「無理ー!?」


俺たちは、ねこぴょんを両方から持ち上げ逃げれないようにロックして、魔王のゾンビの前まで駆け足で移動した。


「なんだ!? 女の子が化け物に挑むのか!?」

「やめろ!? 踏み潰されるぞ!?」

「お嬢さんの瞬殺ミンチなんて見たくない!?」


当然のように野次馬の町の人々は、ねこぴょんが負けると思っていた。


「嫌よ!? 私はまだ死にたくない!? 彼氏もいないし、結婚もしていない! 子供だって産んでないのよ!? アンパンにメロンパン、クリームパンだって、もっと食べたいんだから!」

「言い残すことは、それだけか?」

「残念。俺の好物のチョコパンが抜けた。」

「はあ!? どういう問題よ!? ・・・え!?」


ここで俺とくまぴょんが真剣な顔になる。


「お遊びは終わりだ。」

「死にたくないんでね。」

「ちょっと!? ちょっと!? どうしたのよ!? 急に真剣になって!?」

「今から俺がサイコロを振る。」

「私は良い目が出るように祈る。」

「ねこぴょんが魔王のゾンビと戦い勝利する。」

「完璧な作戦だ。」

「どこが完璧よ? どこが?」

「頭で考えるな! とりあえずやってみれば分かる!」

「よし! やってみよう!」

「おお!」

「ダメだ、こりゃ。」


俺は作戦通りサイコロを振る。


「サイコロを振らせて、俺の右に出る者はいない!」

「おお! 神よ! 良いサイコロの目が出ますように! ラーメン!」

「何が出るかな。何が出るかな。え~い!」

「出ろ! 出ろ! 出ろ! 出ろ!」

「あなたたちは泥棒? それとも詐欺師?」


俺はサイコロ士としてサイコロを振った。


「おお!? 攻撃力1万倍!」

「良い目が出ました! 私の祈りは神に届いたのですね!」

「やったー! やったー! ヤッホー! ヤッホー!」


俺とくまぴょんは喜びの余り踊り出した。


「はあ・・・あなたたちとは付き合っていられないわ。私はパーティーを抜けさせてもらうわよ。」

「その前に、あいつを倒してもらおうか?」

「どうやって倒すのよ!?」

「よく剣を見て。」

「盗品の剣・・・なに!? これはどういうこと!?」


ねこぴょんの剣RMSは光り輝いていた。力を抑えることが出来ず、周囲の大気を捻じ曲げていた。


「説明しよう。ねこぴょんの魔王の魔法剣と、俺のサイコロと、くまぴょんの祈りが一つになり、攻撃力200万以上の魔法剣が完成したということだ。わっはっは!」

「こ、攻撃力200万以上って、そんなのあり?」

「騙されたと思って、魔王のゾンビを攻撃してごらん。」

「え、ええ・・・私が詐欺にあっているなら死に、もし本当だったら・・・。もし本当だったら。よし! やってやる!」


なぜか私は好奇心や探求心からなのか、どう見ても怪しい二人組の言葉を不思議と信じてしまった。


「燃えろ! 火よ! そして炎を剣に宿せ! ファイア・ソード!」


私の魔法剣に火が灯る。火というより炎になり、まるで火の魔人や火の竜のように生命や意志があるように剣から火が暴れ出している。


「す、すごい!?」


私は見たことも無い初体験に見とれてしまい体が動かなかった。


「ねこぴょん、大丈夫か?」

「は、はい!?」

「おい、早くあいつを倒してくれないか?」

「はい!? 倒します!?」


私は魔王のゾンビに一撃を放つ。


「カトリーヌ! ファイア! ソード! アタック!」


私の一振りは、火に精霊が宿っているかのように、魔王のゾンビに襲い掛かかり、炎の柱を描き全てを燃やし尽くした。


「た、倒しちゃった!?」


ここに伝説の魔法剣士ねこぴょんが誕生したのであった。


つづく。

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