第21話争えないのは血か業か02
「ブラコンみたいですね」
念話でアイナが苦笑する。
「色々と小生に心を仮託するクセがあったもので」
念話で苦笑するクロウだった。
「それで」
と問う。
「まさか小生とローズを引き合わせるために研究室に招いたわけでもないのでしょう?」
「本当にまさかですね」
アイナも苦笑。
ローズはクロウを抱きしめてグシュグシュ泣いている。
「結局アイナの研究室所属の条件って何でしょう?」
「儀式不要の魔術行使です」
「えーと?」
思念で首を傾げる。
「要するに呪文の詠唱や魔法陣の記述をしなくともノーアクションで魔術を行使できる魔術師。それが私の求めていた人材です」
「なるほど」
クロウが嘆息する。
無論テレパシーで。
「クロウ様なら研究室に歓迎します」
その意味が分かったのだから。
クロウの魔術はあくまで剣術の延長線上ではあるが、それでもノーアクションで魔術を執り行える。
ローズ同様に呪文の詠唱も事前の準備も必要ない。
たしかにアイナが求める人材ではあった。
「結構無茶な選考基準ですね」
魔術師は呪文を唱える者。
そんな固定観念が魔術師に共通してある。
ソに対するアンチテーゼ。
クロウの場合は御大の指導の賜物だが、ローズが独自にその域に辿り着いたとなれば並大抵の才能ではない。
そうであるが故にアイナが目をつけたのだから。
閑話休題。
「お兄ちゃん……」
ローズは時間と共に泣き止んで、心を整理しているらしかった。
その指標にクロウの言葉を必要とするのも必然。
「お兄ちゃんは……今まで学院に居たんですか……?」
「在籍はしておりません。小生はアイナ教授の使用人であります故」
「家を出てからこちらへ……?」
「あー……」
あまり話す意欲も無い。
とはいえ話さないわけにもいかないだろう。
「山で暮らしていました」
その通りなのだからしょうがない。
「そういうローズは? 学院には長いんですか?」
「一年前です……。兄たちはもっと早く入学されていますけど……」
クロウを『お兄ちゃん』と呼び、他を『兄』と呼ぶ。
それだけでアイナはローズの心境の大体を知れた。
「お兄ちゃんは……」
むぐ、と言葉を探す。
「どうして成長していないのですか……?」
それも至極尤もな疑念だ。
「どう思いますか?」
「信用には値するでしょう」
クロウとアイナは念話でやりとり。
「あーっと……」
しばし躊躇った後、
「これはあまり吹聴されると困るのですけど」
「黙秘します……」
「重畳です。鬼の血が流れているんです」
「オーガ……」
「ええ」
難老長寿。
数年ぶりに会った兄が記憶と合致している。
その理由だ。
「たしかに知られれば……面倒に相成りますね……」
「なので秘密と言うことで」
「分かりました……」
頷くローズ。
クロウには従順なローズである。
そんなわけで新しい生徒がアイナ研究室に加わるのだった。
「何だかなぁ」
とはクロウの思念。
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