第19話セントラル国家共有都市領域10
司会進行が騎士学院代表の三名を紹介し、次いで魔術学院代表の三名を紹介する。
その最後の項目を聞いてクロウは精神的……形而上的にずっこけた。
事情に常識が追随しないという意味では、
『唖然』
の二文字だ。
魔術学院代表の三名の最後。
紅の髪の美少女……その名を聞いて平静ではいられない。
「ローズ=ヴィスコンティ」
そんな名だったのだから。
外見年齢は少女だがクロウより年上に見える。
が実年齢で云えばクロウの方が年上だ。
何故かとの議論も必要ない。
ローズ=ヴィスコンティ。
クロウの現世での妹だったのだから。
「大丈夫ですか?」
「あまり……」
思念で会話する二人。
「何か?」
「いえ、特に話すことでは……」
「そう言わず」
「気持ちに整理が付いたら話します」
「ではお待ちしております」
慈愛の念でアイナは答えた。
「どうも」
とクロウ。
二次成長を迎えたためか。
ローズは大人びて見えた。
というかクロウの方が変わっていないだけなのだが。
かくして司会進行。
決闘場に十五体のゴーレムが作られる。
魔術だ。
土と岩とを含んだ人形。
小柄ながら活発で、決闘場を所狭しと走り回る。
元気なのは良いことだが、これで破壊の対象と言われるとクロウとしても無常にはなる。
心付け自体は正しいが無用の感情にも違いない。
騎士が剣を抜き、魔術師が緊張する。
どちら共に武威を発して威嚇。
「ところで互いのゴーレム破壊が同時であった場合は?」
「審判の裁定次第ですね」
そんなクロウとアイナの念話。
そして試合開始。
直後に閃光が広がった。
「何か?」
そう思う暇も無い。
光。
衝撃。
音。
風。
順に炸裂して複数のゴーレムが吹っ飛ぶ。
当然ながら魔術ではあるが、
「誰の?」
との疑問が場を占めた。
理解していたのはクロウとアイナ……それから学院長のシャッハマットくらいだろう。
魔術に明るくない騎士学院側には完全に不明である。
「まさか……」
そんな言葉がアイナから零れた。
その意味について此処で問いただすことをクロウはしない。
であれば試合の成り行きを見守るだけだ。
「…………」
ローズが人差し指をピンと伸ばしてツイと空間へ水平に線を引く。
その線の延長に風の斬撃が乗せられてゴーレムを両断した。
爆発に怯んだ騎士側が何か行動を起こす前に全てのゴーレムがローズの魔術で掃討されたのだ。
無詠唱の魔術の使い手。
「魔術とは詠唱を紡いで世界を変質させる」
という定義に反する存在。
「…………っ」
ローズはソレをやってのけたのだ。
「この程度の魔術に詠唱や儀式は要らない」
そんな宣言。
司会進行も、
「何と言って良いのやら」
と呆然としており、硬直していた。
無論ローズを除く五人の学院代表も。
「まさか……ねぇ?」
とはクロウの思念で、
「キター!」
とはアイナの思念だった。
決着である。
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