少年と彼のロボット

 干からびた海の底にいくつもの舟が無残な姿を晒しており、さながら船の墓場という有様でした。

 その墓場を二人して歩く、くはし大太郎法師と少年がいました。そろそろ会話なく一昼夜、気の長いこと千年単位のくはし大太郎法師も、そろそろ飽きてついに音声回路に電流を流す事にしました。


--ところでどこに行こうというんだい?

--人の居るところ。

--ついに私とと戦う気になったんだね!

--戦ってどうするんだよ、ポンコツ。

--戦うのが目的なんだよ。ちっぽけくん。

 少年は心底馬鹿にした顔で隣のくはし大太郎法師を見上げました。

--戦うのなんてバカがやることだぜ。

--賢さになんの意味があるんだい? そもそも賢さを捨てた君たちがそんなこと言うんだ、うっけるー。

--はぁ? ケンカ売ってんのか?

--だからー。戦争しようっていってるでしょ。これだから国語能力が低いと文明は衰退するんですよ。

--なんだよ国語って。

--旧N系惑星、コロニーで使われた言語で膠着語に属し、助詞・助動詞が文の成立について大きな役割を果たしていて、述語が文の最後にくるという文法構造をもつものだよ。

--難しいこと言えば子供騙せると思ったら大間違いだぜ。

--聞いたから答えたんじゃないか! 女の子にそんな事言ってたら嫌われるんだからね!

--お前が? 女の子のわけないじゃん。女の子ってやつはもっとこー。

 少年は何か言おうとして言うほど女の子を知らない事に気付きました。

 隣のくはし大太郎法師は巨大な盾で細い鋼の胴体を隠しました。

--いやらしい!

--いやらしいってなに?

--んー?

 くはし大太郎法師は多機能一つ目をランダム移動させました。

--中々高度な攻撃だね。経験値溜まる。つまりそこで知らないふりをすればこっちが自意識過剰キャラ認定するわけだね。

--何言ってんだこいつ。

--言わせてもらいますけど、うちの種族はみんな女の子なんですぅ。あと見た目で全部判断するのは人魚として最低だと思います。

--俺もお前も人魚じゃねえだろ。

 くはし大太郎法師は長考に入りました。どう説明したものか、いや、どうこの戦争に勝つのか、戦略の策定に入ったのでした。


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