念には念を 1
今俺達は宿で朝ご飯を食べている。朝起きた時点では俺とリアラは特に大した変化がなかったが……
「~♪」
このように、何故か朝からリアラの気分がどうもおかしい。こんな朝から気分がいいなんて絶対何かあるな。
「あ、シロウさん。後で私の部屋に来てくださいね」
「ん?あぁ、わかった」
絶対昨日の大量の袋が関係したことだな。でも、そんなにニヤニヤするほどの物なのか?
ずっとそれが気になって朝ごはんを食べるのに集中出来なかった。
朝ご飯を食べ終わった俺はリアラに言われた通りに部屋へ向かった。
「リアラー!言われた通りに来たぞ」
「あ、鍵開いてるので勝手に入ってきてください」
勝手に入ってこいと言われたのでリアラの部屋のドアを開けて中に入った。
「今準備していますのでその椅子に座ってしばらく待ってくれませんか?」
「わかった。……それよりもリアラ」
「はい、何ですか?」
「……どうして袋から出しているのは
普通に考えれば、リアラは女性だから女物の服を買うのは当たり前だ。
しかし、一日で買った服にしては男物の服が一つもない。
「何って……もちろんシロウさんに変装という名の女装をしてもらうためですけど」
「……………はい?」
朝から様子が変だったのはこれが原因か!
でも。別にこのままでもバレないんじゃないのか?一昨日だってギルドに行ってもバレなかったし。
「……何ですかその顔。別にそのままでもバレないなんて思ってませんか?」
やっぱり俺は顔に出やすいタイプの人間らしい。
「一昨日はバレませんでしたけど、念の為です。シロウさんは女性が男の服を着てるから、と声を掛けてくる人がいたら面倒くさいですよね?」
「まぁ、確かにそうだが……」
でも、そんなにしっかりとした女物の服を着る必要があるのか?女性でも男物の服をてる人だっているだろ。
「ていうか、そもそも男性禁制の町なので男物の服なんてあるわけないじゃないですか」
「……あ」
しまった、大事なことを見落としていた。男性禁制の町なのだから、当然男物の服が売っているはずがない。
「着てくれますよね?」
「イヤだァァァ!!」
俺は急いで部屋のドアへ向かった。この姿で女物の服の服を着るなんて男としての何かを失ってしまう気がする。
「よし、これを開ければ……って、あれ?」
ドアが開かない。ずっとドアが開けようと試しているが開く気配が全くない。
鍵を閉めた覚えはないぞ?!
そう思い鍵が閉まっているかを見てみると……
「なんだ……これ?」
鍵のところに魔法陣らしきものがある。どうやら、これが原因でドアが開かないらしい。
「フフフフフ。私の全魔法スキルを忘れていませんか?」
この鍵の魔法陣はリアラの魔法によるものらしい。と言うか、ここにいるのは俺とリアラだけだからリアラ以外にいないにいるはずがない。
背後から迫り来る
「準備はいいですか?」
「………ヤサシクオネガイシマス」
この日、俺は男としてのプライドの一部を捨てることになった。
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