第67話
「イーダとネアがあのようになってしまったのは私の責任だ。ちゃんと話をして今後を検討していきます。」
「その言葉を聞けて安心した。...レイヴン」
「はい」
ランスロットはレイヴンから書類を受け取るとそれをダダイに差し出した。書類に目を通し、そこに書かれていた内容を確認するとダダイは目を驚くように見開く。そこには明らかにソフィア家の利が多い内容が書き連なっていた。
「異論が無いならそこにサインを」
「異論も、何も....」
「ここからソフィアの医療技術を立ち直らせろ。何かあれば、相談も受け付ける。エレーナのために協力は惜しまない」
「何もそこまで....」
サライが驚愕の声を上げる。わからないだろう。勝手に屋敷に送られた1人の少女の一喜一憂に揺さぶられてしまうこの気持ちなど。
「ランスロット家は代々騎士の出だ。今後ソフィアの医療技術に投資したと思ってくれていい。そしてエレーナとの出会いに感謝を」
ランスロットはダダイとサライに向かって騎士の礼を行う。エレーナの過去を考えると心が痛むが、ランスロットが彼女に出会えた事は間違いなく今回の事があったからだ。
そして、この悲しみを終わらせる手助けが出来ることはランスロットにとって嬉しい事だった。
「師団長」
ロイの声で礼を正す。ロイはニコリと微笑んでランスロットが望む言葉を紡いだ。
「どうやら、メニエルが屋敷に到着したようですよ」
「!!」
ガタリと動いたのはレイヴンだった。そして彼が開けたドアからメニエルが息を切らして飛び込んでくる。ノックをする瞬間のような仕草をしたまま眼鏡の奥でキョトンとするメニエル。
「......お?」
「いいから状況を」
シリアスな雰囲気の中でメニエルの気の抜けた声に空気が緩るむ。しかしそんな事は言っていられない。ランスロットはカチャリと確かめるように帯刀に触れた。
「エレーナは見つかったか」
「はい。私の
メニエルは持ってきた地図を開きエレーナがいるであろう場所を指差した。
ティール領に程近く、ソフィアの領地からそれほど離れている場所ではない。今から出発して黄昏時あたりにはつける距離だ。
ランスロットはもう一度帯刀に手を掛ける。いつの間にか部屋から出てきたレイヴンが再び戻ってきた事を視界の端で捉えた。
「旦那様。馬の用意が出来ました。」
「わかった」
準備は整った。もうソフィア家に長居する予定は無い。ここからが正念場だ。だが、ここからは騎士団で活躍しているランスロットの管轄になる。
さぁわからせてやる。シフォン。
お前が誰に喧嘩を売ったのか。
そして。
「....エレーナ」
君を必ずこの腕で抱きしめると。
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