第381話 濁りなきこころの話

 このごろ、お友達の作品がものすごいという話。

 前々から「泣かせてくれる」とは思ってた。

 けれど、どうしてかは考えなかった。


 理由は、自分の涙に疑問をさしはさむ気がしなかったから。

 なぜ泣くんだろう? 感動したからだ。

 心が動くのだから、それはしかたない。


 当然だと思ってた。

 しかし、お友達と話していると違うのだ。

「ここはこれこれこういう理由で」「こうこう、こう考えて」計算で、作り上げたのだという。


 もうね、ものすっごい神経をゆきわたらせてるんだよね。

 そりゃ泣くよね。

 理由の一端が見え始めたので、わたくしは我にかえって思う。


 悔しい、と。

 一方的に泣かされて、それを受け入れている自分が女々しく感じる。

 戦わねば。


 わたくしはこの感情と、折り合い付けてなあなあにしてはいられない。

 なんとしても、雄々しく立ち上がってたたきのめす。

 わたくしがわたくしであるために。


 苦しむのをやめたときに、死はやってくる。

 それを認めてはならない。

 生きるために。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る