第39話06話 勉強は大切です②

 

「リュート様、お茶を準備致しました。少しはお休みになられないといけませんよ」


ふと鼻に香ったいい香りに目を向けると、セルバさんがお茶を用意して立っていた。

そろそろ休憩を挟めということだろう。


「ありがとうございます。もうそんなに時間が経ちましたか?」


「えぇ、お昼からですから3時間以上は本を読み続けていましたね」


セルバさんは少し困ったように言った。

気をつかわせてしまったようだ。

申し訳ない。


「それはすみません。集中し過ぎたみたいです」


俺は本を閉じて、ティーポットが用意されたテーブルに座る。


「……お勉強は順調ですかな?」


「はい、この家には沢山の本があるので、とても面白いです」


紅茶の香りに包まれ一息つく。

まだまだ大丈夫だと思っていたが、体は少し疲れていたようだ。


「また新しい本をお持ちいたしましょう。何が宜しいですかな?」


「では……魔物や悪魔についてのものを、お願いします」


これからの為にも、悪魔についてもっと情報が欲しい。

ゲームには、悪魔が出てきていた。


「ほう、悪魔ですか? 童話や昔話によく出てきますな。後でお持ちいたしましょう。ただし、きちんと休憩を挟まないといけませんよ?」


「これからは気を付けます。本の件、お願いしますね」


セルバさんは俺が熱中しすぎるのを心配してるようなので、今後は気を付けることにする。

俺も今の自分の体が6歳児のものであることを、自覚しなければならない。

前世と同じ感覚を引き摺ってはいけない。


……童話や昔話か。

フィクションの話だと思われているんだな。

だが、ゲームにあったように実在する可能性が今のところ非常に高い。

俗説とかが多そうだし、精査する必要もあるだろう。


俺はティーカップを傾け、紅茶を飲み干す。

休憩はこれくらいで十分だろう。


「ご馳走さまです、セルバさん。僕はこれからはまた読書をします」


「程々になさいませ。では失礼いたします」


セルバはティーポットを片付けて、部屋から退室した。


「……さてと。魔法の検証でもするかな」


セルバさんが居なくなったのを確認し、席を立つ。

空間魔法について、試したいことがあったのだ。


まず、部屋の端にマーキングの魔法陣を設置する。

そして10メートル位離れて、詠唱する。


「“テレポート”」


その言葉と共に、一瞬でマーキングした場所に移動する。

ここまでは通常通りだ。

今度はマーキングなしに魔法を発動する。


「“テレポート”」


そして、一瞬でまた部屋の端に移動した。

ただし今度は、移動はしているが先程より手前の位置だった。


ふむ……マーキングなしで実際に座標を計算してテレポートしてみたが……少しずれたな。

でもこれで、マーキング無しで使えることが分かった。

何回も繰り返せば、もっと正確に移動できるだろう。

そうすれば行ったことのない土地にも、行けるようになるかも知れない。


その日俺はセルバさんが夕食を呼びに来るまで、延々と空間魔法の練習を続けた。


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